中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【国語力向上】ロジカルライティング入門編 短文作成講座その2

 

前回に続き、ロジカルライティング講座の入門編として、短文作成講座を行います。

※登場するのは、難関女子校を目指す、国語が苦手な6年生女子3人組、アヤネ・ミユキ・カホ(仮名)です。

 

一長一短

私:「一長一短」の意味は知ってるよね。

ミユキ:やっぱり先生、私達のこと馬鹿にしてるでしょ。誰にだって得意不得意があるってことでしょ?

カホ:長所と短所があるって意味だよね。

私:それではさっそく短文を作ってもらおう。「一長一短」を使った短文作成だ。短くても長くてもいいぞ。

アヤネ:できました。「どの学校にも一長一短があるから、志望校を決めるときにはよく考えて決めたほうがよい。」

私:〇! そうだな、学校選びは慎重になる必要があるからな。良い点も悪い点もきちんと検討して進学しないと、進学してから「こんなはずじゃなかった!」ってなると困るからな。

ミユキ:「私には一長一短がある。」

私:〇△だな。

ミユキ:どうして?

私:一長一短を、長所と短所がある、という意味に置き換えただけだから、正しいのだが、もう少し具体的にした方が良かった。

ミユキ:「私の性格には一長一短がある。」これならいい?

私:〇。短文作成といえども、具体的に書くという文章作成の鉄則を忘れないようにな。

カホ:「家族旅行の行き先はハワイになったが、私にとっては一長一短がある行き先だ。」

私:具体出来に書けたのがよかった。◎だ!

ミユキ:なんでハワイが一長一短なの? 一長一長じゃない。

カホ:だって私、暑いの苦手なんだもん。でもハワイには行ってみたいし。

アヤネ:「一長一短」って、由来は何ですか? やっぱり仏教用語?

私:ああ、これは仏教用語ではなくて、中国の古い言い回しから来ているんだ。2000年くらい前の中国の人が、竜について、「あるときは長くあるときは短い」という意味で「一長一短」といったんだね。それがいつのまにか、長所もあれば短所もあるという意味で使われるようになった。

アヤネ:英語でも同じような言葉ってあるのですか?

私:もちろん。これは、「merits and demerits」「 advantages and disadvantages」「 good points and bad points」っていうかな。もうそのまんまだね。

カホ:なるほど! メリットとデメリットって、普通に日本語でも使うしね。

一朝一夕

ミユキ:いつかテストで一長一短って書くところを、一朝一夕って書いちゃったんだ。これってどういう意味だったっけ?

カホ:朝と夕が1つずつってことは、一日って意味じゃないかな?

私:それじゃあカホ、それで短文作ってみて。

カホ:「テストが返却されるまで一朝一夕ある。」

私:ああやっぱり。そうじゃないんだよ。

アヤネ:「テスト勉強は一朝一夕には終わらない。」これならどうですか?

私:正解! 一朝一夕は、たしかに一日ってことだが、とても短い時間という意味で使うんだね。

ミユキ:それじゃあこれはどうかな?「宿題が一朝一夕で終わった。」

私:残念! 実は「一朝一夕」という熟語は、否定的な場面で使うんだよ。今から5000年前くらいの中国の書物「易経」に出てくるんだ。

カホ:5000年前って、日本は縄文時代じゃない!

ミユキ:中国の歴史って凄いね。

私:そこには、家臣が主を殺したり子どもが親を殺したりするようなことは、「一朝一夕」つまり短い時間で起こるのではなく、長い時間をかけて少しずつ起こるのだ、と書かれていた。だから「一朝一夕」は、物事が短時間に成し遂げられないという意味で使うとしっくりくる熟語なんだね。「一朝一夕には〇〇ない」と使うのが普通だ。

アヤネ:英語ではどう言うのですか?

私:そうだな。「It's not going to happen overnight. 」ってところかな。overnight.は一晩の時間をしめしているから、これは一晩で起こるものではない、という意味になる。このあたりの表現はなんだか似ているね。

アヤネ:それでは happen は起こるって意味ですか? もしかして日本語のハプニングと関係あるのかな?

私:よくわかったな。

ミユキ:メリットとデメリットもそうだし、ハプニングもそうだけど、英語をすぐカタカナ語で使うのって止めてほしいんだけど。わかりにくくて。

私:日本語は外国語を吸収しながら育ってきた言語だからな。熟語の多くは中国由来だしね。

カホ:先生。わたし一朝一夕を、「いっちょういちゆう」ってずっと読んでました。

ミユキ:あ、私も。そうしたら笑われた。

私:「夕」という漢字は、訓読みは「ゆう」だが、音読みは「せき」なんだよ。そういえば、7月7日は何の節句だったかな?

アヤネ:七夕(たなばた)です。

私:実は正式には「しちせきの節句」と読むのが正しい。みんな「たなばた」って読むけどね。

ミユキ:どうして七夕ってかいて「たなばた」なんて変な読み方するの? 昔からずっと疑問だったんだ。

私:それはこの日に祖先のために織った布をささげる儀式をやったからなんだ。この布を機織りする女性を「棚機つ女(たなばたつめ)」といった。そこから「七夕(しちせき)=たなばた」と読むようになっていったんだね。

カホ:もしかして織姫も関係者?

私:そうだ。

一同:おもしろい!

まぎらわしい熟語

 

数字が入った熟語も頻出です。

一長一短や一朝一夕以外にも

一石二鳥・一意専心・一期一会・一日千秋などたくさんあります。入試に使われやすい熟語たちです。これらについてもまた扱ってみましょう。