そろそろ夏休みです。
同級生には、海外留学に行く子もいると思います。
「うちの子もそろそろ行かせるべきでは?」
今回はその疑問にお答えします。
※「昭和の価値観」を引きずる保守的な私の個人的な意見です。
1.結論
長い文章を読んでいただく前に、結論から申し上げます。
不要です
これが私の結論です。以下、その論拠を述べていきます。
(1)費用が高額すぎる
日本の経済力と円安を反映して、留学費用は高騰しています。
中高生を対象としたものを少し調べてみました。
◆アメリカ・アーバインで語学研修&アクティビティ
・12日間(夏休み)
・費用:768,000円(燃油サーチャージ、各国空港諸税は別途、必要)
◆イギリス・ロンドン郊外でプロジェクト学習&寮滞在
・16日間(夏休み)
・費用:750,000円(燃油サーチャージ、各国空港諸税は別途、必要)
◆オーストラリア・ブリスベンで語学研修&アクティビティ
・15日間(夏休み)
・費用:620,000円(燃油サーチャージは旅行代金に含む。各国空港諸税は別途、必要)
◆中3オーストラリアターム留学(学校主催)
・3か月間
・費用:約130万~230万円程度(渡航費除く)
留学中の本校学費(授業料は半額、設備維持費・PTA会費は全額支払い)
◆イギリス 全寮制学校留学
・1年間
・費用:約1200万円(渡航費除く)
最期の1200万円を見たら眩暈がしました。イギリスの全寮制学校は名門ボーディングスクールのことでしょう。階級社会のイギリスでは、こうした全寮制学校に通うのは貴族・富裕層の子弟だけですので、これくらいの金額で眩暈を起こしているご家庭の子どもは最初からお呼びでないのです。
また、オーストラリアはアメリカ・ヨーロッパに比べて少しだけ費用が安いのですが、それでも3か月も行くと230万円かかるようです。しかも渡航費は別、さらにその間の授業料も半額払うことになっています。通っていないのに? 阿漕ですね。
2週間程度の短期留学なら70万円くらいのようですが、燃油サーチャージはタイミングによりますが、往復で5万円~10万円くらいでしょうか。
2週間の短期留学で100万円くらいみておけばよいと思います。
今、普通に2週間旅行してもそれくらいはかかります。食事代は言うにおよばず、ホテルが高いのです。そう考えれば、100万円というのも決して暴利というわけではないのでしょう。
ただし、本当にこれで収まるのかどうかはわかりません。そもそもこうした情報は、「海外留学を斡旋している企業」「海外留学を推奨している学校」からのものばかりなのです。彼らは、一人でも多くの子が留学してくれることが自分たちの利益につながりますので、最低限の費用しか開示しませんから。
調べられる金額の2割増しくらいを想定しておくほうが現実的だと思います。
(2)遊ぶだけ
とくに短期留学がだめですね。ただの海外旅行です。そもそも夏休み中は、現地の学校は閉まっています。短期留学で通うのは、そうした需要をあてこんだ語学学校になります。どれだけのクオリティの学びが得られるのかは甚だ疑問です。
留学の目的が、「現地の人間との交流」にあるのだとすると、短期留学は効果的ではないですね。こうした留学生専門語学学校に集っているのは、「英語ネイティブではない各国の学生」になりますので、多国文化交流はできますが、わざわざイギリスまで出かけて、中国や韓国の子と拙い英語でコミュニケーションをとることにそこまでの価値は無いと思うのです。
(3)教育効果
教育は、学校で学ぶ授業だけではありません。教科学習だけでもありません。家庭で、社会で、身に着けるべき「得点化できない何か」を学ぶことも大切な教育です。
「躾」「良識」「モラル」「社会道徳」、そういうふうに考えてもいいですね。
海外に行くことで、日本では得られないそうした「学び」が得られることは確かです。例え1週間のハワイ旅行だって刺激と学びに満ちていますので。
しかし、もう一つの大事な教育が阻害されます。「金銭教育」です。
みなさんは、中高生の子どもにいくらくらいお小遣いを渡していますか? 私立中高生に聞くと、お小遣い制でない家庭も多いですね。必要なものがあれば、親に都度頼むそうです。つまり親の許認可制です。大きな遊び(ディズニーランド等)のときには、お年玉を相当すると聞きました。
さて、お小遣い制だとして、その渡している金額は、「我が家ではこの金額までしか出せないから」という限界の金額でしょうか? おそらく違いますね。「中学生なら(高校生なら)、これくらいの金額がふさわしいだろう」と各家庭で判断する金額をお小遣いとして支給しているはずです。
それが「金銭教育」です。
「留学」という錦の御旗につい騙されてしまいがちですが、本当に自分の子どもにふさわしい支出なのかどうか、冷静に判断するべきだと思います。
そもそも、そんな金額を子どもが親に簡単に親に出させようとする時点で、子どもへの金銭教育は失敗しています。
2.どうせ行かせるのなら
2週間程度の留学は、「留学」とは呼べません。親元を離れた旅行です。それだけでも本人にとっては刺激的で楽しいかもしれませんが、言ってしまえばそれだけです。
3か月くらいの留学はだいぶましですね。どこかの現地の学校に1学期だけ通うことになるのでしょう。ただし、これでも短すぎます。
逆に考えてみてください。日本の中学(高校)に、カナダから留学生が数名やってきました。楽しく交流できそうですね。しかしたった3か月で帰ってしまいます。本当の「交流」までできたでしょうか? 日本の文化・社会を十分に学んでもらえたでしょうか? そして日本語は?
本気で留学で「学ぼう」とすると、3か月ではとても足りません。
そうなると、1年間は行きたいですね。理想的です。ただし問題があります。
日本の学年が1年ずれます。日本の友人より学年が1年遅れるのです。もしこれを回避しようとすると、留学期間中にも日本の教科学習を独自に進めるしかないのですが、これは不毛です。何のために留学したのか意味がわかりません。
海外留学するということは、これくらいの覚悟が必要だということでしょう。
もし私が自分の子どもに留学を希望されたら、こんな条件をつけると思います。
◆何のために留学するのか目的を明確にする(英語を学ぶというだけなら却下)
◆なぜその地、その時期なのかについての根拠を明確にする
◆留学先等の手配は自分でできることが前提
◆せめて英検準1級を取得済であることが前提
このあたりが明確なら、夏休みの短期留学の100万円は出してあげましょう。ターム留学は逆に中途半端な気がします。そして1年間の留学はさせないと思います。1200万円出せないのが主な理由ですが、それ以外にも、1年間の留学なら、大学生になってから考えればよいと思うからです。多くの大学は、海外の大学と提携して多様な留学プログラムを持っていますから。日本の大学に学費を払えば、そのまま海外の大学に1年通えて、さらに単位まで認める、そうした制度は普通です。
しかも成人年齢ですので、自分で責任がとれる年代です。周囲の助力が前提の中高生の留学とは意味が異なると思うのです。
実は私は留学経験があります。ただし費用は自分で稼いでから1年間留学しました。現地で親の金で遊んでいる留学生を大勢見かけましたね。学ぶ姿勢も覚悟も違うのです。
こちらにも詳しく書いています。ぜひお読みください。