中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】補欠繰り上げについて

               

今回は、分析はありません。ただの私の思い・感想を書き散らかします。

 

先日、都立中高一貫校のデータを整理していました。

都立中高一貫校は、募集定員しか合格者を出さないのですね。

160名募集で160名の合格発表と徹底しています。

しかし、まさか合格者全員が入学するはずもありません。

しかも、試験日が2月3日で、合格発表日が2月9日です。

これはさすがに発表が遅すぎます。

多くの私学のように当日発表とまでは言いませんが、せめて翌日には発表してあげてほしい。 なんでこんなに遅いのでしょうか。

◆丁寧に採点しているから

◆急ぐ気がないから

このどちらか、あるいは両方なのでしょう。

いずれにしても受験生の気持ちを考えてはいなことは明らかです。

 

※ところで、公立のテストは、「受検」の字を使いますね。「これは試験ではない!」というつもりなのだと思いますが、テストには違いありませんので、私の記事では全て「試験」「受験」の文字を使っています。

 

合格発表が9日ということは、ほぼ全ての私学の受験・発表が終わっています。

当然、他の学校に手続きをした生徒も多くいます。

 

2024年のデータでは、都立中高一貫校の辞退率は6.5%でした。意外に少ないのは、試験日が3日、主要な私学の試験は終わっているタイミングにあります。4日以降だと、めぼしい私学の受験は少ないのです。

だからこそ、都立中高一貫校を第一志望とする生徒が多いため、辞退率が下がるのでしょう。

例えば1日に試験を行う開成中では、募集定員300名のところ、400名ほどの合格者を出します。およそ1/4が辞退することを見越しているのです。それでも足りずに、毎年数十名の補欠繰り上げをしています。

 

補欠繰り上げについて、私は嫌悪しています。

一旦不合格として地獄の底に突き落としておいて(大げさではありません。受験生のご家庭にとっては、まさにそういう思いです)、後から「入りたければ入学させてあげてもいいですよ」と電話があるのです。

補欠でもなんでも入学できたら嬉しい! と思うご家庭ばかりなので問題化していないだけで、こんなに残酷なやり方はないと思っています。

 


本来なら、歩留まり(辞退率)を計算にいれ、少し多めに合格発表をするべきでしょう。

きちんと辞退率を予測し、十分な人数の合格を出したはずなのに、予想を超えた辞退者が出てしまい、あわてて補欠繰り上げをした、というのならまだわかります。

ところが、複数回入試・午後入試が普及すると、各学校はこの入学者数の予測に悩みます。入学者が多すぎると受け入れキャパを超えてまずいですし。

そこで、少し少な目に発表して、後から繰り上げて人数を調整しよう、こうした発想が横行するのでしょうね。

さらに、私学の一部には、最初の合格発表人数を絞り、すぐに補欠繰り上げをする学校まであります。

あまりに辞退率が高いと、「恥ずかしい」とでも思うのでしょうか。あるいは偏差値吊り上げを狙っているのでしょうか。

 

もうこうなると、受験生の気持ちなどどうでもよいのでしょう。

 

こんな例もあります。

A君はとある難関私学の1回目の入試で不合格となりました。

他で合格が確保できていれば2回目にチャレンジする予定でしたが、残念ながら確保できていません。

その場合は、2回目の入試を回避して、合格が見込める学校の受験に切り替える予定を立てていたのです。だから、2回目の試験の出願は保留していました。

しかし、A君本人が、どうしてもこの学校を受験したいと言い始めました。

そこで、2回目入試の直前、出願締め切り時刻ぎりぎりに学校に直接出願に行ったのです。

すると、出願した帰り路、携帯に「一回目の入試の繰り上がり合格」の連絡が入ったそうです。

意味がわかりません。

2回目入試がまだ実施されてもいないのに、「定員充足」のために補欠を繰り上げる?

もしかして、2回目の出願をしたことで、「この受験生は、わが校に進学したいのだな」と判断され、繰り上がりリスト入りしたのか?

A君のお母さまはこう言っていました。

「この二日間で、地獄と天国の両方を同時に味わった思いです」

私は、最終的に入学できたのだからそれでOKという気にはなれません。

この地獄、必要だったとは思わないからです。

 

peter-lws.net

 

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