
社会科は知識だけあってもダメな教科です。
しかし、知識がないとどうにもならない教科です。
今回は、暗記のコツをいくつか紹介しましょう。
鉄則1 忘れることを前提とする
人間は忘れる生き物です。自慢ではないですが、私も物忘れがひどいです。別に歳をとったからではなく、若い頃から暗記が苦手でした。
世の中には、映像記憶(写真記憶)の持ち主もいて、実に羨ましい。過去の生徒にもいましたね。ただしその生徒は、自分の好きな教科しか記憶できないといっていました。その能力も中学生になると徐々に薄れていったのだとか。
さて、そうした恵まれた能力がない我々としては、なんとかして社会科の知識を暗記しなくてはなりません。
そこで私が編み出した記憶術の鉄則その1は、「忘れることを前提とする」ことなのです。
「この知識、絶対忘れないように完璧に暗記しよう!」と意気込んだところで、いずれ忘れます。
それだったら、「どうせすぐに忘れるけれど、とりあえず今だけ覚えよう」でいいじゃないですか。この気楽な取り組み姿勢が大切です。 暗記にとりくむ心理的なハードルを下げてくれるからです。
鉄則2 時間をかけない
暗記は退屈な作業です。面白くも何ともありません。できればやりたくない、だけどやらないといけない、そうした性質の学習です。
そんな「嫌な」暗記ですから、なるべく時間をかけたくはないですね。
それでいいのです。
1回に取り組む時間をせいぜい10分間程度に設定しましょう。暗記だけに1時間もの時間を費やすのは愚かなことです。それくらいなら、10分間の学習を、毎日3回繰り返したほうがよほど効果があがります。
私は、いつもピアノの練習をイメージします。私はピアノが好きなのですが、下手です。譜読みが苦手です。ハノンも大嫌いです。しかし、ハノンのような基礎練習はとても大切なのですよね。プロでも毎日1度は弾くと聞きました。
毎日10分でいいから弾きなさい! そう師匠から何度も言われているのですが、一向に守れません。週末に思いついたら1時間くらいピアノに向かう程度です。
こんなやり方ですので、相変わらず下手なままです。
暗記のような学習は、とにかく時間をかけないに限ります。
鉄則3 書かない
「とにかく手を動かして覚えなさい!」もしそんな声かけをお子さんにしたとすると、それは「頭が固くなった大人」向きの学習法です。
漢字のような、書かないとマスターできないものではなく、社会科の知識を暗記するのなら、書いてはいけません。
なぜなら、子どもは「書くこと」が嫌いだからです。その嫌いな作業を押し付けたところで効果はあがりません。また、書くと時間がかかります。繰り返すのが億劫になります。
例として、日本国憲法の前文を丸暗記してみることにしましょう。
毎日5回、大きな声を出して読み上げるのと、毎日1回書き写すのと、どちらが楽ですか?
どう考えても読むほうが楽ですね。楽ということは、取り組むさいのハードルが下がることを意味します。憲法の前文なんて、早口で読み上げれば1分しかかかりません。少し丁寧に読んだとしても2分以内です。これを5回読むなんて楽勝ですね。
鉄則4 スピードを上げる
さて、一度覚えたら、今度はスピードを上げてみましょう。
「思い出すのに時間がかかる」知識は、覚えてないのと一緒です。そんな知識、すぐに抜けていきます。「瞬時に答えられる」知識こそ、定着した知識なのです。
例えば、今同じクラスでよく遊ぶお友達の名前、もちろん憶えていますね。しかも、顔を見た瞬間に名前が出てきます。
それでは、1年生のときだけ同じクラスだった元同級生の名前はどうでしょう。顔を見ただけで瞬時に名前が出てきますか? 少し考えれば何とか出てきそうですか?
考えなければ出てこない知識は、抜ける直前の知識です。それは「覚えている」とはいえないのです。
そこで、瞬時に知識が言えるように練習しましょう。
私:それでは、憲法の前文のテストをしよう。タロウ、言ってみて。
タロウ:「日本国民は、正義と秩序を、あれ?」
私:それは第9条だ!
タロウ:先生、ちょっと待って。今思い出すから。あ、そうだ。「日本国民は正当に選挙された国会議員を通じて行動し、我らと我らの、安全と生存を、」あれ、違うな。ちょっと待ってて、本当に覚えたんだから。
こんな状態ではダメなのです。
最初から最後までが、一気に、一度もつまることなく、よどみなく言えなくてはなりません。
今回の内容を、より詳しく丁寧に書いています。ぜひお読みください。