みなさんは、シュリーマンをご存じですね。ハインリヒ・シュリーマンといえば、トロイの遺跡の発掘で有名です。
ところでシュリーマンは発掘に着手する数年前に幕末の日本を訪れたのはご存じでしょうか?
その時書かれた旅行記がなかなか面白いのでおすすめです。
幕末から明治初期にかけて日本を訪れた欧米人が書いた記録を読むと、原日本人の姿とでもいうべき風俗がうかがいしれて面白いですね。私たちが失ったものです。
さて今回の話題は旅行記ではなく、シュリーマンの言語学習法についてです。
シュリーマンが語学の天才であったことは有名です。なんと18か国語をマスターしていたとか。そのシュリーマンが実践していた言語取得法が独特でした。俗にシュリーマン法などと言われています。
私は、中学生の頃に「古代への情熱」を読んで、いたく感銘を受けました。実は英語に挫折しかかっていたので、「これだ! 俺にはこれしかない!」と思ったのです。
私が初めて英語を学んだ中学校の先生は、文法と和訳を中心に据えた、まあ何とも古典的な英語指導の先生でした。しかもイギリス英語です。
私の英語苦難の旅はここから始まりました。最初に出会う指導者って大切ですね。もっとも私の同級生全員が英語が苦手になったわけではないので、あくまでも私の努力不足です。
「古代への情熱」には、シュリーマンが実践した言語取得法について触れられています。
①その言語で書かれた本を1冊手に入れる
②ひたすら暗唱する・・・その際には聞き手を雇った
③翻訳しない
④毎日1時間
⑤自分の興味のあることについて文章を書く
⑥添削してもらう
⑦それを暗唱する
ざっとこんなかんじだったと思います。
とくに感銘をうけたのは、文法を気にしないことと、翻訳をしないというところでした。その二つに散々苦しめられていたので。
そこでさっそく、まずは英語の教科書の丸暗記から取り組みました。
はい、すぐに挫折しましたね。何の効果も出ませんでした。
私の失敗の原因は簡単です。毎日1時間取り組めなかったからです。よく考えてみれば、どんな学習法でも、毎日1時間きっちりと取り組めば、きっと英語はマスターできたと思います。
そもそも学校の授業についていけなかったレベルの私が取り組むやり方ではなかったということでしょう。
しかも、大切なことを誤解していました。
シュリーマンは「翻訳するな」と言っていますが、これは、「文章一つ一つを自国語に直して把握しようとするな」という意味であって、文章全体の大意をつかむな、ということではなかったのですね。しかも彼が学んだのは同じインドヨーロッパ語族の言語です。文の構造や単語に類似点がある言語でした。
さらに、人を雇って読み聞かせたところもポイントです。たしか、その言語を知らない年寄りを雇って座らせていただけだったと思います。それでも、人に読み聞かせるというのは効果があったようですね。おsらくこれは、「恥を捨てる」ということだったのだと思います。拙い言語を誰かに聞かせるのって非情に恥ずかしいですよね。だから一人で誰にも聞かれないように部屋の扉をしめてぶつぶつと暗唱する。これではダメだったのです。
また、ちゃんと先生について添削指導を受けています。これも当時の私には頼める先生がいませんでした。いや、学校の先生に頼めばよかったのでしょうけれど、「自分ひとりの力で英語力を向上させて認めてもらう」という誤った目標を立ててしまったのが敗因です。
今私が中学生でシュリーマン法を実践するのならこうやると思います。
①日本語で既読の愛読書の英語版を1冊手に入れる。シャーロックホームズなんていいですね。ロンドンのベーカー街にも、BBCの「SHERLOCK」のロケ地にも行ったほどのファンですので。この英語なら、固有名詞をヒントに何となく意味がつかめると思います。
②聞き手を雇う。実際には親戚とか家族とかを犠牲にしましょう。
③添削指導は生成AIに頼む。これができる時代になりました。
あとは毎日1時間続けられるかどうか。ここがポイントです。