よく質問されるのです。おすすめの参考書について。
一度まとめておこうと思って、ついつい後回しにしていました。
今回は思い切って(あきらめて)中学受験に役立つ参考書を紹介します。
※あくまでも私が使って良いと思った本というだけにすぎません。参考書は相性というものもありますので、参考程度にお読みください。
中学受験のノウハウを学べる本
実は良いものがありません。どうしても「偏向」していたり、「非現実的」であったり、「曖昧」であったりするものばかりなのです。中学受験に詳しくない教育評論家の方や、わが子の受験を経験しただけの方が書いたものはとくにダメですね。
そこで、私が書くことにしました。
すいません、まだ完成していません。夏前の出版を目指して鋭意執筆中ですので、もう少々お待ちください。
中学受験そのものについて知る本としては、拙著をお薦めしておきます。
学校選びに役立つ本
シンプルに、「学校案内」の分厚い本を一冊ご用意ください。各出版社・塾から出されていますが、私の一押しはこれです。
最も情報量が多く、レイアウトが見やすいからです。必要な情報が過不足なくまとめられています。
表紙にあるように、取り上げられている学校は296校です。
東京都・神奈川県といった地域ごとに、男子校・女子校・共学校の順でページが構成されています。
首都圏中心ですが、これは他の出版社のものも同じですね。関西については、関西専門塾が出しているものを見るべきでしょう。
弱点としては、上位校ばかり載せられている点です。サピックスの生徒を想定した編集でしょうから、これはやむを得ないですね。
より詳細な分析はこの記事で書きました。
※この本のように、毎年リニューアルされる本は、買う時期にご注意ください。
学校案内の出版時期は5月~6月頃です。そろそろ最新版の「2026年受験用」が書店に出ているころでしょうか。
慌てて「2025年受験用」を買うと、情報が1年古くて後悔します。
算数の参考書
教科の参考書・問題集については、おそらく塾で様々な教材が用意されているでしょうから、それをやるだけで十分です。たぶんそれ以外に手を広げる余裕はないはずです。
しかし、塾に行かずに受験にチャレンジしようとしている方、そして親が学びたい方向けには、この本が良いと思います。
この本の著者は、Z会の先生ですね。
算数の特殊算の解き方、それもオーソドックスな解き方がわかりやすく解説されています。
この本を見ながら、お子さんの算数の問題を一緒に考える、そんな使い方に適しています。
この手の参考書としては、学研の「応用自在」が昔からの定番でした。たしか私が子どものころからあったような気がします。そう思って書店で手にとったのですが、すぐに棚に戻しました。
何というか、ものすごく見づらくてやる気がわかなかったのです。こればかりは相性ですので仕方がないですね。
この「塾技」シリーズは、理科・国語・社会も出ていますが、どれも今一つの気がします。とくに社会と国語は私は気に入りませんでした。
算数の問題集については、ここではとりあげません。それこそ無数に出版されていて、どれも大差ないからです。手元にすでに持っているものをお使いください。新たに買うのなら、書店で手に取って気に入ったものを使えばそれで充分です。
※百マス計算について
計算力向上の救世主としてずいぶん話題になりました。私自身は嫌いです。だって、自分がやりたくないですから。自分がやりたくないものを生徒に薦める気はありません。
国語の参考書
いわゆる「参考書」として勧めたいものは国語には見当たりません。
裏技的なテクニックは国語には不要ですし、結局のところどれだけたくさんの文章を読み、どれだけ解答してきたか、ここが重要ですので。
それでも、用意すべき本をいくつかご紹介します。
◆国語便覧
最近巷で国語便覧が評判のようですね。私に言わせると、「今さら!」です。あの値段であの情報量、まさに国語的基礎教養の塊のような本ですので、眺めているだけで楽しいのです。
ぜひ小学生にも、と思うのですが、大半が高校生用の編集なので、中学生用のものを探してください。私が見た中では、これがいいかな。
実は、国語便覧というのは、学校の教科書の副読本の扱いで、学校で配布されるものです。こうした学校教材は、価格が安いのが素敵です。出版部数が桁違いに多いため、価格が安くなるのですね。国語便覧も1000円程度で入手可能です。もっとも、こうした学校用の教材は、一般書店で扱いが無いものが多いのが問題です。
しかし、この「自由自在」シリーズの便覧は、普通の参考書ですので、どの書店でも買えます。ただし2750円もするのが残念すぎます。
そのかわり、カラフルで楽しい構成です。
◆漢字
漢字の練習は、毎日〇ページと時間を決めて継続的に取り組まなくてはなりません。様々な塾・出版社からそうした教材が出されていますね。
中には私の嫌いな「う〇こドリル」といったものまで。さすがにこれは奇をてらいすぎです。子どもに受ければそれでいいという大人のさもしい悪知恵が嫌ですね。
ここはオーソドックスなものを1冊用意しましょう。
サピックスらしい、「外さない」内容です。この「漢字の要」は、STEP1~3まで三冊ありますが、まずはこのステップ1だけでも、中堅校までの漢字には十分対応できます。この程度なら、5年生中に2週は回しておきましょう。
漢字については、その成り立ちを詳しく解説したような本も見かけます。これはいい! と思って私も入手したのですが、生徒にはまったく刺さりませんでした。そうですね。成り立ちなんかいちいち確認している余裕はないのです。とにかく正しい漢字・熟語を身に着けることが第一優先ですから。
◆1026字
ネットで「1026字」で検索するといくつもの本がヒットするはずです。小学生が6年間で学ぶ字は1026字です。
書くべき漢字は共通ですので、どの本でもかまいません。漢字の意味・書き順・熟語、これらがまとまっているだけですから。
私はこの本をお薦めしています。
お薦めしている理由は3つです。安い・小さい・どこでも売っている、これです。
770円で文庫本サイズです。この本をすぐに開いて正しい書き順・字形を確認する癖をつけてください。
この他にも、学研・小学館・受験研究社から同様のものが出ていますが、どれも一緒です。受験研究社のものだけ1000円以上ですので、選択肢から外しましょう。
※文庫本サイズで持ち歩きしやすいということは、文字が小さいということでもあります。本文ページは問題ないのですが、一番使う音訓さくいんのページ表記の数字が小さい! 認めたくはないが老眼か? いやいやそんなはずは。
仕方がないので、私は2冊買って一冊をPDF化してiPADで見ることにしています。実に快適です。そこまでしなくとも、音訓さくいんページだけ拡大コピーして壁に貼っておくという手もおすすめです。
「お母さん、この漢字どう書くの?」
(壁をさっと確認して)
「249ページ!」 といったかんじになるでしょう。
索引ページで確認してから該当ページを開くという2アクションが、1.5アクションくらいで済むので意外と楽なのです。
◆中学校教科書
良質の文章が集まっていますので、これにまさる参考書?はありません。
私は中学受験用の参考書としては、中学校の教科書が大好きです。
国語については、「光村図書」のものがいいでしょう。
何せ、東京都の採択率が83%と圧倒的な占有率ですので。
中学校1年生用の教科書なら、まさに中学受験生にピッタリのレベルです。
これは「参考書」というより、読んでおくべき文章ですね。ただし、教科書ですから、いくつもの質問が挿入されています。それを親子で考えるのが実に効果的です。
また、教科書の利点として、準拠問題集・ドリル・ワーク・教科書ガイドが売られているのです。下手な参考書より、はるかに役に立つと思います。
理科の参考書
中学受験をする小学生を対象とした、体系的な参考書でお薦めしたいものはありません。実は、理科の参考書作成は大変なのです。まず、専門家がいません。物理・化学・生物・地学といった分野ごとの専門家は中学・高校の学校の先生方がいらっしゃいますが、彼らは中学受験については無知ですし、他の分野を知りません。
もし参考書を作るとしたら、中学受験を熟知したベテランの大手塾の理科の先生をリーダーとして、その下に、各分野に精通した中高の先生を結集しなくてはなりません。図版・資料も豊富に集める必要があります。そこまで手間暇をかけても、買ってくれるのは、中学受験生という狭い市場の少ない人数だけです。
これは割に合いません。だから無いのです。
私がお薦めするものは、以下の3つです。
◆中学校の教科書
はい、またしても教科書ですね。
ただし、一般書店では買えません。大手書店(神田三省堂レベル)なら売っています。
※神田三省堂のリニューアルオープンは来年春予定だそうです。待ち遠しい。
非売品の教科書の入手方法については以下の記事で書きました。
もし身近に「元中学生」がいたら、捨てる前に教科書をいただくのが一番かもしれません。
◆理科資料集
これは、資料集というより、用語集プラス資料集といったほうがよいでしょう。解説も平易ですし、これをメインの参考書替わりに使ってもよいと思います。
これの社会科版もお薦めです。
本当は資料集なら、もっと写真が豊富なものをお薦めしたいのですが、中学校用は非売品が多いのです。市販のものではなかなかお薦めしたいものがありません。おそらく、上述した理由で、理科の資料集は学校用しかないのかもしれません。
しかし、大手の書店では、たまに見かけることもあります。多くは高校生用なのでお薦めできないのですが、中学生用もたまに見かけます。もし見つけたら購入しましょう。
◆暗記教材
一問一答スタイルで、ひたすら語句を暗記するタイプの教材がいくつかの出版社から出ています。
定番は、この2種類でしょう。
みくに出版、ということは日能研ですね。
日能研という塾は、実は問題集や参考書で良質のものをたくさん作っているのです。
「日能研ブックス」という名称で、書店の参考書コーナーの一角を占拠しているのを見かけます。
参考書・問題集選びで迷ったら、とりあえず日能研・みくに出版のものにする、というのは悪くない戦略です。
同じような暗記本にはこれもあります。
サピックスのものですね。
この塾も、良質の教材を作っていますね。日能研ほど量も種類も豊富ではないですが、内容はお薦めできます。
「メモリーチェック」も「コアプラス」も、理科・社会の両方があります。暗記用の教材としてはどちらも利用価値があります。書店で手にとって、気に入ったほうを選ぶとよいでしょう。
私個人としては「コアプラス」派です。
体裁が「そっけない」のが好きなのです。
こうした問題集や参考書は、市場が限られています。中学受験市場は全国区ではありませんので。実質的には首都圏と関西圏だけですね。しかも関西圏は社会科が軽視されています。その限られた中学受験生市場のなかで、上位層だけを狙っていたのでは商売になりません。では、下位層や非受験層をとりこむためにはどうすればよいのか。そこでカラフルな体裁やイラストを多用し、勉強のハードルを下げるという誤った作戦に走るのでしょう。書店で見かけるのはそんなものばかりです。そんなイラストレーターやデザイナーにお金をかけるくらいなら、執筆陣にお金をかけるべきだというのが私の意見です。
社会科の参考書
社会科については、以前に記事にしました。こちらをお読みください。
ここでは、定番の中学校教科書以外に必須のものをいくつか紹介しておきます。
◆地図帳
さすがに地図帳を持っていない受験生は存在しません。ただし、小学校で配られる地図帳は情報量が少なすぎます。中学校用の地図帳を買いましょう。もちろん帝国書院のものです。
↓これは学校教科書ルートで流通しているものですが、まったく同じものが少しだけ表紙の写真を変えて書店で売られています。
もしかしてお通いの塾で、オリジナルの表紙の地図帳を買わされたかもしれませんが、中身はこれと一緒です。帝国書院は塾に表紙だけを差し替えて販売する商売をしているのです。
地図帳も他の参考書同様、シンプルなのが一番です。妙なイラストなどいりませんので、過不足なく情報が載っているこれを選んでおけば間違いないでしょう。
◆歴史資料集
こちらも、高校生用(大学受験用)のものはたくさん並んでいるのですが、中学生用のものは少ないですね。しかも、例の「学校教科書流通の壁」に妨げられて、入手が困難なのです。例えば、「浜島書店」の歴史資料集などちょうどよいのですが、HPを見るとこう書いてあります。
浜島書店の中学校用教材は,中学校を対象に販売していますので,個人様への販売は行っていません。教材を破損・紛失された場合は,学校(ご担当先生)を通してご注文をお願いいたします。
ね、感じが悪いでしょ?
狭量な私としては、この出版社のものだけは買ってやるもんか!と思ってしまいます。
そういっているくせに、稀に書店で見かけることがあります。また、サピックスは塾なのに浜島の歴史資料集を生徒に販売しています。蛇の道は蛇、闇?の入手ルートがあるのですね。
そこで、こちらを買いましょう。
さすが帝国書院、これを何と702円で売っています。
帝国書院のこだわりなのでしょうか、「地図から見る歴史」のページはご愛敬ということでいいでしょう。そこが欲しいのではなく、写真資料が見たいのですが。
昔は、帝国書院の歴史資料集は、金閣や銀閣のような主要な写真が不掲載というとんでもない代物でした。どうやらそれらは帝国書院の学校教科書に載っているから、という理由だったようです。しかししばらく見ないうちに改善されたようで、この資料集は悪くないですね。お薦めです。
浜島書店のものと比べてみましたが、浜島のもののほうがオーソドックスというか真面目というか、必要な情報が過不足なく載ってはいるが面白味はありません。文字量も多いのです。私のような歴史好きには面白いのですが、生徒はどうかな?
その点、帝国書院のこの資料集は、生徒に興味をもたせようという工夫が随所に見られます。情報量は浜島に軍配があがりますが、小学生にはこちらのほうが適していると思います。
実は、金閣や銀閣のような建築物の写真は、使用料が高額なのです。日本人全体の財産、いや世界の遺産にもかかわらず、です。もちろん個人で撮影した写真も使用できません。あくまでも寺に金を払え、という姿勢です。
もうおわかりですね。こうした歴史資料集を、普通に作成すると製作費がとんでもないことになるのです。だから、一般向け参考書として制作する出版社はありません。学校にでも買ってもらわないことには利益が出ませんので。
◆公民資料集・地理資料集
この2つも、中学受験生(小学生)対象のものはありません。そうです、本当に無いのです。少なくとも私は知りません。そこで、例によって中学生用のものから探すことになります。
しかしここでもまた、「教科書流通の壁」が立ちふさがります。ほんと、いい迷惑ですね。しかも意味がわかりません。おそらくは、学校採用部数だけ印刷するほうが、どれくらい売れるかわからない一般書店に卸して返品されるよりはコストが節約できる、ということなのでしょう。つまりユーザーを無視した出版社優先の発想ですね。
ということで、困ったときの帝国書院だのみ、こちらを紹介します。
ほとんど帝国書院の回し者みたいですが、もちろん違います。
・版型が大きい(A4)ので見やすい
・わかりやすくしようという工夫がみられる
・入手しやすく、安い
これらの点を評価しているだけです。
実は社会科について、中学生用のものを使うことにデメリットがあるのです。
それは、「中学入試に出ない(まだ出ていない)」内容も含まれるということです。
・世界史
・世界地理
・経済(金融・市場経済)
このあたりですね。
しかし、このあたりを出すか出さないかにルールなどありません。各中学校が、なんとなく暗黙の了解として出題範囲を決めているだけです。
私の予想としては、今後このあたりからの出題が増えると思っています。
入試問題集
おそらくお通いの塾で指示がでるでしょう。
もし「塾無中受」を敢行中なら、これをお薦めします。
◆学校別過去問
「声の教育社」一択です。
書店でオレンジ・黄色の目立つコーナーがあるはずです。
ただし、買うなら夏前に揃えましょう。たまに10月くらいになって、「〇〇中学の過去問が売り切れていて買えない!」と泣きついてくる方がいます。私が持っていたとしてもコピーさせられません(違法です!)ので、ご自身で早めに買ってください。
本編も解答も見づらいことこの上ない(やたらにスペースを詰めている)のですが、他の選択肢が無いので仕方がないのです。寡占企業の強みですね。どこかの出版社・塾が見やすく使いやすいレイアウトで実物大解答用紙&解説付きのものを売り出してくれるとありがたいのですが、無理でしょう。中学校も声教と癒着?していますので。
※稀に、模範解答が間違っている場合があります。この出版社は社内に教科の専門家がいません。解答は全て塾・学校の先生に下請けに出しています。
◆今年の入試問題集
これも、声教一択です。
国立私立 有名中学入試問題集 男子校・共学校編 2025年度用
といったタイトルのものになります。
まあ、中学校の入試問題を集めているだけですので、とくに問題はありません。
これは、今年のいろんな学校の問題を幅広く解くために使います。とにかく分厚くてやる気がわかない本です。でも、やるしかない、そういう本ですね。40校以上の問題がまとまっていますので、これを1冊やればかなりの演習量となるでしょう。
◆教科別入試問題集
実は、同じ今年度問題集でも、みくに出版では、それを教科別にまとめて出しているのです。
これを4教科分揃えると、書棚の一画が銀色になります。
実は声教のものより私はこちらが好きなのです。
◆教科別である点
◆レイアウトが見やすい点
◆模範解答を日能研が作っている点
◆収容校が多い点
こうしたメリットがあります。さすがにこれを全部解くのは不可能ですので、つまみ食いするような形で、学校を選びながら解くとよいでしょう。
したがって欠点はこうなります。
◆どの学校の問題を解くべきか(解かざるべきか)がわからない
※注意
こうした過去問は、価格が高いのです。
そこで、ブックオフなどで中古を探したくなりますが、やめましょう。
1年以上古いものしか入手できないからです。
しかもみくに出版の問題集、よく見かけるのですが、私が見た限り、全て別冊模範解答が抜けているものが売られていました。よくそんな欠陥品をブックオフに売りますよね。そしてブックオフも買いますよね。