
今回は、吉祥女子中学校・高等学校についてみてみましょう。
沿革・教育理念
公式HPによると沿革はこうなっています。
1938(昭和13)年 守屋荒美雄が本校の前身帝国第一高等女学校を新宿区大久保に創設
1946(昭和21)年 全校、武蔵野校地に移転。
1947(昭和22)年 吉祥女子中学校に改称。
1948(昭和23)年 吉祥女子高等学校が新発足。
2007(平成19)年 高校募集を停止、中高完全一貫開始。
2015(平成27)年 東京農工大学と高大連携の協定を締結。
2017(平成29)年 東京外国語大学と高大連携の協定を締結。
2020(令和2)年 国際基督教大学・東京学芸大学と高大連携の協定を締結。
2024(令和6)年 東京医科大学・東京理科大学と高大連携の協定を締結。
創設者の守屋 荒美雄氏は、地図で有名な帝国書院の創業者です。
地理教育から地図会社、そして学校を設立という経緯です。
学校の創立経緯は、政治家⇒学校経営、実業家⇒学校経営と言う流れと、教育者⇒学校経営という流れがありますね。どれが優れているとかいうことはないのですが、やはり教育に理念と情熱をもって実際に生徒を指導していた人のほうが何となく信頼できる気がします。
地元に詳しい人に聞いたところ、昔は素行の良くない生徒が多いイメージだったとか。いったいいつの話だ?
それを言うなら、洗足もそういう噂でしたし、鴎友だって、かつては4大より短大・専門学校に進学する生徒ばかりだった時代があります。
一部の伝統校を除いて地域の優秀な生徒は、みな日比谷高校や西高校を目指す、そうした時代の話でしょう。
建学精神はこうなっています。
「社会に貢献する自立した女性の育成」
なるほど。ミッション系ではない女子校に多くみられる、地に足のついた理念ですね。
さらにHPにはこうあります。
吉祥女子中学・高等学校は地理学者であった守屋荒美雄〈教科書や地図帳などを出版している帝国書院の創設者〉とその長男で数学者であった守屋美賀雄〈東京大学教授や上智大学学長などを歴任〉という二人の研究者が、昭和13(1938)年に創立した学校です。二人の真摯かつ継続的に学ぶ姿勢が本校の根幹にあります。学びは、中学・高校や大学で終わるものではありません。知的探究心を育み、生涯にわたり、学び続けることの素晴らしさを二人の生き方は教えています。
大いに賛同できますね。
ただ、ちょっとよくわからないのが、この「建学の精神と校是」のページだけ、日本語に加えて英文が併記されているのですね。
これは、日本語が読めない人に向けてのメッセージのはずですが、この学校はそうした生徒を受け入れていないはずです。それとも、親が日本語がわからないけれど、子どもはわかる、そうした家庭向け?
ただし、その他の情報の全ては日本語のみですので、この英文併記の理由が不明です。まさか格好をつけただけではないと思いますが。
高大連携
沿革を見るとわかりますが、農工大・外語大・ICU・学芸大・理科大・東京医科大など多くの大学と「高大連携」協定を結んでいます。学校はさらに多くの大学と連携協定を結ぶつもりだそうです。
「高大連携」と聞くと、普通は、大学への推薦枠の拡大をイメージしますよね。しかしどうやらそういうことではなさそうなのです。
あまりに謎なので、理科大と連携協定を結んだ際のプレスリリースをチェックしてみました。
(1)教育についての情報交換及び交流
(2)理科大の教員による吉祥女子中高への出張講義、講演
(3)理科大の各種公開講座への吉祥女子中高の生徒の受け入れ
(4)理科大の留学生と吉祥女子中高の生徒の国際交流
(5)その他、双方が協議し同意した事項
こうしたことを行うとありましたね。
大学の授業や先生に触れることで「その気」にさせることと外部へのアピールが目的だと私は理解しました。
悪いことではないし魅力的には違いないですが、本質的なことではない、というのが私の考えです。
中高生の学びに、大学レベルの指導は不要だと思うからです。それに対応できるとしたら、ギフテッドレベルの生徒だけでしょう。残念ながら、この学校にそうした生徒が多数いるとは思えません。
大学の学びに少しだけ触れることで、将来の進路を決める生徒が出てくることは否定しません。それはとても良いですね。
大学実績
最近伸びてきた進学校。
この学校に対するイメージはこんなところでしょうか。
それでは実際に大学実績は伸びているのでしょうか?
まず、東大・一橋大・東京工大の3校について大学合格実績推移をグラフ化してみました。
※ご存じのように、東工大+医科歯科大⇒科学大になりましたが、学校が出しているデータでは、その両者が区別できません。医科歯科大には例年0~1名程度の合格者のようですので、2025年の実績6名は、東工大とみなしてカウントしました。

グラフを見やすくするために5年移動平均でグラフ化しています。
1990年代を境に、進学校化した印象ですね。
国立3校にコンスタントに合格者が出るようになりました。
一橋の伸びは素晴らしいですが、東大実績は頭打ちに見えます。
学年の上位層10名前後がこうした学校に進学するのでしょう。
おそらくは、私学志向が強い生徒が多いと思われます。そこで、早慶の結果を見て見ましょう。

やはり1990年代から実績を伸ばしてきたのですね。
240名程度の卒業生数で、早慶合わせて3桁は大したものです。
ライバル?校
私は勝手に、この4校をライバル校と思っています。
女子の最上位層の受験パターンというものがあります。
第1志望・・・桜蔭・女子学院 + 渋谷渋谷
第1.5志望・・・豊島岡
第2志望・・・頌栄・鴎友・洗足・吉祥女子
早慶附属等大学附属を受験しない、進学校志望の受験生のパターンです。
やはり最上位層は桜蔭と女子学院に2分されます。最近はそれに加えて共学校の渋谷渋谷も人気が高まりました。この3校で分かれますね。(ただし渋谷渋谷は複数回受験のため、桜蔭・女子学院との併願が可能)
そして、豊島岡も人気です。大学実績もとても良いですね。ただし2月1日の試験を回避?して、2日・3日・4日の3回も入試を行っているあたり、どうしても「落穂拾い」感がぬぐえません。でも、とても良い学校ですし、豊島岡を第一志望とする受験生にとっては3回チャンスがあることは朗報ですので、否定するつもりはありません。
第2志望以上第1志望未満といったイメージを勝手に持っています。
そして、次のグループとして、頌栄・鴎友・洗足・吉祥女子があります。
これらの受験生は、住んでいるエリアによって棲み分けされていると思っています。
GMARCHは問題ない、早慶も普通に合格できる、そして国立・医学部に手が届くかも。
そうした立ち位置なのだと思います。
※洗足は急伸しています。今後に注目です。

グラフだけ見ると、鴎友と吉祥が頭打ち傾向に感じられます。ただし、鴎友は国立の実績が良いので、優秀層がそちらに流れているのかもしれません。
もっとも、学校選び、とくに女子の学校選びは大学実績の優先順位は高くはないのです。それより校風を重視すべきでしょう。
塾・予備校選びではありませんので。
例えば、桜蔭の大学実績は図抜けています。男子校トップ校顔負けです。だからといって、女子学院より桜蔭のほうが優れている、と言う人はいません。実績だけ見て桜蔭を選ぶ人もいません(いや、いますね。不幸な学校選び基準です)。
女子学院に行きたい受験生は、たとえ桜蔭にトップ合格する実力があろうと女子学院を受験する、そうしたものなのです。ちょうど開成と麻布の関係に似ていますね。
鴎友・頌栄・吉祥・洗足についても、校風と通学環境重視で選ぶのが正解です。
比較記事を書いていますのでごらんください。
情報公開の姿勢
この学校は、2年分の入試問題をHPで公開しています。
◆問題・模範解答・解答用紙
ここまでは普通ですが、この学校の素晴らしいところは、さらにこんな情報まで公開しているところにあります。
◆配点
実は、模範解答を公開してはいても、配点は公開していない学校が多いのです。過去問演習を行う受験生の立場からすると、配点がわかるのとわからないのでは大違いです。
◆問題構成・出題意図・対策
1教科あたりA4で2~3ページにわたり、問題の構成や出題意図、さらに対策までが詳細に説明されているのです。ここまで丁寧に説明してくれる学校を私は他に知りません。
◆記述問題の採点方法
学校によっては、記述の解答例を「省略」しているところもありますが、この学校はきちんと公表しています。
さらに、記述の採点基準・採点のポイントに加えて、部分点を与えた解答例と、得点を与えなかった解答例まで公表しています。
これを見れば、この学校の記述の採点がどのような意図でどのように行われているのかが手に取るようにわかります。
家庭での過去問演習で一番悩むのが記述の採点なのですね。市販の過去問題集に掲載されている模範解答は、その多くが「塾」の教師がアルバイトで作ったものです。必ずしも「模範」となる解答ではない場合もあるのです。しかも、どのように採点してよいものか悩みますね。
その点この学校は、家庭でも採点ができるようになっているのです。
吉祥女子を志望する受験生にとって、この情報公開の姿勢はとても助かります。
「うちの学校を受験するのなら、こういう準備をしてきてね。うちの入試問題はこういうつもりで作っているんだよ」
この学校の姿勢が感じられます。
実は、難関校・伝統校とよばれる学校ほど、情報公開の姿勢が「なってはいない」のです。別に受験生に寄り添わなくても、優秀な生徒が目指してくれる。そういう自負・プライドなのでしょうか。それとも、他に理由でも?
たぶん理由などないのでしょう。昔ながらのやり方をそのまま踏襲しているだけなのだと思います。そんな「殿様商売」がいつまでも続くとは思えません。いや、続くのかな? 難関伝統校には魅力があるのは確かですから。
新興校ほど情報公開に熱心です。
と言い切りたいのですが、必ずしもそうではないのですね。
「この学校なら、優秀な生徒集めに必死な学校だから、さぞかし情報公開も」と思って確認したいくつもの学校が、過去問の公開はしていませんでした。
「何様のつもりだ?」
すいません、言葉が汚いですが、私の率直な感想です。学校の本性がこうしたところに表われていると思っています。
もっとも、入試問題と解答を公開している学校の中には、解答が間違っていたり出題ミスがあったりする学校もあるのは、実に格好悪いですね。先生の力量不足としか言いようがありませんので。