中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

夏休みの読書体験 古典を読もう!

いよいよ夏休みですね。

夏休みといえば、読書です。

学校から読書感想文を課されている場合もあるでしょう。

今回は、夏の読書にふさわしい本をご紹介します。

 

「有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む」

 

古本屋が好きです。学生時代は、神田・神保町の古書店街をうろつくのが大好きでした。

最近は、神保町にはめったに行かなくなりましたが、その代わり近所のブックオフにはよく行きます。2000円なら絶対に買わないような本でも800円だったら買う気になりますし、1000円なら手をださなかったであろうタイトルでも250円なら思わずかごに入れてしまいます。

そうして買った本の一つがこれです。

漫画で読む文学作品

中身はタイトル通りです。

絵柄は、完全に水木しげるです。

今回私がこれを推奨する理由は、「とりあえず漫画なら子どもでも読めるだろう。古典のあらすじくらいを知っておいてもいいよね」というものでは全くありません。

そもそも古典文学作品が、10ページの漫画で表現できるわけがありません。

私がこれを買った理由は、「生徒に古典を読めといつも言っているが、さて何を薦めようかな。ええと、あの作品はどんな話だったっけ?」と、過去に自分が読んだ本の内容を思い出すために買ったのです。

 

目次を紹介します。

◆「有名すぎる・・・・」

有名すぎる文学作品

 

なるほど。たしかに有名作品ばかりです。さすがに全て読んだことはありましたね。ただし、読んだのは中学生のころなので、内容を忘れているものもあります。

「阿Q正伝」、魯迅といえばこれという代表作です。どうにも印象に残っていないので、漫画を読んでみました。ああ、思い出しました。あまりにつまらなかったので記憶から消えていたのでした。

革命前後の時代背景が評価ポイントなのだとは思いますが、これを生徒に勧める気はなくなりました。

それなら、パールバックの「大地」をお薦めします。私も中学生で読んで強い印象を抱いた本です。

1931年に「大地」はピューリッツァー賞を受賞し、さらに1938年にはアメリカの女性作家として初めてノーベル文学賞を受賞しています。

この作品については、欧米白人目線の小説に過ぎないであるとか、中国に同情的過ぎるとかの批判もありますが、まずは読むことを強くお薦めします。

革命前の中国の農村の徹底的な貧しさが活写され、中国において革命が必然であったことが納得できるのです。孫文の掲げた三民主義が、農民にとっては、知的エリートの戯言と受け止められたのかもしれません。歴史の背景を知るためにも必読の書だと思います。

さすがに小学生には読みこなせない(文体は平易ですが、なにしろ長い!)でしょうけれど、中学生なら読んでほしいですね。

 

同時に手に入れたシリーズの目次はこうなっています。

◆「定番すぎる・・・」

定番すぎる文学作品

島崎藤村の破戒と、小林多喜二の蟹工船が並んでいるのはわかりますが、魏志倭人伝? なかなか謎のチョイスです。しかし、どれも知っておくべき本には間違いありません。

「銀河鉄道の夜」も、個人的に好きではない宮沢賢治ですが、まあ読んでおかねばならないのでしょうね。

ちなみに、私が「銀河鉄道の夜」を好きではない理由は、「死」を生煮えのように扱っている点にあります。好きな人にはそこがたまらないのかもしれませんが。

 

◆「必修すぎる・・・・」

必修すぎる文学作品

マルクス・エンゲルスの「共産党宣言」が文学作品? 「蜘蛛の糸」とラヴクラフトが同居? まあこの2つは共通点があるといえるのかもしれませんが。

 

さらにこのシリーズはもう1冊、「必修すぎる・・・」があるのですが、私は入手していません。

3冊も開いたので、もういいかな、と判断しました。

実のところ、水木しげる風(というより水木しげるそのまま)の画風があまり好きではないので、飽きてしまいました。

 

しかし、選択基準は謎すぎますが、忘れていた作品を思い出すのには役立ちました。

織田作之助や坂口安吾など、すっかり忘れ果てていましたので。

 

もう一度強調しますが、これを子どもに読ませるのではありません。

大人が読んで、大昔に読んだ作品を思い出すのに役に立つのです。

そうして、子どもに薦める古典文学を選ぶヒントになるだろう、という本です。