中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】学校説明会でどこに注目する?

夏前くらいから、各中学校の学校説明会が行われてきていますね。

今回は、学校説明会で見るべきポイントについて整理します。

イベントより説明会

学校について知る機会はいくつかありますね。

文化祭や体育祭、オープンキャンパスのようなイベントもあります。

いずれもリアルな在校生の様子がうかがえるという意味では貴重な機会です。しかし、ここではあえて「正式な学校説明会」にまず足を運ぶことを推奨します。

 学校説明会は、学校サイドが自分の学校を「いずれ受験して進学してくれる」ご家庭にアピールする機会です。したがって、よそ行きの良い話がメインとなるのは当然です。そこでしっくりこなかったり疑問を感じるようでは、その学校は進学すべき学校ではないと判断できるからです。

 

校長先生の話

 校長先生(学園長・学院長)は、学校の顔でありトップです。どんな方が何を思って学校を運営されているのか、じっくりと見極めましょう。厳格な生活指導が特徴の学校なのか、海外大学に目が向いた学校なのか、東大や医学部進学実績が自慢なのか、生徒の自主的な活動を誇る学校なのか、こうしたことは校長先生の話から伺えると思います。

 ただし、あまりに個性的な校長先生は要注意です。お子さんの卒業まで校長先生が変わらない保証はありません。校長先生の個性に惚れ込んで入学したとたんに校長が交代した、そんな話はよくあることなのです。

 

先生方の話

 進路指導担当の先生、受験担当の先生、あるいは教科の責任者、そういった先生方が登壇します。ここでは、その先生方の「話の巧みさ」に注目してください。

この先生方は学校の「主軸となる先生」です。普段の授業も担当しています。若手の先生を指導する立場にもあります。こうした先生方の話しが「つまらない」「退屈」「非論理的」なものだとすると、この学校の授業レベルも推して知るべしです。学校は塾・予備校とは異なり、必ずしも授業の巧みさだけが求められるわけではありません。しかし、授業である以上、生徒が理解しやすいものであることは最低限求められる条件です。それを満たしていなければ、その学校は選ぶべき学校とはいえないでしょう。

 私の経験上、生徒のことを良く見て授業をする教師は、みな話が上手です。

 

校舎見学

 講堂に集まってのお話の後、希望者が校舎を見学させていただける学校が多いですね。これは絶対に参加しましょう。

 平日の説明会では、教室のドアが開放されていて、廊下から授業の様子を自由に見ることができる場合もあります。授業が見られなくとも、廊下の掲示物は大いに参考になります。理系教育が自慢の学校の生徒発表の掲示物を見たところ、あまりのレベルの低さにがっかりさせられたこともありました。グローバルを標榜する人気校では、生徒のつくった英文の掲示発表内容が、高校生なのに中学生レベルということもありました。とりあえず英語でずらりと貼られた発表内容に、参加した保護者の方が「さすがね」と感心していたのが印象的です。

 最近の学校は設備が綺麗で魅力的なところが多いのですが、そこに惑わされずに、しっかりと学校を見極めていきましょう。もし図書室を見せていただけるのなら、とても参考になります。今も昔も図書室は学生の「知の拠点」です。ネットやAIだけに頼った情報では、真の教養は身に付きません。本の背表紙をざっと見るだけでもわかることがありますね。ある学校では、新書を中心としてなかなか読み応えのある本が集められていましたが、どれも生徒が開いた形跡がありませんでした。書棚の一隅で一番人気と思われる手ズレのした本は、歴史漫画だったことを思い出します。

 

集まった保護者の様子

 そこに集った保護者は、もしかすると同級生になる子の保護者かもしれません。雰囲気のようなものを感じ取ってください。

そこに違和感しか感じないのであれば、その学校は「合わない」学校かもしれません。

私自身は、説明会と言う場のTPOをわきまえない保護者の方は苦手なのですが、人によっては堅苦しく感じる学校よりもジュアルな雰囲気がお好きな場合もあるでしょう。

 こればかりは、文字化しづらい個人の「感覚」ですので、実際に感じていただくしかないですね。

 

 説明会を手伝っている先生方は、さすがにみなさんきちんとされていますね。

 一度だけ、ある学校の入試担当の先生にアポをとって会いにいった際、30分以上待たされて登場した先生が上下ジャージだったのにびっくりしたことがありました。体育の先生ではありません。

 

最近の傾向

 これも主観の話になってしまいますが、最近の学校の説明会は運営がスムーズなところが多いですね。まるで結婚式のよう、といえばおわかりいただけるでしょうか。司会進行からパワポや動画、そして校舎のご案内や相談コーナーなど、流れるように上手に運営されているところがほとんどです。配布物に関しても、きれいな学校案内パンフレット、生徒による学校紹介、今年の実物問題、さらに教科毎の出題意図、そしてちょっとしたオリジナルグッズが入っていたりもします。背後に教育系コンサルの匂いを感じてしまうのは職業病ですね。

 

 以前、とある学校の「塾関係者向け説明会」に参加したときの話です。そうした「業界向け」の説明会を実施するのは初めてだったようで、運営は不慣れなものでした。平日の校舎を案内していただき、授業も見せていただけたのですが、案内してくださった先生が、どの教室で何の授業をしているのか全く把握されていなかったのですね。せっかく案内されても、ほとんどの教室が、理科や音楽や体育などで出払っていて生徒がいませんでした。やっとその先生がみつけた授業中の教室では、保健体育の授業が行われていました。授業見学のお誘いを丁重に断ったことを覚えています。女子校でしたから。

 それでも、先生方の、何とか学校を良くしていこう、という熱意は伝わり、好印象を抱いたものです。この学校はその後大躍進し、今では難関校とよばれる学校に成長しました。

 

 また、3Dプリンターが並ぶ実験室が自慢の学校がありましたが、卒業生に聞くと、「あれは文化祭のときしか使わないですよ」とのことでしたね。

 

 説明会では、学校がアピールする「華やかな」部分に目を奪われず、教育内容そのものに注目してみましょう。

 

 

 

※中学受験の入門書を出版しました。説明会についても詳細に書きました。