中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

家だと勉強できない?

先日、塾に行かないで中学受験をする方法について本を出版したのです。

(名著?です。ぜひお読みください)

 

さて、この本を読んだ方からいろんな声をいただいたのですが、その中でも気になったのが、この声でした。

「うちの子は、家では勉強できないのです」

今回はこのことについて考えてみます。

中学受験は時間との戦い

 

このことは、何度も何度も書いてきました。

中学受験は時間との戦いです。

およそ「受験」というものは、すべて時間との戦いであるのですが、中学受験は、高校受験や大学受験とは大きな違いがあります。

それは、学校で学ぶ内容が受験には役に立たないという点です。

役に立たない、は言い過ぎですね。不十分というべきでした。

勉強には無駄なことなど一つもない。

これは私の信念なのですが、さすがに小学校の授業を拝見するかぎり、質・量ともに中学受験に対応できるものではありません。

※ただし、一部の中学校の入試は、小学校の学習内容プラスα程度のレベルの出題となっています。

高校受験や大学受験では、学校の授業・テキストをきちんと学ぶことが、受験の基礎固めとしてとても役立つのですが、中学受験はそうではない。

ここが、中学受験の特殊性といっていいでしょう。

つまり、受験のための勉強は、すべて小学校以外のどこかでやらなければならないのです。

だからこそ、私を含めた受験産業が成り立つともいえますね。

 

しかし、全教科の指導を家庭教師に頼むのでもないかぎり、塾に通うことは時間のロスを生み出します。本当は、自宅で勉強するのが一番時間が無駄にならないのです。

私が推奨するように、全ての勉強を自宅でこなす勇気が無いとしても、塾で習ってきたことを復習したり、過去問を解いたりするためには、自宅学習が欠かせないのです。

 

塾の自習室の無駄

多くの塾が、自習室を設けています。

とりあえず、授業の無い日でも毎日自習室に通う。

そうした生徒も多いですね。

しかし、自宅から歩いて1分の距離に塾の自習室があるのならともかく、たとえ片道10分の近さであっても、往復で20分のタイムロスが生じます。

これは無駄以外の何物でもありません。

塾によっては、自習室が騒がしいと聞きました。

実は、塾にとっては自習室はあまり設置したくない設備なのです。

塾の教室をご覧になったことはありますね。異常に狭いことに気づきましたか? 小学校の広々とした教室の半分以下のスペースに生徒を詰め込んでいる印象です。

これは仕方がないのです。塾は、ある意味立地型産業ですので、通いやすい駅前に立地しないと生徒が集まらないのです。そしてそうした立地は家賃も高い。そしてその高い家賃の教室で収益をあげるためには、無駄なく教室を活用して授業をしなくてはなりません。

自習室に充てるスペースなど、本来は無いものなのです。

さすがに自習室の利用だけで、授業料と同額をいただくわけにはいきませんので。

この費用を授業料に上乗せするしかありません。

また、自習室を管理する人員を割かなければなりません。授業ができるレベルの教師をそこに投入する余裕などどの塾にもありません。となると、授業がおぼつかないレベルの学生アルバイトを管理人として置くか、あるいは基本は無人で社員がときどき様子を見まわるか、どちらかとなるでしょう。

自習室が騒がしくなる要因がわかりますね。

 

自らを律することのできない小学生には自習室の利用は非効率と考えていいのです。

私自身も、中高生時代は図書館の勉強スペースを愛用していました。さすがに静かな空間で、勉強がはかどるはずだったのが、残念ながら、私は自らを律することのできない人間だったのです。私にとって麻薬にも等しい本が溢れている空間で、勉強に集中できるはずもありません。図書館にある本を読み尽くす勢いで読書に励んでしまいました。

 

私の昔の教え子は、高校生のときは自宅近くの予備校に籍だけ置いていたそうです。自習室が目当てだったと言っていました。この子は、中堅女子校から東大に現役で進学しました。

つまり、このレベルの生徒でなければ自習室は有効ではないのです。

 

家で勉強できない要因

 

(1)住環境

 部屋数が多くはない家に、幼い弟・妹たちが走り回っている。静かに勉強に集中できるスペースなど無い。

そうした住環境なら仕方がないでしょう。

昔の「偉人」たちは、そんな環境でも勉学に励んで学問を身に着けていたのですから、不可能ではないのでしょうが、そんな「偉人」を引き合いにだしたところで意味はないですね。

 

(2)誘惑が多い

 自宅には、テレビやゲーム機以外にも、冷蔵庫という魔物もいます。たいしてお腹がすいたり喉が渇いたわけでもないのに、ちょっと勉強していたかと思えば、すぐに冷蔵庫の扉を開けている、そうした光景が目に浮かびます。また、漫画やライトノベルなどの、読めば読むほど「頭が悪くなる」ような書物があると最悪です。

 

(3)親の権威が低い

 これもよく聞きますね。子どもが親の言うことを聞かないのです。だから、「勉強しなさい!」「集中してないでしょ!」「いつまで同じ問題解いているの!」といった、ごく当たり前の声掛けが全く効果をあげないのですね。

 

対処法

 本当は、前述(3)の、親の権威が低いことが最大の問題なのだと思います。

そもそも、子はなぜ親の権威を認め、親に従うのでしょう?

・親の愛情を自覚している

・親に養ってもらっている自覚がある

・子は親に従うべきものだという良識がある

・親の言うことに従うのが当たり前だという育ち方をした

・親の指示はいつも正しいことを知っている

・親の期待に応えたいと思っている

・親がどんなことにも正解を出してくれる

・親が算国理社の学習内容を熟知している

・親に勉強を教えてもらえる

・親を恐れている

 

列挙してはみましたが、ほとんど明治か昭和初期の世界観ですね。

儒教道徳が廃れた今、こんな親子関係はなかなかないでしょう。

とくに、子は親に従うのが当たり前だとか、親に養ってもらっている自覚とか、今の子にあるはずがないですね。

街で見かける子どもが、自分の要求を通そうとして、泣き叫んだり親を叩いたり蹴ったりしている姿を見かけることもあります。

親の権威など皆無です。

もしまだお子さんが幼稚園、あるいはせめて小学1年生くらいなら、今からでも正しい親子関係の構築を考えるべきでしょう。仲が良い親子は素敵ですが、友達関係の親子は最悪です。(高校生以上ならそれも良いものですが)

もしお子さんが高学年なら、せめて親が勉強を教えてあげられるようにしたらいかがでしょうか。

私がこの提案をすると、ほぼ全員の親が拒絶反応を示すのが不思議です。

自分で出来ない・やりたくない勉強を、子どもには強制するのですね。

 

前述(1)・(2)なら、すぐに改善できそうです。

いくら家が狭いといっても、たとえば親の寝室くらいありますよね。そこは、昼間は使われていないはずです。あるいは廊下の突き当りのデッドスペースとか、階段の踊り場とか、何でもいいのです。

もしお子さんが二人いて、それぞれの子ども部屋があるのなら、それを共同寝室と共同学習室に分けるというのもよいと思います。

・専用の学習机と照明

・正しい高さの椅子

必要なのはこの2つだけです。学習机については、引き出しが無いものをおすすめします。勉強には、引き出しに入れるようなものは不要だからです。机上にペン立てが一つあればそれで充分です。おそらく引き出しの中には、集中力の妨げとなるようなガラクタが詰め込まれるだけですので。

照明と椅子は重要です。正しい学習姿勢がとれる椅子の高さに気を付け、デスクライトを準備しましょう。

 

※リビング学習について

 巷で効果が高いとされるリビング学習ですが、おすすめしたくないですね。机の高さと椅子の高さが学習向きではないからです。また照明も不足しています。姿勢と目が悪くなります。第一気が散ります。

※子ども部屋に籠る

 ドアの向こうでどれだけ集中できているのか、そこが重要です。子ども部屋に一切の誘惑が無い状態で、かつ子どもが自らを律することができるのなら良いでしょう。

 

学習環境の整え方について、かなり詳しく記事にしています。ぜひお読みください。

peter-lws.net