
ある保護者に言われたことがあるのです。
「無理して中学受験させたところで、6年後に東大に行けるとは限らない。それだったら、地元の公立中学から公立トップ高校を目指したほうがいいですよね?」
今回は、それについて考察します。
公立高校の復活
まずはこの表をごらんください。
2025年の東大合格者数高校別一覧です。

一都三県を考えます。
20名以上東大に合格した公立高校を見ると、都立日比谷高校・神奈川県立横浜翠嵐高校・埼玉県立浦和高校・千葉県立千葉高校の4校がリストにあがりました。
とくに、都立日比谷高校の81名、神奈川県立横浜翠嵐高校の74名が光っています。
男子校・女子校と共学校を単純比較はできませんし、生徒数も異なりますが、一つの指標としては気になりますね。
例えば、神奈川県から東大を考えた場合、私立共学進学校が少ないので、男子なら聖光・栄光・浅野、女子なら洗足・フェリスでしょうか。
表にないフェリスの東大実績は8名でした。また、共学進学校で東大に数字を出しそうな桐蔭は、かつては3桁の東大合格者を誇ったものの、今年は2名です。
これを見ると、無理して中学受験などせずとも、公立中学から翠嵐高校を目指したほうが「コスパがいい」と思えてしまいますね。
翠嵐高校への道
翠嵐高校へ憧れ、あるいは「合理的かつコスパのよい」受験を考えて、公立中学に進学したとしましょう。公立中学からは、どれくらいの生徒が翠嵐高校に進学しているのでしょうか?
横浜市と川崎市で検証します。手元にあった2024年のデータを調べてみました。
横浜市と川崎市の公立中学校数は78校で、そこから翠嵐高校に進学した生徒の人数は、
平均で1校あたり1.06人にすぎません。横浜・川崎市全公立中学の36%の中学では翠嵐高校への進学者はゼロで、1名だけ進学の中学の割合が41%を占めているのです。
5名以上進学した中学校は7校ありましたが、過去の数字を見ると0名の年もあるといった具合で、コンスタントに5名以上出しているわけではありません。
唯一、横浜大綱中だけが10名もの合格者を出しており、過去も5名以上と優秀です。
東横線大倉山という立地がよいのか、学年300名を超えるマンモス校であることが原因なのかはわかりませんが、「優秀な子が多い中学校」と言われてはいるようです。
しかし、公立中学校の場合、入学試験というハードルはなく、近隣の公立小の小学生たちがそのまま進学してきますので、「優秀な子が集まる」ということは、そのまま立地とイコールになるのです。
都内には、わざわざ転居してまで入学者が集まる「名門」公立小学校というものが存在します。
しかしこうした「名門」公立小学校は、中学受験率が高く、小学校でも優秀層が私立・国立中学に抜けていくため、必ずしも地元の公立中学校のレベルに寄与しないという傾向があるのです。
翠嵐高校を目指すということは、公立中学校でトップの成績、文字通り1番の成績をとるということが必須条件と考えてよいでしょう。
「上位1割を目指す」「学年1桁の順位」という目標設定が、ある程度現実味を帯びて感じられるのに対し、「1番」を目指すというのは大変な難事業です。
どの公立中学校にも、優秀な子はいます。
◆筑駒(or開成or桜蔭)を受験したが、惜しくも不合格となり、高校受験でリベンジを誓っている生徒
◆非常に優秀で、もし中学受験していたら筑駒・開成・桜蔭に軽く合格したレベルだが、家庭の方針により最初から公立中学進学を決めていた生徒。
◆海外帰国子女で、受験準備が間に合わずに中学受験をしなかったが、英語はネイティブであり、他教科もできる生徒。
◆他にやりたいことがあり(芸術系・スポーツ系)中学受験をしなかっただけで、潜在能力が計り知れない生徒。
◆真面目に努力し続けることができる才能を持ち、先生の信頼もあつい優等生。
そうした生徒を押しのけて1番を取ることがどれだけ困難なことなのかは容易に想像できると思います。
翠嵐高校への道が、いかに狭き門であるかわかりますね。しかも、翠嵐高校進学レベルの受験生は、筑駒高校や開成高校を併願するレベルの生徒たちです。
都立日比谷高校については新しいデータを持っていなかったので、少し古いデータを調べてみました。
同じような傾向でしたね。
年平均で3人以上の進学者がいる公立中学校は3校程度にすぎません。
大半が0名~2名程度です。
やはりここでも、公立中学校の文字通り「トップ」の生徒が1名日比谷高校に進学できるのです。
それだからこそ優秀な生徒が集まる
日比谷高校や翠嵐高校には、東京・神奈川の各中学校で1番だった生徒たちが集結します。それを考えると、どんな高校生活になるのかワクワクさせられますね。
それこそが両校の魅力であり、結果としての大学実績ということなのでしょう。
「内申」というグレーゾーンがあるのが高校入試の嫌なところなのですが、この両校に進学するレベルの生徒たちにとっては些末な問題なのかもしれません。