
前回の記事で思いついた「HELP教育」、とても気に入ったので、もう少し拡げてみることにしました。
HELP教育?
前回の記事を読んでいない方には「チンプンカンプン」ですよね。
これは私が思いついた(思いつきたてほやほや)語句です。
History、Literature、Ethics、Philosophy、それぞれの頭文字をつないだだけですね。
教育界で大流行中のSTEM教育へのアンチテーゼとして思いついたのです。
そもそも文科省が犯人?の一人です。
AIやIoTなどの急速な技術の進展により社会が激しく変化し、多様な課題が生じている今日、文系・理系といった枠にとらわれず、各教科等の学びを基盤としつつ、様々な情報を活用しながらそれを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結び付けていく資質・能力の育成が求められています。
文部科学省では、STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)に加え、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲でAを定義し、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な学習を推進しています。
とありますが、Aについてはとってつけただけでしょう。芸術がArtなのは認めますが、法律や経済や政治や倫理までAと定義するのは無茶すぎます。さすがにSTEMだけでは批判されるとでも思ったのかな? 私にはそうとしか思えませんね。
もちろんSTEMなどと英単語を振りかざす前から、理系教育は重要なのはわかりきったことです。
先日、高校生の理科教育に関する意識の低さが報道されていましたね。
「高校生の科学への意識と学習に関する調査」(独立行政法人 国立青少年教育振興機構)の結果の報道でした。報告書を引用します。
将来に役立つと思う科目について、日本の高校生が、「外国語」と回答した割合は 75.8%となっており、米中韓に比べて、突出して高い。一方、「数学」が 39.9%で、米中の6割強に比べて 20 ポイント強低い。「物理」「化学」「生物」はいずれも約 15%にとどまっている。「地学」の割合が 8.6%で、米中より低い。
好きな科目として、「数学」と回答した割合が 41.3%で、科目の中で最も高いが、米中に比べて低い。「物理」は 15.7%で、米韓よりやや高いものの、中国の 43.2%を大きく下回った。「生物」「化学」と回答した割合はいずれも約2割で、韓国より高いものの、米中より低い。「地学」の割合が 7.0%で、4か国中低い。
好きな科目と役に立つと思う科目を比較してみると、日本は「数学」「物理」「化学」「生物」「保健体育」といった科目では、「好き」と「役に立つ」の認識に大きな差がなかった)。
大学で専攻したい分野を見ても、「理学系(数学、物理学、化学、生物学、地学など)」と回答した割合は、日本が 19.2%で、米国の 22.5%、中国の 39.7%、韓国の 26.6%に比べて最も低くなっている。
また、「社会に出たら理科は必要なくなる」について、「とてもそう思う」「まあそう思う」と回答した割合は、日本が 45.9%で、4か国中最も高くなっている。
高校生の科学への意識と学習に関する調査報告書―日本・米国・中国・韓国の比較―<令和7年7月発行> | 独立行政法人 国立青少年教育振興機構
こうした調査というものは、誰が何を目的としてどのように実施したのかがとても重要です。そのまま鵜呑みにするわけにはいきません。
この調査結果は、明らかに「日本の高校生の理系科目に関する意識が低い」という結果となっています。
「だからSTEM教育に注力せねば!」という論調のバックアップになりそうですね。
History
歴史教育が大切なのは私ごときがいうまでもありません。
すでに何度も取り上げていますが、私の大好きな言葉はこれです。
「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる」
ヴァイツゼッカー西ドイツ大統領(当時)が、1985年5月8日にした名演説の一節です。この日はドイツの無条件降伏の日で、戦後40年の記念演説だったのですね。
この演説は必読です。私が持っていたのはこちらのほうだったのですが、これは1986年版ですのでもちろん絶版です。
今なら、こちらの新版(2009年版)を買われるとよいでしょう。
ヴァイツゼッカーは、その後東西ドイツが統一後のドイツ大統領にもなった人物です。どこかの国の政治家を必要以上に持ち上げるつもりもないのですが、信念とそれを言葉とする姿勢には感服しますね。ひるがえって日本の政治家を見ると・・・・。
実は私は歴史の授業の最初に、かならずこの言葉を紹介します。
子どもたちにも、歴史を学ぶ意義を考えてほしいからです。
もちろん小学生たちはぽかんとしています。
それでも語り続けることが、大人の責務だと思っています。
とりあえずトランプ大統領には読んでほしいですね。
先日、日本最高峰の理系の大学に進学した大学生と話をしていたら、たまたま話題がフランス革命になったのですが、「俺、フランス革命ってよくわからないんですよね。世界史とってなかったから」と言われた時には力が抜けました。近代民主主義と人権意識の出発点ともなった革命です。ある意味、私たちの社会にも大きな影響を及ぼしたことは間違いありません。「世界史とってなかったからよく知らない」で済ます問題ではないと思います。
Literature
本が読まれなくなりました。
ここに紹介するのは、「公益社団法人全国学校図書館協議会」が実施した、5月1か月間の学校読書量調査です。(小学生は4~6年生へ調査)
(2020はコロナで中止)

わかってはいましたが、すさまじい数字ですね。
2024年5月1か月間の平均読書冊数は、小学生は13.8冊、中学生は4.1冊、高校生は1.7冊、だそうです。
調査を実施したのは「学校図書館の充実・発展と青少年の読書振興を目的とした公益社団法人」ですので、ある程度は公平な調査だとは思いますが、それでも「図書館の重要性」をアピールする意図が無いとは言い切れません。また、学校現場が正しくアンケートを実施できたかどうかも不明です。邪推ですが、数字の向上だけを頑張る学校なんていかにもありそうですから。
そうした邪推は抜きにしても、やはり恐ろしい数字です。
小学生はけっこう読んでいるようにも見えますが、この数字は、私の感触とは乖離しています。いったい小学生がどんなレベルの本を読んでいるのかが気になりますね。
まさか「おしりたんていシリーズ」や「かいけつゾロリシリーズ」などといったものまでカウントしてはいないでしょうね?
さらにこの調査では、もっと怖い数字も出ています。
不読者(5月1か月間に読んだ本が0冊の児童生徒)の割合は、小学生は8.5%、中学生は23.4%、高校生は48.3%だそうです。
これでは、教養はおろか、「国語力」も「読解力」も「語彙力」も身につかないわけですね。さらに読書の大きな役割である、「他人の心を推しはかること」や「人や文化や社会の多様性を学ぶこと」も身に付きません。
国語教育から「文学」を除外しようとする政策の行く末が心配です。
Ethics
明文化されてはいなくても、社会で生きる私たちには守らねばならない規範があります。それがEthics=倫理です。道徳・モラルとも似ていますが、もっと広範な概念です。
今の教育からすっぽりと抜け落ちているのがこれではないかと思っています。
例えば、違法電動モペットで歩道を爆走している若者(渋谷周辺でたくさん見かけます。いわゆる「輩」とよばれる方々です)には、倫理のかけらも無いのでしょうね。
旧弊な儒教道徳を捨てたかわりに、新たな倫理の概念を構築できなかったのが根本原因だと思います。欧米にはそれでもキリスト教というバックボーンがありますが、日本にはそれもありません。
Philosophy
「哲学」と訳されますが、そもそも哲学が難しい概念ですね。「人生や世界に対する深い考えを持ち、それを理解しようとする姿勢」ということにでもなるのでしょうか。
学問としての「哲学」もあれば、「人生哲学」のような意味でも使われます。
今私が最も学び直したい分野です。
学生時代に一通り手を出してはみたものの、その程度で理解できるほど易しくもなく、その年代では私の理解も及びませんでした。
しかし、15年ほど前に放映された、マイケル・サンデル教授の「ハーバード白熱教室」を見て、がぜん勉学意慾が湧きました。それにしてもすごい授業でしたね。教授もさることながら、それに応える学生たちのレベルの高さがすごいです。ああ、今トランプ大統領がハーバードをつぶそうと必死なのもわかります。自分の頭で考えることができる学生の存在は、専制政治にとっての天敵ですから。
もちろんこの本も読んでほしいですね。私立中高生なら読めるでしょう。
哲学の入門書を2冊だけ紹介します。
「はじめての哲学」は、「哲学入門」の入門書です。
これくらいなら小学生でも読めると思います。
また、ずいぶん前に話題になったのはこちらですね。私としてはこちらのほうがお勧めです。まさに哲学入門書です。ただし、これらの本は、読んだからといって「哲学」が理解できるというよりは、「哲学の世界」が見えてくる、そうした本ですね。
高校生にでもなれば、原著を読んで悩んでほしいと思います。




