
10年以上前の本で恐縮です。
読んだのが最近なもので。
作者の眉村卓は、SF作家です。子供向けの本も書いていますね。いわば、「大衆作家」(ほとんど死語です)になるのでしょうか。
この本は、癌で余命1年を宣告された妻のために、毎日1編短編を書くことにした筆者が綴った短編集です。1778話ということは、5年に渡り書き続けたのですね。
そうした背景があるもので、実は買ったはよいがそのまま書棚の隅に放置していました。いわゆる「お涙頂戴」系の本はあまり好きではないのです。感動を人から強要される気がして。
先日、「そういえば読んでない本がたくさんあるなあ」と手にとって開きました。
予想に反して、ただの短編集でした。
いわゆる「ショートショート」というものですね。星新一の世界観です。
星新一ほど徹底していませんが、オチがある構成です。
「文学的」な深みもありませんし、目のさめるような斬新なアイデアもありません。どちらかというと、平均的な出来のショートショートがたくさん集まっているだけです。
作品の後には、ちょっとした作者のコメントがあります。そこにも、特に、妻の病状についても触れられていませんし、筆者の看病の様子も書かれていません。
こうして淡々と書き続けられた短編集です。
そしてそのことが、かえって読者の心に響いてきます。
死へのカウントダウン中の妻のために、「作家としてできること」として、少しおもしろい短編を毎日書き続けた。
そのことの重みが胸にせまってきます。
私もこのブログで駄文を書き連ねてきました。すでに650本ほどになりました。毎日1本ずつ書くことは、なかなかの苦行でもあります。
そして最後の1編を読んだとき、ぐっとくるものがありました。
小学生にも簡単に読める本です。読んだからといって「国語力が向上」することもないでしょうし、夏の読書感想文のネタにもなりません。
でも、読む価値はある、そういう本です。
