
雑誌、ネットニュース、ブログ、SNS、様々な中学受験関連の媒体で、「来年の入試はこうなる」といった記事を見かけます。
なかには、実によく調べてあるなあ、と感心するものもありますし、緻密にデータ分析をしている記事もあります。
その一方で、ありきたりの、当たり障りのないことを、さももっともらしく述べている記事が大半であることも事実なのです。
当たり障りが無いのならまだしも、あからさまに「嘘」を書いている記事まであるのが困りものです。
そもそも、こうした記事を「誰が」書いているのかが問題なのです。
中学受験生の指導に本気で向き合ったこともない「自称プロ」が蔓延る世界ですから。
そこで、30年以上にわたって中学受験の最前線に立ち続けてきた私が、来年の入試についてまとめてみることにします。
私とて「自称プロ」にすぎませんが、少なくとも受験生に正面から向き合ってきた自負はあります。
はじめに
年度による入試傾向などというものは、実は無いのです。
のっけからこれを書いてしまうと、この後の記事の意味がなくなってしまいますね。
しかし、事実ですから書きます。
入試問題は、「うちの学校に入る生徒」を選抜するために作られます。
そのため、「これくらいの学力は身に着けておいてほしい」
「こういう問題を解ける生徒に入ってほしい」という、学校側の希望が反映します。
基礎学力を重視する学校なら、一般的な基本問題を出題します。
情報処理スピードを重視する学校なら、問題数が多いのです。
思考力を重視する学校なら、一筋縄では解けない、考える問題を出します。
記述力を重視する学校なら、とにかく記述させます。
小学生時代の勉強量を重視する学校なら、重箱の隅問題を出題します。
算数力を重視する学校なら、算数単科入試を実施します。
誰でも良いから入ってほしい学校なら、算数は計算問題と一行問題、国語は漢字と易しい文章を出題します。
英語力重視の学校なら、英語単科入試や、英語資格入試を行います。
個性・学力以外の能力重視なら、面接やパフォーマンス入試を行います。
こうして、各々の学校が、欲しい生徒を獲るための入試を工夫している間に、「〇〇中学の入試傾向」といったものが出来上がってきたわけです。
しかし、この「傾向」というのは、いったんスタイルが出来てくると、そう大きく変化するものではありません。すでに「選抜する試験」としてうまく機能しているのなら、変える必要性が無いからです。
それでも、入試傾向を変えてくる学校というものはあります。それは、従来の試験ではうまくいっていない学校とみなせます。おそらくみなさんが志望したい学校ではないはずです。なぜなら、生徒募集がうまくいっていない=定員割れ間近 といった学校だからです。
※例外として、設立間もない学校があげられます。まだ入試がうまく機能するまでの試行錯誤段階とみなせます。
志望動向によって志望校を変える愚
「A中学は来年難化するんですって!」
こう聞いて、A中学の受験をあきらめますか?
「B中学は来年入り易いらしいよ」
こう聞いて、B中学を受験しますか?
たしかに、人気が出る学校・人気が落ちる学校というものはあります。だからといって、それに振り回されて志望校を変えることは実に愚かです。
なぜなら、そうした噂というものは、全く根拠が無いからです。
噂の火元は、塾・受験関係者です。しかし、彼らが「来年〇〇中学は・・・・」と語る根拠が何かご存じでしょうか?
巷で想像されるような、塾と中学校の癒着などといものはありません。中学校が、公表されている以外の「極秘情報」を塾に漏らすことはあり得ないのです。塾は、世間にはまだ知られていない学校に関する極秘情報など持ってはいないのです。
「〇〇中学校の先生から聞いたところ、来年の入試傾向は・・・」
もし得々とそうした情報を口にする塾の先生がいれば、それは詐欺師と認定してください。
そこで、塾や受験関係者があてにするのが、模試の志願者データなのですね。
模試の志望者が増えた・減ったという情報に基づいて、「来年は受験者が増えて競争が激化する」「来年は上位層が抜けるので合格しやすい」などといった分析をするのです。
みなさん、模試を受けるとき、志望校を書きますね。あれ、どうやって書いていますか?
「第一志望校は、どうせ無理だろうけど、前向きにA中学にしとくか。第二志望も、高望みだけどB中学で。第三志望は、C中学とD中学で決まり。あ、あと3校書かないといけないのか。考えてなかったよ。とりあえず、知っている学校の名前をあげとくか」
全員とは思いませんが、こうやって提出する方も多いと思います。
こうやって、いわば「かなり適当」に書いて提出したデータに基づいて分析しているのです。
したがって、この分析は無意味です。
ずいぶん昔のことになりますが、私立中学の教頭クラスの先生方の親睦会に参加した(紛れ込んだ)ことがあります。とくに学校オフィシャルの会合ではなく、学校の実務的なトップの先生方の個人的な横の連携といった親睦会でした。そこには大手Y塾の入試分析の責任者の方も同席していました。その方が、その塾が実施した合格判定模試の志望状況を見ながら詳細に次年度の分析をしていました。
「A中学は、志望が3ポイントアップしましたから、来年は難化します。そのため、B中学が志望を減らすことが予想されます」
こんな調子で、模試の志願者数の増減に基づき来年の入試傾向の分析を行っていたのです。
そんな、模試の志望者が数名~数十名程度変化したところで何の意味もありません。その意味を持たない数値を分析しているのですから、分析にも意味は無いのです。
Y塾が衰退する理由を目の当たりにしたのでした。
出願状況を追う愚
1月にもなると、日々変化する出願状況を気にする方が多いですね。
わが子が受験する学校に受験生がどれだけ集まるのか、気になるのでしょう。
しかし、これを気にすることは愚かです。何の意味もないからです。
倍率で受験結果は左右されません。例えば、筑駒の倍率は4.1倍でした。広尾学園の3日午前の倍率は、8.2倍でした。そこで2月3日の入試は、広尾学園ではなくて筑駒を受験したほうが合格しやすいのでしょうか?
もちろんあり得ません。
学校によっては、受験を細分化し、一回の入試の合格者を絞ることで、倍率・偏差値を高くみせかけていると思われるところもあるのです。
例えば、桜蔭の倍率は1.8倍でした。入り易そうですね。
まさか、あり得ないです。
受験倍率は、その学校の評価や実力とは別物です。もちろん合格しやすさとも関係ありません。
※例外は、定員割れの学校です。合格倍率が1を切る学校には、それなりの理由があると考えましょう。
入試問題のトレンド
ずばり、PISA型です。
PISAとは、OECDが進めているPISA(Programme for International Student Assessment)と呼ばれる国際的な学習到達度に関する調査で、15歳児を対象に読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの三分野について、3年ごとに実施されています。
日本がこの順位が低いことは、教育界では「PISAショック」として広く知られているのです。
このテスト、具体的には、「国立教育政策研究所」のHPを見てください。
https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/
思い切り、「思考力・記述力」に全振りしたテストです。
なるほど、日本の中学生が解けないわけです。
中学入試では、思考力と記述力を重視した問題が少しずつ増えているのです。
難関校では従来からそうでした。
男子校なら、麻布・武蔵・海城がそうした学校です。女子なら鷗友ですね。
これらの学校の入試問題は、知識を丸暗記しているだけでは歯が立ちません。きちんとした思考力・記述力が必要な学校です。
これらの学校ほどではなくても、入試問題の中に記述問題を織り込む学校は多くみられます。
さらに、もう一つの流れがあるのです。
それは、「適性検査型」の流行です。
ご存じのように、公立中高一貫校では、4科目の試験ができません。公教育という建前上、小学校の学習範囲を超えることはできませんし、「入学試験」を実施できないのです。
そこで、「適性検査」という謎の用語を使い、教科試験でない試験で生徒を選抜する必要に迫られ、PISA型の問題に落ち着いたのでしょうね。
開成・筑駒・桜蔭といった最難関校を受験する生徒で、公立中高一貫校を併願する生徒はごくわずかです。また、私学を志望する生徒の多くも志願しません。
公立中高一貫校は、従来の中学受験の層とは異なる層が中心となっていると思われます。
そこに、一部の「生徒募集に苦戦している」私立が目をつけたのです。
四科目の教科試験以外に、「適性検査型」と銘打った試験を行う学校が増えてきました。
明らかに、公立中高一貫校受験者の落穂ひろいです。
また、受験生の側にとってもメリットがあります。適性検査の対策しかしてこなかった生徒には、一般の4科目入試が受験しにくいのですね。
また、「適性検査型」と銘打ってはいなくても、あきらかにPSA/適性検査の影響を受けた出題も増えていきています。
英語資格入試について
「英語資格入試」を導入する学校が増えつつあります。
そもそも小学生は、英語の学習をほとんどしていません。小学校で「英語入門」的な、ほんの「さわり」をやるだけです。
それを、もし「英語の教科入試」を学校が実施するとして、どのレベルの問題を作ればよいのでしょう?
小学校の英語のレベルは、単語数でいえば500語程度、英検級では5級かそれ以下とみなされています。
そのレベルの問題を入試で出題すれば、当然「満点が続出」することになり、選抜試験としての意味を持ちません。
かといって、英検3級かそれ以上のレベルの問題を出すのにも「問題」があるのです。
それは、世間の批判を浴びるという問題です。
「小学生が習ってもいない単語ばかり出た」
「あんな問題小学生に解けるはずがない」
もうお気づきでしょうか。
かつての中学入試で算数・国語・理科・社会が浴びた非難です。とくに理科・社会でその批判が顕著でした。
しかし、何十年もの時間をかけることで、ようやく理科・社会については、中学生の学習範囲くらいまでは出題しても怒られない段階に到達したのです。
もちろんこれは、何のルールも申し合わせもありません。何となくの「暗黙の了解」にすぎません。したがって、この「暗黙の了解」を無視する(or気にしないor無知?)学校も当然あります。
今年の渋谷渋谷の理科の問題がその典型でしょう。何と「栄養有機化学」を出題したのですから。有機化学は理系の高校2・3年生で習う範囲です。栄養有機は大学1年で学ぶのです。問題の構成的に解くことは可能なように作られていましたが、そもそも出題してよいジャンルではありませんでした。peter-lws.net
日本全体で考えれば、中学校受験は「特殊」です。
首都圏で考えても、多数派は「そのまま公立中学進学」です。やはりあくまでも中学受験は「一部の生徒」のものなのですね。しかも、中学受験のためには準備期間・資金が必要とされています。
(期間はともかく、資金は実は必要ではありません。塾に行かなくても中学受験は可能です。このあたりの事情については、拙著をお読みください)
さて、このような状況ですから、中学受験の世界はとかく批判を浴びがちなのです。
・面白おかしく中学受験の厳しさを題材としたドラマ・漫画
・中学受験に立ち向かう「子どもらしさを失った」子どもについての報道
・大人でも解けない「中学受験問題」を題材としたクイズ番組
・今どきの子どもの抱える問題の犯人を中学受験に仕立て上げる評論家
みなさんもご存じの通りの状況です。
その中で、高校生レベルの英語の試験を小6に出題したらどう思われるでしょう?
どの学校だって火中の栗は拾いたくありません。
そこで目をつけたのが「英語資格入試」だったのです。
これなら、「小学生で頑張って取得した英語資格を評価してあげる」という大義名分が立ちますので。さらに、自前で問題を作らなくてもいいというオマケつきです。
しかも、英語が使える生徒を集められれば、大学入試に有利ですし、場合によっては海外大学の実績も出せるかもしれません。
なるほど、英語資格入試が増えるわけです。
逆にいうと、地に足のついた教育方針の学校は、英語資格入試に手を出さないと判断できますね。
まとめましょう。
2026年の中学入試の最新傾向は、これまで以上に「思考力」「表現力」を重視する出題が目立つと予想できるのです。
特に「どの科目が難化するのか」「2026年の注目校はどこか」という点は、受験生を持つ保護者のみなさんが最も気になる情報ですね。
そこで記事の後半では、中学受験の難化が予想される科目や、2026年に人気が高まる注目校の特徴を整理し、家庭学習や志望校選びの参考になるポイントをまとめます。
難化が予想される科目と出題傾向
算数:思考力を試す複合問題が中心になるが、難化は限定的
2026年の中学受験算数の最新傾向として、図形・速さ・比などを組み合わせた複合問題が難化する流れがあります。ただし、これについては「いたちごっこ」の側面があるのです。複合問題であれ、似た傾向の問題を解いていれば対応は難しくはありません。するとまた新しい複合問題が登場する。それに対応した問題演習をする。多くの学校で出題される「複合問題」は、すでにどこかの学校で出題されているスタイルの場合がほとんどですので、そんなに恐れなくてもよいでしょう。
単純な計算力だけでなく「試行錯誤する力」や「途中経過を整理する力」が求められます。この流れは、今にはじまったことではなく、何年も続く潮流です。
途中式を書かせる学校も多くなりました。問題の片隅にちょこちょこと筆算をするだけで問題を解く癖を何とかしなくてはなりません。
この途中式、面倒くさがる生徒が実に多いのです。しかし、学校側はそれを許しません。普段から途中経過をきちんと書く習慣が重要です。
このような傾向は、一見すると「難化」ととられがちですが、最終的な解答に至らなくても部分点がもらえる可能性があるという点において、実は得点につながりやすい側面もあるのです。答だけを書くことが「解く」ことだと勘違いしている生徒にとってだけ「難化」です。
また、いわゆる「算数らしい」問題も増えそうです。
実は、「〇〇算」と名がつく特殊算のほとんどは、方程式の概念とリンクしています。例えば「和差算」など、ただの「二元連立一次方程式」です。それを、未知数を記号で置き替えずに、線分図を使って、視覚的に整理して解いていくのですね。
しかし、「数の性質」や「確率・場合の数」そして「パズル的問題」については、方程式は使えません。対策も困難です。いわば算数的なセンス、頭の良さが問われてしまうのです。
例えば、2025年の開成のこの問題を見てください。
見ましたか?
まさに算数らしい良問でしたね。
実は、算数の「難化」はもうこれ以上進まない段階まできているのです。
「数学」が出せない
この縛りがあるからです。
算数と数学、本質的な違いは大きくはないのですが、見た目はまるで違います。
算数で数学を出題すると、一発でばれてしまう?のです。
「あ、小学生の解く入試問題に数学を出題した!」
こうマスコミ等に叩かれること必至です。文科省の指導が入るかもしれません。
そこで、あくまでも「算数」の範囲から様々な工夫をこらして出題してきました。しかしそれももう限界に達しています。
全く新しい斬新な算数の出題というものはほとんど見られなくなったのです。どこかの学校で過去に出された問題の焼き直し、そういったタイプの出題ばかりです。したがって、丁寧な問題演習で実力が付くのです。
国語:長文化・記述重視の流れが加速
中学入試国語 2026では、文章量の増加と記述の比重アップが予想されます。
「根拠を示して答える力」や「自分の言葉でまとめる力」「難しい文章の読解力」がカギとなり、単なる暗記や要約力だけでは差がつきません。
物語文については、従来同様、「主人公の成長」がテーマです。小中学生くらいの主人公が、心に何等かの問題を抱えていて、それがある出来事をきっかけに成長する、といったパターンですね。毎年のように同様の内容の小説が出版されていますので、作問者はそうした小説から問題を作っていることがうかがえます。
ただし、説明文が少々やっかいです。
説明文、つまり論説文については、小学生に読ませたくなるような「良い文章」が皆無なのです。どうも、学問の世界の住人は、小学生・中学生にわかりやすく専門分野を解説する力が不足しているようですね。
もちろん、一部の学者の中には、そうした文章力に長けた方もいます。だから出題頻度が高いのです。ゴリラ研究の第一人者の山極壽一氏の文章など、あらゆる学校で使われているのはそれが理由です。
そうすると、説明文の題材に困った学校の先生がどちらに行くと思われますか?
「説明文的エッセイ」を出すのです。
純粋な説明文ではないですから読みやすいですが、文章構造が論理的ではない場合も多いのです。読解の方法論を丁寧にあてはめて解いていかなくてはなりません。
実は、「物語文」「説明文」「エッセイ」の3つの中で、最も読解しにくいのが「エッセイ」なのですね。表面的に読むのは簡単です。難しい語句は使われていませんので。しかし、筆者が「つれづれなるま」に、「心に移りゆくよしなし事を」書き連ねていますので、決して論理的な文章構成というわけではないのです。さらにそこに専門用語を用いられてしまうと、とても読みづらい。読解には注意が必要です。
★国語の文章の難化傾向
実は、4科目の中で唯一国語だけが、「小学生に出題してもよいレベル」という呪縛から自由です。漢字を除けば、出題は自由です。しかも、難易度を上げても世間の批判を浴びづらいという特徴もあるのです。
今後予想される傾向としては、大人が読む文章からの出題ではないかと私は密かに考えています。また、古典からの出題も考えられます。
概ね、「その年(あるいは近年)に出版された青春小説」が出典として使われているのですが、別にそれもルールではありませんから。実は、一般に中学生の読書として推奨される本「課題図書」になるような本は、私立中学では薦められることはあまりありません。もちろん全く推奨しないというわけでもないのでしょうけれど。それより、各中学校・高校の国語の先生方が、思いのままに「今君たちに読んでほしい」と考える本を授業で扱っている、そういう授業です。そんな先生方が問題を作るのですから、ありきたりな文章ばかり扱うはずもないのです。
理科・社会:時事問題や生活知識を絡めた出題
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理科は実験や観察をもとに考察させる問題が増加しています。この傾向は加速しています。何かの実験をやった、そこから始まる問題です。そこで出たデータの意味を考えさせ、それを補正するためにはどのような実験が必要か考えさせる。そうした流れの出題は今後も増加するでしょう。対策としては、「理科資料集」の活用をお勧めします。また、定番の実験とその結果についてはマスターしておきましょう。
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社会はニュースや統計データを扱う問題が定番化
特に2026年の中学受験社会の最新傾向として、地理・歴史・公民を横断する応用力が重視されます。さらに最近の傾向としては、生活実感に根付いた問題があげられます。今年は選挙イヤーでしたし、国際情勢も激しく動いています。その中で日本の経済力は低下し、インフレによる国民生活の困窮は社会問題化しています。社会の先生なら、気になってしかたがないニュースばかりなのです。だからこそ、受験生にもそれくらいは考えてほしい、そうした意図を感じる問題が増えて当然です。また、もう一つの流れとして、「資料」に基づく出題が増えています。表やグラフや地図を多用した出題ですね。とくに「地理統計表」を用いた問題は要注意です。例えば、都道府県ごとの統計データ・・・人口・面積・人口増加率・産業別就業人口割合・産業別出荷額・農産物出荷額等 についてまとめた表から、どの都道府県を考えさせるタイプの問題です。私はこうしたタイプの問題を「手抜き問題」と名付けています。だって、作るのが簡単ですから。社会科の先生が手元にもっていた地理統計資料集を適当に抜粋して、都道府県のところを記号に置き換えるだけですぐに作れます。作るのが安直なわりには解くのがやっかいな問題です。 私は、受験は真剣勝負だと思っています。受験生は文字通り小学生生活を犠牲にして、人生を賭けての勝負に挑もうとしているのです。中学校側もその真剣な思いに応えてほしいと思います。安直に作られた問題を見ると怒りが湧いてくるのはそれが理由です。しかし、こうした「安直」な出題が増えた理由も見当がつきます。入試回数の増加です。学校によっては、5回以上もの入試を実施します。ということは、学校の先生は5本もの入試問題を新規に作らなくてはならないのですね。思わず安直な方向に走るというものです。
2026年中学入試で注目される学校
難関校:思考力問題で差をつける出題へ
出題傾向は変わりません。変える必要が無いからです。
開成・麻布・桜蔭・女子学院の4校を受験する層は、ぶれません。受験生の最高レベルの学力を持つ生徒達が志望しています。
ただし、渋谷渋谷と渋谷幕張はその限りではありません。
両校とも人気校ですし、実力校でもあります。とくに女子については、最上位層は今や桜蔭・女子学院・渋谷渋谷に志望が3分されています。
ただし、その中でも渋谷渋谷は要注意です。帰国生を含めて4回も入試を行っており、今後はこの入試制度そのものが変わってくる可能性があるからです。また、受験生の動向もぶれやすいですね。
「何が何でも渋谷渋谷!」という層は、全ての回の受験をしますし、「本当は開成・桜蔭が第一志望なんだけど」という層は、2回入試を受けて合格しても辞退します。また、「渋谷渋谷が第一志望だけど、不安だから」という層は、1回あるいは2回の入試を回避して、例えば広尾学園あたりを受験する場合もあります。つまり、すでに受験生の動向が流動的なのです。
さらに渋谷教育学園は、創業者(本当は二代目)の田村哲夫氏が御年89歳とご高齢であり、理事長&学園長の田村哲夫氏の理念を、長女の高際伊都子渋谷渋谷校長がどこまで引継ぎ発展させられるのかは未知数です。今後に注目する必要があります。
人気上昇中の共学校
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広尾学園
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三田国際科学
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サレジアン国際/サレジアン国際世田谷
- 芝国際
- 羽田国際
- 英明フロンティア
- 明大世田谷
他にもありますが、女子校→共学化&国際化 というのがここ最近の流行でしたね。おそらくこの流れはしばらくは続くのでしょう。どの「専門家」のコメントもそうなっています。
その最初は渋谷幕張&渋谷渋谷であり、広尾学園の成功でもありました。
共学化することで、「旧態依然とした別学に分かれをつげて新しい教育を実践」するアピールができますし、グローバル化は今の時代に求められている要素ですから。また理系教育の充実もトレンドです。
「もう日本の教育は古い!」
「これからは世界で学ばなくては!」
「何と言っても英語が最重要!」
「古臭い教科指導ではなく、プレゼン能力や自主的な研究能力!」
こういった需要は確実にあるのです。
しかし注意が必要なのは、中高の教育にそんなに大きな変化を導入するのは難しい、という点です。
・小学校や中学受験の勉強はそうなってはいない
・中高で学ぶべき内容は文科省に決められている
・大学入試では学力が最重要
これらが変化していませんので、学校も独自の特色をそこまで広げることはできないのです。
そうすると、本気の教育改革はやりにくい。下手すればどこの大学にも受からなくなりますので。
したがって、「新しい教育」が、本当に新しいというより、「新しく見せかけるだけの教育」になりがちなのですね。
その中でも、少しでも教育を変えていこうと工夫をこらしているのです。
私見ですが、まがいものの「新しい教育」を標榜する学校は淘汰されて行くと思います。きれいごとよりも、大学実績が物をいうからです。今後は、しっかりとした大学実績とそれに見合った難易度の学校が人気を集めるはずです。
女子校の注目校
・洗足学園
・昭和女子大附属
・大妻(千代田区)
このあたりは注目です。
今年の東大合格実績をみて、驚かれたかたも多いでしょう。洗足がなんと25名もの合格者を出して、女子学院と肩を並べたのですから。これをもって、「神奈川でフェリスが一番の時代は終わった」「女子学院も来年は抜くだろう」という方もいますね。しかし、それは必ずしも当たらないと言えます。なぜなら、フェリスも女子学院も、東大実績を追いかける学校ではなく、両校の魅力もそこにはないからです。とはいえ、洗足の躍進は目覚ましい。これは、学校が徹底的に学力向上に舵を切った成果だと思います。地域的に「鉄緑会」に通いづらい立地ですが、学校で補習や夏期講習まで実施する徹底ぶりですから、その大学実績も当然といえるかもしれません。ただし、学校の魅力は大学実績のみでは語れません。せっかく「音楽教育」という魅力があるのですから、それを捨てるのでは勿体ないと思います。
昭和女子大附属は、人気が復活していますね。女子大不人気の中でも、昭和女子大は一定の人気を保っています。テンプル大学との連携もありますし。
大妻は、伝統校の栄枯盛衰の中で、変わらぬ人気と実力を保っている印象です。ぶれない教育が魅力です。学校の実力にみあった大学実績が出ています。
伝統校・・・女子校・男子校の安定した人気
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女子校:豊島岡女子や雙葉など、学習サポートと進学実績が強み。
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男子校:駒場東邦、武蔵など、算数重視で思考力を鍛えられる環境
新興共学校が人気を集める中、伝統的な男子校・女子校は安定した人気を誇っています。実際に、共学化した学校は、「それなりの」学校ばかりでした。
女子大閉鎖のニュースをうけ、「これからの時代は共学!」という方も多いですが、それは的外れです。
6年間の充実した教育環境や切磋琢磨する生徒を考えた場合、今のところ別学が有利です。
◆大学実績を出している学校
◆教育理念がぶれない伝統校
この2種類の学校が今後も生き残っていく学校だと考えられます。
大学附属校人気
相変わらず大学付属校が人気です。とくに最近の傾向としては、レベルの高くなかった学校が有名大学と提携するケースです。
中高としては願ったりかなったりでしょう。普通に大学受験すれば入るのが難しい大学への道が開けるのですから。しかし私が気になるのは、大学側の思惑です。
もちろん「早くから生徒数を確保したい」という大学の思惑はわかります。しかし、その学力レベルが気になるのです。すでに、推薦入試・AO入試の増加による大学生の学力低下が問題となっています。生徒集めばかりに奔走する大学の未来はどうなるのか?すでに企業の人事でも、最終学歴の大学名だけではなく、どうやってその大学に入学したのか(一般入試? 推薦? 内部進学?)をチェックする、あるいは中高一貫校出身かどうかもチェックするなどという声も聞いたことがあります。
どう考えても、今後は、大学と提携した中高で、生徒の学力向上が急務となるはずです。そしてその水準をクリアできない生徒は大学に進めなくなるはずです。
保護者が押さえておきたい学習戦略
難化しても差はつきにくい
「難化=全員が解けない問題が増える」ということ。
2026年の中学受験勉強法では、難問対策よりも「標準問題を確実に取る力」が合否を分けます。
そもそも、中学入試に本当の意味での「難問」はありません。満点が可能な問題が普通だからです。
その普通の問題を落とさない。言い古されたことですが、真実です。
得意科目を武器にしない
4科目すべてを同じレベルに仕上げるのは現実的に困難です。だからといって、
算数や国語など「得意科目を伸ばして得点源にする戦略」は愚かです。
入試は総合得点できまります。 しかも、高得点のせめぎ合いが普通です。得意科目で差をつけるより、不得意科目で差を付けられないようにすることのほうが遥かに大切なのです。
最新情報のキャッチアップはもう不要
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塾の模試データ
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ネットに出回る入試情報
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教育ニュース
これらを随時チェックすることはもうやめましょう。学校選びの際の情報収集は正しいですが、いったん志望校が決まった後は、こうした教育情報は見ないのが正解です。なぜなら、その大半が「誤情報」であるからです。親の動揺は子どもに反映します。私としては、入試まではネットを封鎖するくらいでちょうど良いと思っています。あ、私のブログは読んでくださいね。
まとめ
2026年中学入試は「算数の思考力問題」「国語の長文化・記述増」「理科の実験分析問題の増加」「社会の記述問題増加」といった難化が予想されるのですね。
学校の人気でいえば、広尾学園・三田国際科学等新興共学校の人気上昇は見逃せないトレンドです。
しかし、このトレンドはすでに言い古されていますね。私の個人的な考えとしては、このトレンドは、短命に終わると思われます。見せかけだけの「人気校」は淘汰され、本当に大切な教育を地に足をつけて実践し続ける学校が結局のところは生き残れるからです。その学校の教育を受けた卒業生が自分の子どもを入学させるまでが1サイクルと考えると、最低でも30年はかかりますね。すくなくとも創立から30年以上たった学校のほうが「安心」だと思います。
新興校・人気の共学校を考える際は、「先物買い」であることを認識し、じっくりと学校の本質を見極めることが大切です。
今後はむしろ、伝統校の変革に注目しましょう。
例えば山脇学園。この学校は以下のような点が評価ポイントです。
・立地・・・赤坂
・校地・・・2011年に閉校となった山脇短大の校地と設備をそのまま中高が使用しています。
・伝統・・・1903年設立の伝統を誇ります。
こうした利点に加えて、昨今は理系教育や国際教育に舵を切った施策をあれこれ打ち出しています。
伝統校の信頼感に加えて新しい教育の匂い、これは最強の組み合わせかもしれません。
私も過去に、渋谷渋谷の創立初年度に一人の生徒を受験させたときにはハラハラしました。きっと良い学校になるだろうと予想はしていたものの、一人の生徒の人生を左右しますので。結果として、成績下位だったその生徒は見事に合格し、その後学校も飛躍しました。うまくいったからここで書けますが、新興校の是非を判断するのは、我々プロでもなかなか難しいのです。とくにどれだけ良い教員をお金をかけて集められるのかがポイントです。設備に多額の投資をしている学校はそこが心配です。
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保護者の皆さまは、あまり来年の傾向にとらわれなようにしましょう。
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標準問題の徹底
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不得意科目の攻略
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思考力・記述力のトレーニング
を意識して、2026年の中学受験を乗り切りましょう。結局のところ、費やした努力に見合った学校にしか合格できないのですから。余計なことを考えるより、地道に努力を継続するしかないのです。
久々に1万文字を超えてしまいました。最後までお読みいただきありがとうございました。
