中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【ロジカルライティング】番外編 小説を書くのは難しい

今回は、ロジカルライティングの番外編です。

卒業生の中学生ハナコが顔を出しました。

ハナコ:先生、また来てあげたよ。

私:来てあげたって、先週も来たばっかりじゃないか。

ハナコ:いいじゃない。卒業生が顔を出してくれると嬉しいっていつも言ってたよね、先生。

私:そうだな。それで今回の頼み事は何だ?

ハナコ:私が来ると頼み事って決めつけないでよ。

私:違うのか?

ハナコ:そうなんだけど。

私:何か教えてほしいことがあるんだろ。いいよ、その代わり、中学校について教えてくれ。学校の授業の様子や使っている教材、定期試験の内容や部活の様子、あとはクラスで塾に行っている生徒のこととか、何でもだ。

ハナコ:そんなの聞いてどうするの?

私:これから受験する生徒たちの学校選びのときに役立つんだよ。在校生の生の情報だからな。

ハナコ:それくらいお安い御用だけど。それでね、先週小説の書き方を教えてもらったよね。

私:そうだった。どうだ? うまく書けたか?

ハナコ:一応先生のアドバイス通りに書いて提出はしたんだ。

私:よかったじゃないか。

ハナコ:ミドリっていう中学生の女の子が主人公でね。それでミドリがいつものように通学で電車に乗っていると、線路際に立つビルの部屋の中が少しだけ見えるんだ。ちょうど駅に着く直前でスピードが落ちているときだから。それで、どうしても窓の中の光景が気になって、ある日思い切って途中下車してビルを訪ねてみたんだよ。そうしたら、そこは「笑い方研究所」って言う部屋で、」

私:ちょっと待て。それって先週私が教えたとおりじゃないか。主人公の名前まで同じだ。

ハナコ:いいじゃない、それくらい。まあそうやって何とか書いて提出したことはしたんだけど、どうしても納得いかなくて。

私:納得?

ハナコ:何ていうんだろう、私が書いた小説って、小説というよりあらすじを紹介しているみたいで。一応ストーリーはできてたんだけど、それだけなんだよ。自分で書いてても面白くないんだ。ねえ、そういう時はどうしたらいいの?

私:なるほどな。別にいいんじゃないか、それでも。私の好きな作家に、イギリスのジェフリー・アーチャーという作家がいてね。

ハナコ:どんな本書いてるの?

私:「百万ドルを取り返せ」とか、「ケインとアベル」とか、短編も長編も、もうとにかく面白い。しかも、国会議員になったり詐欺にあって破産したり、実刑で投獄されたり男爵になったりと、彼自身が波乱万丈の生涯を送ったんだ。彼が小説はストーリーが一番大切だと言っていた。日本に来日したときの講演会を聞きにいったときにね。

 

ハナコ:そうか、ストーリーが大切なんだね。

私:とはいえ、さすがにあらすじみたいなのはまずいかもしれないな。

ハナコ:そういう時はどうするの?

 

小説はお芝居

私:ハナコの書いた小説に、会話は出てきたか?

ハナコ:ほとんどないよ。ハナコはここに行った、この人に会った、こう言われた、そんなかんじだったから。

私:それはつまらなそうだな。いいか、小説はお芝居だと考えてみようか。

ハナコ:あ、それ、先生に国語習ってたときに先生がいつも言ってたやつだ。

私:そうだな。小説には必ず主人公がいる。そしてその他にも登場人物がいる。彼らが会話することで物語が進んでいくんだ。まさにお芝居だな。だから国語の読解では、舞台・登場人物をきちんと整理することが大切だっただろ。

ハナコ:うん、そう習った。あと場面転換、時間の経過にも注意しろっていつも言われたよ。

私:それは小説を書くときにも大切なんだよ。とにかく登場人物が会話しないことには芝居にならないだろ? ちょっと例を出してみるよ。

 

ミドリは駅前のビルの階段を3階まで登ってみた。電車から見える部屋はここのはずだ。その扉には、「笑い方研究所」と看板がある。ミドリはドアを開けると、笑顔の男性が出迎えてくれた。男性によると、ここは笑い方を学ぶところで、受動的な笑い以外に自発的な笑いが身に着くという。そこで、ミドリも会員になって習うことにした。

 

ミドリが電車内から見えるビルの部屋を訪ねると、笑顔の男性が出迎えた。

「いらっしゃい。入会希望の方ですか?」

「いえ、少しだけ見学させてもらってもいいですか?」

「ええ、もちろんかまいませんよ。ちょうど今中級クラスの講座が終わったところですから」

「ここは笑い方を研究している研究所なんですか?」

「いやあ、研究所なんて大げさなものではないのですがね。でも、いろいろな笑い方を勉強したり身に着けたりするところには間違いありませんよ」

「笑い方って、習うものなんですか?」

「それはそうですよ。あなたは笑うのが得意ですか?」

「得意っていうか、自然に笑ってますけど」

「どういう時に?」

「それは、面白い話を聞いたり、動画を見たときとか」

「ほら、その笑いは受動的な笑いに過ぎないのです。笑いには、受動的な笑いと、自発的な笑いの2種類があるのです。あともう一つ、絶対的な笑いというものがあるのですが、これは修得するのは困難です。まずは自発的な笑いを身に着けてみませんか?」

 

私:どっちが面白そうだ?

ハナコ:それは会話のほう。最初のほうは、私が書いた文章そっくりだよ。

私:会話を入れるとリズムが生まれるんだ。そのリズムが読みやすさにもつながるんだね。

 

情景描写

ハナコ:そうか。もっと会話を入れればよかった。

私:それだけではまだ足りない。情景描写も必要だ。

ハナコ:情景描写?

私:だって、上の例文では、どんなビルなのかとか、部屋の様子とか、練習生のようすとか、何も書かれてないだろ? お芝居でいえば、真っ白な壁の前で二人が会話しているだけじゃないか。ちゃんと場面がわかるようなセットを作ってあげなくてはね。

ハナコ:それはわかる気がする。ちょっとやってみるね。

 

ミドリは古びた4階建てのビルの前に立った。1階は漢方薬の薬局になっていて、その横の階段を上る。階段はすり減っていて埃だらけで、もう何年も掃除されていない様子だった。3階の部屋が目指す部屋のようだった。ところどころペンキが剥げたドアには、薄れかかった文字で、「笑い方研究所」とある。そっとドアを開けると、笑顔の男性が出迎えた。ミドリの父親くらいの年代のその男性は、時代遅れのポロシャツにグレーのズボンをはいていて、まるでこれからゴルフに行くような服装だ。身体も顔もまん丸で、さらに丸い笑いを浮かべていた。

 

ハナコ:どうかな?

私:いい! 実にいいぞ。まるで今自分が笑い方研究所のドアを開けたような臨場感が出てきただろ?

ハナコ:そうか。こう書けばよかったんだ。

私:小説の醍醐味は没入体験にあるからな。読者をどれだけ惹きつけて小説世界に没入させるのか。そのためには、会話も情景描写もとても大切なんだ。

ハナコ:そうか、そういうことだったんだ。でも、情景描写って、私苦手なんだよね。どうしたらいいの?

 

インプットが大切

私:それはインプットが少ないからだな。

ハナコ:インプットって?

私:読書量!

ハナコ:ああ。本を読めってことね。

私:そうだ。読書量に比例して文章力は上がる。逆に言うと、読書をしなければ永久に文章力は向上しない。

ハナコ:何を読めばいいの?

私:何でもいい。ライトノベル以外なら。

ハナコ:もう中学生なんだからライトノベルなんか読まないよ。それじゃあ、芥川龍之介とか夏目漱石とか?

私:それも基本中の基本の作家だね。あと、文章力でいうと、川端康成や三島由紀夫がお薦めだ。本当に美しい日本語を書く作家だから。三島由紀夫の「金閣寺」の一節はこうだ。

「父の故郷は、光りのおびただしい土地であった。しかし一年のうち、十一月十二月のころには、たとえ雲一つないように見える快晴の日にも、一日に四五へんも時雨が渡った。私の変わりやすい心情は、この土地で養われたものではないかと思われる。」

ハナコ:時雨が渡るなんて書けないよ。古典じゃなければだめなの?

私:そんなことはない。この前読んだ本も良かったぞ。森沢明夫の「エミリの小さな包丁」という本だ。まだ50代の作家だが、文章が読みやすくて巧みだ。

「梅雨が明けたのは、ほんの三日前のことだった。そして、その日からいきなり世界はぎらついた光であふれ出した。オセロの駒をひっくり返したみたいに、私の周りは突如として夏になったのだった。」

ハナコ:ほんとだ、おもしろい表現だね。オセロの駒をひっくり返したみたいだなんて。でも、何となくイメージできるよね。

私:とにかくたくさん本を読んでごらん。そのうちいつのまにか文章力が上がるから。

 

生みの苦しみを知る

 

実は、物語を書いてみることは、国語力向上にとても効果がある学習法なのです。

子どもたちにいくら本を読ませたところで、どうしてもストーリーに引きずられ、その作品にみられる表現の多様さや個性といったものに目が向きません。まあ作者も物語を彩り豊かにするために様々な技巧を凝らすので仕方がないのですが。

 

しかし、自分で実際に物語を書こうとすると、はじめてわかるのです。自然な会話や表現がいかに大切かを。

生みの苦しみを知った後で小説を読むと、読み方がはっきりと変わります。文章表現の細部にまで注意が向くようになるのですね。

 

時間さえあれば、こうした国語力の指導もやってみたいところです。もっとも小学生にはまだ早い。あまりにインプットが少なすぎて、骨組みだけ、ストーリーだけの物しか書けませんので。中学生以上にはぜひ試してほしいやり方です。どうやらハナコの学校の先生はわかっていらっしゃるようですね。

 

上で紹介したジェフリーアーチャーは、本当に面白く、お薦めです。文学的素養が身に着くというより、すとーrは、ロジカルライティングの番外編です。

 

卒業生の中学生ハナコが顔を出しました。

 

 

ハナコ:先生、また来てあげたよ。

 

私:来てあげたって、先週も来たばっかりじゃないか。

 

ハナコ:いいじゃない。卒業生が顔を出してくれると嬉しいっていつも言ってたよね、先生。

 

私:そうだな。それで今回の頼み事は何だ?

 

ハナコ:私が来ると頼み事って決めつけないでよ。

 

私:違うのか?

 

ハナコ:そうなんだけど。

 

私:何か教えてほしいことがあるんだろ。いいよ、その代わり、中学校について教えてくれ。学校の授業の様子や使っている教材、定期試験の内容や部活の様子、あとはクラスで塾に行っている生徒のこととか、何でもだ。

 

ハナコ:そんなの聞いてどうするの?

 

私:これから受験する生徒たちの学校選びのときに役立つんだよ。在校生の生の情報だからな。

 

ハナコ:それくらいお安い御用だけど。それでね、先週小説の書き方を教えてもらったよね。

 

私:そうだった。どうだ? うまく書けたか?

 

ハナコ:一応先生のアドバイス通りに書いて提出はしたんだ。

 

私:よかったじゃないか。

 

ハナコ:ミドリっていう中学生の女の子が主人公でね。それでミドリがいつものように通学で電車に乗っていると、線路際に立つビルの部屋の中が少しだけ見えるんだ。ちょうど駅に着く直前でスピードが落ちているときだから。それで、どうしても窓の中の光景が気になって、ある日思い切って途中下車してビルを訪ねてみたんだよ。そうしたら、そこは「笑い方研究所」って言う部屋で、」

 

私:ちょっと待て。それって先週私が教えたとおりじゃないか。主人公の名前まで同じだ。

 

ハナコ:いいじゃない、それくらい。まあそうやって何とか書いて提出したことはしたんだけど、どうしても納得いかなくて。

 

私:納得?

 

ハナコ:何ていうんだろう、私が書いた小説って、小説というよりあらすじを紹介しているみたいで。一応ストーリーはできてたんだけど、それだけなんだよ。自分で書いてても面白くないんだ。ねえ、そういう時はどうしたらいいの?

 

私:なるほどな。別にいいんじゃないか、それでも。私の好きな作家に、イギリスのジェフリー・アーチャーという作家がいてね。

 

ハナコ:どんな本書いてるの?

 

私:「百万ドルを取り返せ」とか、「ケインとアベル」とか、短編も長編も、もうとにかく面白い。しかも、国会議員になったり詐欺にあって破産したり、実刑で投獄されたり男爵になったりと、彼自身が波乱万丈の生涯を送ったんだ。彼が小説はストーリーが一番大切だと言っていた。日本に来日したときの講演会を聞きにいったときにね。

 

 

 

ハナコ:そうか、ストーリーが大切なんだね。

 

私:とはいえ、さすがにあらすじみたいなのはまずいかもしれないな。

 

ハナコ:そういう時はどうするの?

 

 

 

小説はお芝居

私:ハナコの書いた小説に、会話は出てきたか?

 

ハナコ:ほとんどないよ。ハナコはここに行った、この人に会った、こう言われた、そんなかんじだったから。

 

私:それはつまらなそうだな。いいか、小説はお芝居だと考えてみようか。

 

ハナコ:あ、それ、先生に国語習ってたときに先生がいつも言ってたやつだ。

 

私:そうだな。小説には必ず主人公がいる。そしてその他にも登場人物がいる。彼らが会話することで物語が進んでいくんだ。まさにお芝居だな。だから国語の読解では、舞台・登場人物をきちんと整理することが大切だっただろ。

 

ハナコ:うん、そう習った。あと場面転換、時間の経過にも注意しろっていつも言われたよ。

 

私:それは小説を書くときにも大切なんだよ。とにかく登場人物が会話しないことには芝居にならないだろ? ちょっと例を出してみるよ。

 

 

 

ミドリは駅前のビルの階段を3階まで登ってみた。電車から見える部屋はここのはずだ。その扉には、「笑い方研究所」と看板がある。ミドリはドアを開けると、笑顔の男性が出迎えてくれた。男性によると、ここは笑い方を学ぶところで、受動的な笑い以外に自発的な笑いが身に着くという。そこで、ミドリも会員になって習うことにした。

 

 

 

ミドリが電車内から見えるビルの部屋を訪ねると、笑顔の男性が出迎えた。

 

「いらっしゃい。入会希望の方ですか?」

 

「いえ、少しだけ見学させてもらってもいいですか?」

 

「ええ、もちろんかまいませんよ。ちょうど今中級クラスの講座が終わったところですから」

 

「ここは笑い方を研究している研究所なんですか?」

 

「いやあ、研究所なんて大げさなものではないのですがね。でも、いろいろな笑い方を勉強したり身に着けたりするところには間違いありませんよ」

 

「笑い方って、習うものなんですか?」

 

「それはそうですよ。あなたは笑うのが得意ですか?」

 

「得意っていうか、自然に笑ってますけど」

 

「どういう時に?」

 

「それは、面白い話を聞いたり、動画を見たときとか」

 

「ほら、その笑いは受動的な笑いに過ぎないのです。笑いには、受動的な笑いと、自発的な笑いの2種類があるのです。あともう一つ、絶対的な笑いというものがあるのですが、これは修得するのは困難です。まずは自発的な笑いを身に着けてみませんか?」

 

 

 

私:どっちが面白そうだ?

 

ハナコ:それは会話のほう。最初のほうは、私が書いた文章そっくりだよ。

 

私:会話を入れるとリズムが生まれるんだ。そのリズムが読みやすさにもつながるんだね。

 

 

 

情景描写

ハナコ:そうか。もっと会話を入れればよかった。

 

私:それだけではまだ足りない。情景描写も必要だ。

 

ハナコ:情景描写?

 

私:だって、上の例文では、どんなビルなのかとか、部屋の様子とか、練習生のようすとか、何も書かれてないだろ? お芝居でいえば、真っ白な壁の前で二人が会話しているだけじゃないか。ちゃんと場面がわかるようなセットを作ってあげなくてはね。

 

ハナコ:それはわかる気がする。ちょっとやってみるね。

 

 

 

ミドリは古びた4階建てのビルの前に立った。1階は漢方薬の薬局になっていて、その横の階段を上る。階段はすり減っていて埃だらけで、もう何年も掃除されていない様子だった。3階の部屋が目指す部屋のようだった。ところどころペンキが剥げたドアには、薄れかかった文字で、「笑い方研究所」とある。そっとドアを開けると、笑顔の男性が出迎えた。ミドリの父親くらいの年代のその男性は、時代遅れのポロシャツにグレーのズボンをはいていて、まるでこれからゴルフに行くような服装だ。身体も顔もまん丸で、さらに丸い笑いを浮かべていた。

 

 

 

ハナコ:どうかな?

 

私:いい! 実にいいぞ。まるで今自分が笑い方研究所のドアを開けたような臨場感が出てきただろ?

 

ハナコ:そうか。こう書けばよかったんだ。

 

私:小説の醍醐味は没入体験にあるからな。読者をどれだけ惹きつけて小説世界に没入させるのか。そのためには、会話も情景描写もとても大切なんだ。

 

ハナコ:そうか、そういうことだったんだ。でも、情景描写って、私苦手なんだよね。どうしたらいいの?

 

 

 

インプットが大切

私:それはインプットが少ないからだな。

 

ハナコ:インプットって?

 

私:読書量!

 

ハナコ:ああ。本を読めってことね。

 

私:そうだ。読書量に比例して文章力は上がる。逆に言うと、読書をしなければ永久に文章力は向上しない。

 

ハナコ:何を読めばいいの?

 

私:何でもいい。ライトノベル以外なら。

 

ハナコ:もう中学生なんだからライトノベルなんか読まないよ。それじゃあ、芥川龍之介とか夏目漱石とか?

 

私:それも基本中の基本の作家だね。あと、文章力でいうと、川端康成や三島由紀夫がお薦めだ。本当に美しい日本語を書く作家だから。三島由紀夫の「金閣寺」の一節はこうだ。

 

「父の故郷は、光りのおびただしい土地であった。しかし一年のうち、十一月十二月のころには、たとえ雲一つないように見える快晴の日にも、一日に四五へんも時雨が渡った。私の変わりやすい心情は、この土地で養われたものではないかと思われる。」

 

ハナコ:時雨が渡るなんて書けないよ。古典じゃなければだめなの?

 

私:そんなことはない。この前読んだ本も良かったぞ。森沢明夫の「エミリの小さな包丁」という本だ。まだ50代の作家だが、文章が読みやすくて巧みだ。

 

「梅雨が明けたのは、ほんの三日前のことだった。そして、その日からいきなり世界はぎらついた光であふれ出した。オセロの駒をひっくり返したみたいに、私の周りは突如として夏になったのだった。」

 

ハナコ:ほんとだ、おもしろい表現だね。オセロの駒をひっくり返したみたいだなんて。でも、何となくイメージできるよね。

 

私:とにかくたくさん本を読んでごらん。そのうちいつのまにか文章力が上がるから。

 

生みの苦しみを知る

実は、物語を書いてみることは、国語力向上にとても効果がある学習法なのです。

 

子どもたちにいくら本を読ませたところで、どうしてもストーリーに引きずられ、その作品にみられる表現の多様さや個性といったものに目が向きません。まあ作者も物語を彩り豊かにするために様々な技巧を凝らすので仕方がないのですが。

しかし、自分で実際に物語を書こうとすると、はじめてわかるのです。自然な会話や表現がいかに大切かを。

 

生みの苦しみを知った後で小説を読むと、読み方がはっきりと変わります。文章表現の細部にまで注意が向くようになるのですね。

 

時間さえあれば、こうした国語力の指導もやってみたいところです。もっとも小学生にはまだ早い。あまりにインプットが少なすぎて、骨組みだけ、ストーリーだけの物しか書けませんので。中学生以上にはぜひ試してほしいやり方です。どうやらハナコの学校の先生はわかっていらっしゃるようですね。

 

 

上で紹介したジェフリーアーチャーは、本当に面白く、お薦めです。文学的素養が身に着くというより、ストーリーテリングの巧みさに痺れます。

 

◆百万ドルを取り返せ

 彼が史上最年少下院議員となって活躍していたころ、投資詐欺事件にあって破産します。そのことを題材とした小説でデビューしました。まさに転んでもただでは起きない! 内容の紹介はしませんが、ジェフリー・アーチャー入門編としてまずこの一冊。

◆ケインとアベル(上・下)

1906年、ポーランドの片田舎で私生児として生れたヴワデクは、極貧の猟師に引きとられた。時を同じくしてボストンの名門ケイン家に生れたウィリアムは、祝福された人生を歩み始めた。ドイツの侵攻で祖国も肉親も失ったヴワデクは、数奇な放浪の旅の果て、無一文の移民としてアメリカに辿りつき、アベルと改名した。「三作目が勝負」と明言した著者が、満を持して発表する大作。

Amazonの宣伝文をそのまま引用しました。

これだけ面白い本を他に知らないと断言できるくらい面白い! よく「ページをめくる手が止まりませんでした!」と宣伝されている本がありますが、まさにこれです。この本をまだ知らなかった人は幸せです。これから読む楽しみがありますので。すでに知っていた方も、もう一度読みたくなりますね。

続編的なものとして、「ロスノフスキ家の娘」も読まずにはいられなくなるでしょう。

 

◆獄中記 地獄篇・煉獄編

 政界復帰し、男爵となり、貴族院議員となりました。ところがロンドン市長選出馬を目前として偽証罪等で実刑判決をうけ投獄。そのノンフィクションです。またしても転んでもただでは起きない!リアルなイギリスの刑務所生活に詳しくなれる本ですね。

 

イギリスの上流階級は、パブリックスクールからオックスブリッジへと進みます。私は彼の小説からそのあたりの事情がわかるようになりました。また、政治家だけあって、選挙や政治家の実態についての描写がリアルで参考になります。

彼の来日講演会は有楽町の朝日ホールでした。後に、何かの講演会で私が話者として同ホールの檀上に立った時、感慨深いものがありましたね。

 

ジェフリー・アーチャーの著作は、外れがありません。短編も秀逸です。

例えば大阪出張のとき、1冊あれば新幹線の時間があっという間に過ぎるでしょう。

 

仕事柄、古典を中心に「歯ごたえ」「読み応え」のある本ばかりを薦めていますが、仕事を離れた読書なら、こうした「一気読み系」の本が実は好きです。

 

peter-lws.net