中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】からの撤退 

私は中学受験推進派です。

中学受験は正義であるとの信念で30年以上この仕事を続けてきました。

しかし、中学受験からの撤退を考えている方のために、少し書いてみたいと思います。

なぜ撤退するのか

 

一言で言えば、無理な戦い方をしてきたからです。

 

(1)子どもの学力・能力不足

 中学受験は、本来なら15歳の高校受験と同等かそれ以上の学力を、わずか12歳の子が身に着けなくてはならない試練です。当然時間もかかります。

 それだけの勉強を受け止める容量が不足している子もいます。

そこに無理が生じるのですね。

 本来なら、子どもの能力を少しずつ引き出しながら、学力向上をはかり、その学力の到達できるところに目標を設定すべきでした。

 その努力値と目標設定がズレていたのでしょう。

 

(2)親の疲労

 私が相談を受ける中で一番多い理由がこれです。

親が疲れはててしまったのです。

・子どもの勉強の並走

・子どもに小言を言い続ける

・悪い成績を突き付けられ続ける

これでは誰だって疲弊します。

 

(3)家族の不一致

 受験や勉強、そして志望校について意見があわず、夫婦の口喧嘩が絶えません。本来なら夫婦は子どもと一緒に、子どもの受験をサポートする強力なチームを作らなければなりません。そこがかみ合わないと、疲労感ばかりが募ります。

 

(4)見通しが甘かった

 中学受験を考えるかたの大半が、撤退しません。中学受験を大前提にしているからです。公立中学進学という選択肢が最初から存在しないのですね。

 かつては、「これ以下の私立中学なら地元の公立中学に進学します」といった線引きが存在しました。しかし今やこの線引きがほぼ存在しないというのが私の印象です。偏差値が高くはない(=合格しやすい)私立中学も魅力的な授業やプログラムを用意していますから。

撤退の二文字が受かんだということは、最初からの覚悟・信念が足りなかったということに他なりません。

 

(5)経済力不足

 これはあまり聞きません。そもそも中学受験を志した段階で、ある程度の経済力の見込みがあったはずだからです。レアなケースとしては、父親の経営する会社の不振や、急に家族が増えたために受験撤退となった方もいました。

 

(6)転居

 こればかりは物理的な理由ですので仕方がありません。国内の転勤であれ、海外の転勤であれ、もう中学受験という世界からは遠く離れてしまうのですから。

 

撤退も選択肢として悪くない

 

何も必ず中学受験しなくてはならないわけでもありません。

撤退も一つの方策であるとは思います。

 

一度こだわりをすててしまうと、いかに気持ちが楽になることか。子どもの表情も明るくなるでしょうし、家庭内に平和が蘇ってくることでしょう。

そうしてあらためて将来を考えてみると、実は悪い選択肢ではないかもしれません。

ただし、この「撤退」という決断を前向きにとらえるためには、条件があります。

 

それは、勉強の手を抜かない、という条件です。

 

中学受験しないから勉強しなくてよい、そんな理屈は成り立つはずもありません。

学習の方向が変わるだけの話です。

 

 

◆英語の学習

 中学受験では不要な教科である英語、これの学習に特化するのもよいですね。

今から毎日3時間以上、英語の学習に費やすのです。

これが中学生になったときにどれだけ大きな自信を本人に与えてくれることでしょうか。

 

◆数学の先取り

 算数の勉強を捨てる代わりに、フライングして数学をはじめましょう。たぶん塾などに行かずとも、中1の数学レベルなら親も簡単に教えられます。

 

◆理科・社会

 実は中学受験生と、そうでない生徒との間で圧倒的に差が開くのが理科・社会の学力なのです。中学受験の理科・社会は、いわば中学生の学習内容を先取りしているようなものです。中学3年間で学ぶべき内容の大半を既習した状態で中学生になると考えてみてください。その余裕の時間を数学と英語に振り向けられれば、どれだけ有利かわかりますね。

 勉強の内容は変わりません。目標が、中学入試で点を取ることから、中学校の学習を先取りすることへと変わっただけです。

 

◆読書

 本を読む時間がとれます。これはうらやましい! 受験生はその暇がまったくありませんから。この時期にする少し背伸びした読書はとても重要だと思います。

 

塾には行かなくても良い

最近の流行?として、多くの高校受験塾が、小学5年生・6年生を対象とした講座を開くようになりました。いわゆる青田買いです。

中学1年からの集客では他塾との熾烈な生徒獲得競争に勝てない。そう考えた多くの塾が、「中学準備講座」「スタートダッシュ講座」といったネーミングで、数学と英語の先取り講座を開講しているのです。

こうした講座は、別にとる必要はないと思います。

なぜなら、授業担当の教師が、中学生の高校受験の専門家ではあるものの、小学生の指導に慣れていないからです。

そうした授業を拝見したことがあるのですが、正直いって「つまらない」授業でした。中学生対象なら通用するのかもしれませんが、小学生には退屈な授業でしょう。

かといって、小学生の扱いに長けている塾は中学受験塾ばかりです。

 

したがって、こうした「先取り」系の塾にはあえて通う必要はないと思います。

自分でテキスト類を用意して自学自習でも十分準備は可能です。どうしても不安なら、英語だけは塾をたよってもよいかもしれません。

 

英語の自宅学習についてはこちらに書きました。

peter-lws.net