中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】過去問演習の5つの鉄則

6年生の最後の学習では、過去問演習が最重要であると口を酸っぱくして何度も言ってきました。

今回は、さらにしつこく、過去問演習のやり方の鉄則について解説します。

鉄則1:問題は選ばない

 過去問演習の目的を見失ってはいけません。

「志望校の出題傾向を知る」ためではないのです。

◆足腰の強い得点力を鍛える

◆実戦的な知識を身につける

◆問題を解く作法を身につける

この3つが目的です。

(1)足腰の強い得点力

 これは、多様な学校の多様な問題を多く解くことでのみ得られます。

 国語でいえば、説明文・随筆・物語文・詩、そしてそれらに分類しづらい文章が出題されています。説明文しか解いたことのない生徒には、物語文で得点することは難しいでしょうし、詩の読解も困難でしょうね。

 多様な文章の読解をやることでのみ、未読の問題文をその場で読解する力が得られます。

 地理の問題であっても、地形図から出題される場合、部分地図が使われる場合、文章形式で出題される場合、表やグラフが用いられる場合など様々な出題方法があります。どんなスタイルで出されてもきちんと解答できるためには、多くの問題を解くしか方法がありません。

 

(2)実戦的な知識

 とくに社会科で有効です。

歴史の知識を考えてみましょう。歴史年代は、少なくとも150個は丸暗記する必要があります。そして、それぞれの事象には、何人もの人物が関わっています。

1600年 関ケ原の戦い

ここには、無数の人物がからんでいますね。

徳川家康・井伊直政・黒田官兵・衛藤堂高虎・徳川秀忠・本多忠勝・黒田長政・伊達政宗・本多正信・福島正則・加藤清正・最上義光・榊原康政

石田三成・毛利輝元・小西行長・真田昌幸・立花宗茂・宇喜多秀家・大谷吉継・上杉景勝・直江兼続・島津義弘・島左近・安国寺恵瓊・佐竹義重

まだまだいます。

まさか全ての武将を知る必要はありません。では、中学入試ではどの人物が必要なのでしょうか?

これは、入試問題を解くしかありません。そこに出てきた人物がすなわち、「実際に出題された」人物なわけですので。しかも複数年度の様々な学校で出題された人物がいれば、それこそが覚えるべき重要人物であることがわかります。

つまり、過去問演習から得られる知識は「実戦的」な知識なのですね。

 

(3)問題を解く作法

・次のア~オの中から正しいものを1つ選びなさい。

・次のア~オの中から正しいものを全て選びなさい

・次のア~オの中から正しいものを1つ選びなさい。正しいものが無い場合はカと答えなさい

・A~Hを古い順に並べ替え、古いほうから3番目と5番目を記号で答えなさい。

・次のア~コの中から、ただしいものがいくつあるか選び数字で答えなさい。

・A~Fにはそれぞれ3つの文章が書かれています。3つとも正しい場合にはア、2つだけ正しい場合にはイ、1つだけ正しい場合にはウ、正しいものが無い場合にはエを、それぞれ答えなさい。

・A~Fの文章の下線部ア~エには、誤っているものがあります。正しい語句に直しなさい。誤っているものが無い場合には、〇印を答えなさい。

 

きりがないのでやめますが、記号選択レベルの問題であっても、出題方法には無数のバリエーションが存在します。

「良問」を出す学校ほど、不要にひねくった出題はせずストレートな出題です。しかし、受験生の学力や知識をきちんと計ることよりも、つまらないミスを誘発させることを目的とした出題も多いのです。

 そして、生徒は出題者が用意した「落とし穴」にはかならずはまります。

こればかりは、多くのバリエーションの問題を解くことでしか「解き方」は身に付きません。

 

つまり、解かせる問題の選び方は、学校を選ばずに、むしろいろいろな学校の問題を解くことが大切なのです。

 

鉄則2:時間は正確に測る

 タイマーを用意してください。「キッチンタイマー」として100円ショップで売られているもので十分です。60分まで測定できればよいので。

学校が設定した試験時間を正確に測りましょう。

さらに、テストの順番も決めましょう。

その入試問題を出題した学校の試験の順番に揃えるのが基本です。

ほとんどの学校は、

国語・算数・理科・社会

国語・算数・社会・理科

のどちらかでしょう。

国語の採点に最も時間がかかるのでこの順番になっているのです。

なかには、国語と社会、算数と理科が抱き合わせの場合もありますね。

塾によっては、試験時間をわざと短く設定させるところもありますが、意味はありません。

 

鉄則3:500点満点に換算する

 せっかく解いたのですから、得点を出して、表にまとめましょう。これが受験校を確定する際に重要な意味を持つのです。

 ただし、記述問題は辛目に採点することをお勧めします。そこでおまけすることは意味がありませんので。

 得点は、算数・国語が150点ずつ、理科・社会を100点ずつに換算して一覧表に整理します。

 多くの学校では、算数・国語と理科・社会で傾斜配点になっています。150:100、100:80、100:75、120:80などさまざまです。もちろん均等配点の学校もあります。

こうした異なる配点の学校の点数を比較しやすくするために、3:2の比率、つまり150:100に換算して500点満点とするのです。

4科目合計点(換算点)が300点で6割、350点で7割ですね。おそらく夏のこの時期、過去問演習を始めたばかりのころは、半分くらいの得点で低迷することでしょう。

まずは6割の300点を目標にしてみましょう。

「今回は算数と国語はまずまずだったけど、あと理科で10点、社会で5点取れれば6割に到達できたのに!」

 このようにして具体的な点数の目標が見えることで、1問1問に向き合う真剣さが育つ効果があります。

※学校の入試問題の難易度は無視してください。灘や麻布のように癖がある学校の問題でなければ、たくさん解いているうちに難易度の差は誤差の範囲とみなせますので。

 

※ペンの種類

細いボールペンはおすすめしません。赤のサインペンがよいでしょう。それもぺんてるのサインペンが最高です。おそらく学校の先生も塾の先生も同じサインペンを使っていると思います。

私もこれしか使いません。あらゆる種類の赤ペンを試したけれど、結局はこれに帰るのです。(別に私はぺんてるの回し者ではありませんが、これが一番使いやすいのです。大昔から学校教師の定番です)

 

鉄則4:ケアレスミスを軽視しない

 

 いよいよ間違え直しに入ります。用意するのは、赤ペンと青ペンです。知識不足による間違いは赤で、ケアレスミスによる間違いは青でマーキングします。

 子どもは、ケアレスミスを軽視しがちです。

ケアレスミスは「間違い」ではないと認識しています。

「わかってたけれど、ちょっと間違えたただけ」

「この問題は解けた問題」

こうやって「良い方」へと勝手に解釈するのですね。

しかし、ケアレスミスだろうが解けなかった問題であろうが、×は×、同じ点数です。

そうしたケアレスミスを浮き彫りにするためにも、色分けするのです。

 

鉄則5:メモ帳に書きだす。

生徒を見ていると、解答用紙の間違えた問題の横に赤字で正しい答を書いていますね。

全く意味はありません。

問題を見てみましょう。

問 次の中から鎌倉時代の説明として誤っているものを1つ選び記号で答えなさい。

ア.西日本ではで二毛作が行われるようになった。

イ.女性の御家人もいた。

ウ.御家人は鎌倉周辺に住み、将軍の命令で戦う準備をしていた。

エ.御家人は自分の領地で農民の指導を行っていた。

 

この問題はイとエがひっかけです。女性の御家人? と思いますが、分割相続を行っていた鎌倉時代には、女性も男性と同じように親の領地を分割して相続します。場合によっては一族郎党を率いる場合もあったのです。しかし、分割相続が続くと所領が小さくなってしまいます。そこで室町時代になると一子相続が行われるようになり、長男一人が所領を相続するため、女性の地位が低下したのですね。

エも、まるで農民のリーダー、村長のようなイメージですが、これが鎌倉武士の姿です。ウは戦国時代以降ですね。アもよく出題される知識です。鎌倉時代に西日本で始まった二毛作や牛馬耕は、室町時代になると東日本まで広がりました。

 

この問題を間違えたということは、すくなくともこれくらいの知識が欠けていたことを意味しますので、これくらいの知識はメモ帳に書きだす必要があるのです。