中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

「今さら聞けない 中学受験超入門」を出版しました

だいぶ前からお約束していた本をやっと上梓しました!

「今さら聞けない中学受験超入門」というタイトルです。

 

内容はタイトル通りです。

中学受験の世界には、デマ・思い込み・不正確な情報・噂・都市伝説、そうしたものがとても多いのです。

私が過去に聞いたものには、こんなものがありました。

 

「筑駒には、〇〇小学校からは1名しか合格枠が無いんです!」

いったい何の話だ? と思いますよね。

聞いてみると、毎年その小学校からは最大1名しか筑駒に合格者が出ていないのだそうです。それは筑駒が一つの小学校からは1名しか合格させないという枠を設けているからなのだというのです。そして今年の6年生には、自分の息子よりも成績が優秀な子が一人いるのだとか。つまり、自分の息子が成績が2番目なのです。これではどう頑張っても筑駒には合格できない! そういう相談(嘆き?)でした。

 

筑駒の募集定員はわずか120名、そして実際の合格者数は130名程度です。その130名の枠をめぐって、以下の指定された通学区域の精鋭たちが熾烈な争いをするのです。

 

〇東京都・・・ 23区、昭島市、稲城市、清瀬市、国立市、小金井市、国分寺市、小平市、狛江市、立川市、多摩市、調布市、西東京市、八王子市、東久留米市、東村山市、日野市、府中市、町田市、三鷹市、武蔵野市
〇埼玉県・・・  上尾市、朝霞市、川口市、さいたま市(一部)、志木市、草加市、所沢市、戸田市、新座市、富士見市、ふじみ野市、三郷市、八潮市、和光市、蕨市
〇千葉県・・・ 市川市、 浦安市、 習志野市、船橋市、松戸市
〇神奈川県・・・   厚木市、海老名市、川崎市、 相模原市(一部)、 座間市、 大和市、 横浜市(一部)

 

それは、一つの小学校から1名合格できるかどうか、そういうことになるのも当然ですね。つまり、別に筑駒が設けた制約でも何でもないのです。

ちょっと考えれば、いや考えなくてもわかるこんな「常識」が、頭に浮かばなかったようです。そればかりか、私が言葉を尽くして説明しても納得してくださいませんでした。

 

またこんな方もいました。それまで通っていたN塾では偏差値60を切ったことなどないのに、S塾に転塾したら、偏差値50に下がったのだそうです。こんなに成績が下がるのなら転塾は失敗だった! という相談(嘆き?)でした。

 

困りましたね。偏差値についてここまで理解が浅いかたにどこから説明したらよいでしょう。

 

また、海外在住の方に怒られたことがあります。

「Peter先生のおっしゃることは、今通っている塾(海外の日本人塾)の先生が言うこととまるで違います!」

その時私がお話したことは2点でした。

〇帰国生でも4科目の学習をきちんとやらないといけない

〇帰国生入試は合格しやすいわけではない

至極当然のことです。

しかし、その方が通っていた海外の塾では、こう聞かされていたというのです。

〇帰国生は英語だけできれば大丈夫

〇帰国生入試は合格しやすい

ひどい話です。これが通用するのは、定員割れレベルの私立中学だけです。国内一般受験生が集まらなくなった中学が、起死回生の一手として、海外帰国生をかき集めようと必死なのですね。

一般入試でも人気校は、帰国生入試でも合格が難しいのです。私の教え子でも、聖光や渋谷渋谷の帰国生入試で不合格にされた後、一般入試でリベンジ合格した子も開成に合格した子もいます。そうした国内入試の現状をよく知らない海外の塾の先生が、こうしたデマを垂れ流しているのでしょう。

こんな「戯言」を信じて帰国生入試に臨むと二つの悲劇が待っています。

◆合格できない

◆合格した後落ちこぼれる

とくに後者は悲劇です。せっかく進学しても、学校の授業についていけないのですから。

 

考えてみると、中学受験に関する情報の入手先って、なかなか難しいのですね。

◆塾からの情報・・・ほぼ正しいといいたいところですが、まさに塾・教師によりますね。「〇〇中は来年は難化するので受験しないほうがいい」と指導されて受験を回避したら、実は塾の合格率操作のためだった、などということがある世界ですから。

 受験終了後にお世話になった塾の先生に挨拶にいったところ、中高一貫校生用の某塾を強力に推された。信頼する先生の親身のアドバイスだと思っていたら、実はその先生は某塾の出資者の一人だった、などということもあるのです。これは私が直接見聞しました。

 意図的なのかどうかはわかりませんが、塾が不正確な情報の温床になっている場合も多いのです。

◆受験経験者のママ友情報・・・一見正しそうに思えて、信憑性の低い情報です。さすがに嘘を言っていないと思いますが、たった一人の子どもの経験からの情報ですから。なかには、わが子を合格させた、それだけの経験で「受験コンサルタント」を名乗り、50分2万円の相談料をとる猛者までいるのです。そんな「偽コンサル」に縋ってしまう方もいるのですね。

◆中学校の発信する情報・・・信頼に値する情報です。そのはずです。しかし、生徒募集に必死な学校も多いですから。そうした学校ほど情報を「盛る」のですね。海外大学合格実績をアピールしていても、よく見ると海外の「二流・三流」大学ばかり並んでいたり、また数名の帰国生がいくつもの大学合格数を稼いでいただけ、そんなことも普通です。そうした厚化粧の下にある学校の素顔を見極めなくてはならないのです。

 

この仕事を長く続けていると、「中学受験初心者」の方の迷いや悩みをつい忘れがちです。塾の選び方や学校の選び方、あるいは偏差値についても、私が当然と思っているようなことが、実はみなさんにとって当然ではないことも多いのですね。

 

そこで、思い切って本書を著すことにしました。

このブログで何度かにわたって書いたところ評判が良かった記事をベースにしながら、大幅に加筆修正し、あらたな項目を書き下ろし、やっと上梓にこぎつけたのです。

 

これから中学受験を考えている方にも、すでに中学受験の真っただ中にいる方にとっても、役立つように書いたつもりです。

 

ぜひお読みください。

 

 

すでに好評となっている(と私は信じている)こちらもぜひどうぞ。

塾にいかなくても受験が可能なことを丁寧に説明しています。

塾に通っている方の参考にもなるはずです。