中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】最後の転塾・退塾のタイミングはここです

私が受けるご相談に、転塾に関するものがとても多いのです。

なぜなら、現在お通いの塾には相談できないからです。

「先生、この塾は辞めたほうがいいですか?」

そう問われて、「そうですね」と答える教師はいません。

また、別の塾を訪問して相談しても無意味です。

「こちらの塾に移ったほうがいいですか?」

そう問われて、「やめたほうがよいですね」と答える教師もいません。

かといって、「ママ友」に相談しても無意味です。彼女らは、経験値が少なすぎるからです。

中立な立場からの的確なアドバイスが得られないのですね。

そこで、まがりなりにもニュートラルな立ち位置にいる私のところに相談に来るのでしょう。

今回は、受験学年の6年生に向けて、転塾のアドバイスをしたいと思います。

転塾理由

(1)拘束時間が長すぎて家庭学習時間がとれない

 これは由々しき事態です。学習時間の全てを塾にゆだねることは、相当なリスクを伴います。

「どこにも合格できなかった。全ておまかせくださいというから、毎日通わせたのに!」

「申し訳ありません。私どもの力不足でした」

こんな不毛なやりとりをしたいですか?

業界の片隅に長年いる私だからこそわかります。しょせん塾は「商売」にすぎません。最終的な生徒の人生に責任など負える立場にはないのです。

良心的な塾・教師は、それでも生徒の合格のために最大限の努力をします。しかし、ただ一人の生徒を教えているわけではないのです。その努力は、数十分の一、あるいは数百文の一に限られます。

結局のところ、わが子の学習に最終的に向き合うのはご家庭の仕事です。

拘束時間が長すぎる塾は、それだけで転塾理由になります。

 

(2)受験学年になったら、急にオプション講座が増えた

「〇〇特訓」といった名称のオプション講座を設けている塾も多いですね。基本的な学習にプラスする形で、受験生一人一人の志望校や弱点に応じて、様々なオプション講座をとれるようになっているのです。

これは、一見すると非常に合理的なシステムに思えます。集団指導塾の弱点である、オーダーメードの指導ができない点を補うことができるからです。

しかし、それらのオプション講座を「断れない雰囲気」で勧めてくる塾は要注意です。

◆オプション講座取得率が給与査定に反映している

 実際にそうした塾は存在します。いや、決して少数派ではありません。教室毎にノルマが設定されている場合すらあるのです。特に、経営陣が実際の授業に携わったことのない塾(これがほとんどです)は、売上の数字しか見ませんので。

 それに振り回される現場の教師が哀れです。それでも、本当に生徒に向き合った教師・教室責任者ならば、「お子さんはこの講座は取らなくてもいいですよ」とアドバイスしてくれるかもしれません。ただしその場合も、「あんまり強要すると、この家庭は退塾しそうだからな」などといった打算によるものである可能性は大きいですね。

◆オプション講座が必須だと思い込んでいる

あらゆる勉強に無駄ということはありません。したがって、塾が用意するオプション講座だって有用です。だからこそ積極的に勧めてくる。

他意も打算もないのでしょう。しかし生徒一人一人のことを考えているかどうかは微妙です。

 

(3)急にお金儲けの匂いがしてきた

 それは塾だって営利企業ですから、お金儲けに必死です。しかし、その一方で曲がりなりにも「教育」の体裁をとっています。良い塾というのは、その両者のバランスをとり、あまりお金儲けの匂いが前にでないようにしているものなのです。

しかし、受験学年になって、急に金儲け主義の匂いが強くなったら、その塾は要注意ですね。

なぜなら、「もうこの時期になったらさすがに辞めないだろう」という計算のもとに、受験学年からお金を引き出そうとしているからです。

◆高額な教材・講座・合宿などを勧められる

◆今まで習っていたベテランの先生がいなくなった。どうやら、他塾の優秀な生徒獲得のための講座に駆り出されているらしい

どちらも良く聞く話です。

 

(4)志望校の提案に納得がいかない

◆強引に難関校をすすめてくる

◆通う気もない遠隔地の学校の受験をすすめてくる

◆やたらに多数の学校の受験をすすめてくる

◆特定の学校を強引に勧めてくる

◆学校情報を持っていない

◆特定の学校を妙に持ち上げる

◆特定の学校を貶す

◆学校について断定的な物言いが目立つ

◆受けたい学校を受けさせてもらえない

 

どれも看過できないですね。

とくに受験校について、保護者・生徒の意志を無視するような提案をしてくる場合、ただの合格実績稼ぎのための提案である場合が大半です。また、学校研究が不十分であったり経験値が低い教師ほど、保護者の質問に対応できないものです。

 

転塾すべき?

 これは難しい判断でしょう。しかし、塾・教師が信頼できないまま受験に突入することは嫌ですね。かといって今から「信頼できる」塾・教師に出会える保証もありません。正直いって、この時期に移ってきた生徒については、十分な指導がやりにくいのです。

◆今までの学習状況がわからない

◆学習が穴だらけの場合が多い

◆塾を信頼する気持ちがない家庭ばかり

 

もちろん誠心誠意指導するのですが、どうしても偏差値以上の学校に合格するような「底力」を発揮できない印象があります。せめて5年生のときに来てくれれば、そう思うことが多いですね。

 

そこで、この時期に転塾を決断するのなら、もう塾は利用すべき学習システムと考えて、必要なものだけを利用するしかないと思います。

その場合、親が積極的に関わる必要があります。

わが子の未来のために、8か月間、お子さんの傍らに立ってください。

 

いっそ塾に通わないという選択肢も

 

ここまでラジカルに考えてみても良いと思います。

この段階では、どの塾のカリキュラムも、新しい項目の学習は終了しています。

これからやるのはこのような学習です。

◆基本の反復演習

◆総復習

◆入試問題演習

◆過去問添削指導

 

すでにカリキュラム学習が終了したとはいえ、実際には生徒の学力は穴だらけです。そこで、もう一度基本知識をおさらいしたり、前分野を総復習するのですね。

塾のHPからカリキュラムを公表しているものを検索してみてみてください。

見事に「総復習」となっています。

これについては、大切ではあるものの、効率はあまりよくありません。なぜなら、生徒全員に同じ穴があるわけではないからです。すでに十分マスターしている内容について再度授業を受けるのは無駄ですね。

※ただし、「マスターしていると思い込んでいるが実際にはマスターできていない」項目をあぶり出すのには有効です。

 

入試問題演習については、これからの学習の中心となるはずです。まともな塾なら、問題演習とディープな解説をワンセットで授業を組み立てているはずです。

もしその解説が通り一遍、あるいはただの答え合わせ程度だったら、時間がもったいないですね。

 

過去問添削指導については、集団指導塾では限界があります。しかしやらねばならない重要な学習です。

本当は家で親が見てあげるのが一番なのですが。

 

このように考えてくると、塾に行かないという選択肢も悪くないと思うのです。

 

塾に行かないで学習するやり方については、参考図書を書きました。

★ただし、「塾無中受」には親の覚悟が必要です。

その覚悟が無いのなら、とりあえず塾を継続したほうがよさそうです。

 

★昨年同時期に同内容の記事を書いています。こちらも合わせてお読みください。

peter-lws.net