今回は、公立中高一貫校、その中でも東京にある学校についての話題です。
最近は減りましたが、以前は公立中高一貫校の是非について聞かれることが多かったのです。
「実際のところどうなんでしょう?」
こういう聞かれ方でしたね。
大学実績
桜修館 白鴎 小石川 両国 富士 大泉 立川国際 南多摩 武蔵 三鷹 区立九段
東大 8 2 16 7 3 8 7 4 6 0 3
東工大・一橋 10 2 10 4 3 7 6 6 11 15 6
早慶 89 59 88 59 37 76 49 41 73 87 71
東大と一橋大&東工大(科学大)、早慶の2025年の合格者数です。
実は、一番古い白鴎が2005年開校、新しい富士・大泉・南多摩・三鷹の開校が2010年ですから、もうう15年は経過したわけです。さすがに大学実績を検証してよいでしょう。
これをごらんになってどうでしょうか。
率直に申し上げて、普通、あるいはそんなに大したことはない、というのが私の感想です。小石川は良いですが、後は目覚ましいとはいえません。
しかし、学校の偏差値を考えると、適正な実績ということができるかもしれません。
小石川・・・S60 N68
武蔵・・・S54 N62
桜修館・・・S53 N61
両国・・・S53 N60
三鷹・・・S50 N58
九段・・・S50 N56
白鴎・・S49 N53
大泉・・・S47 N57
富士・・・S47 N52
立川・・・S44 N54
南多摩・・・S44 N59
小石川と同偏差値の学校として、筑波大付属があります。
東大:28、一橋・科学:25、早慶178 となっています。
N59の逗子開成は、東大:6、一橋・科学:7、早慶:127ですね。
N60の都市大付属は、東大:6 、一橋・科学:13、早慶:123 でした。
同レベルの私学と大学実績は大差ないと考えてもよいかもしれません。
情報公開
実は、今回いろいろ調べていて一番気になったのはここでした。
情報公開の姿勢がなってない。
まず、全てのHPの基本的な作りは共通です。東京都のフォーマットなんでしょうね。
しかし、これって横並びにする意味はあるのでしょうか。
「都立中高一貫校ならどこでもいい」という受験生は皆無なはずです。
「都立○○中高一貫校に行きたい」そう思ってHPを見に来るはずです。しかし残念なことに、学校の魅力をアピールする姿勢は見られません。通り一遍の情報が載せられているだけですので。
まあ一部私学(開成とか?)も同じようなものですけれどね。
大学の合格実績の公表も少ないですね。
入試結果
小石川の2025年の入試結果を見ていて、あることに気づきました。
募集人が160名、受検者数が501名、合格者が160名、入学手続き者が135名となっているのですね。
募集人員と合格者が同じ人数というのは珍しい。
毎年全体で100名前後が繰り上がります。
2025年には、都立中高一貫10校全体で、合格者が1572名に対して手続きが1473名、繰り上げたのが99名でした。
2024年の詳細なデータがあったので紹介します。
立川国際以外は、募集定員は160名です。若干それより少ないのは、「特別枠」という謎の募集があるからです。
◆都立小石川
『自然科学分野の全国的なコンクール等に入賞し、入学後もその能力の伸長に努めることのできる者、全国科学コンクール個人の部で上位入賞した者』
<例>
・自然科学観察コンクール (文部科学省 後援)
・全国学芸サイエンスコンクール (文部科学省 後援)理科自由研究部門
・全国小・中学生作品コンクール (文部科学省 後援)理科部門
・全日本学生児童発明くふう展 (文部科学省 後援)
となっています。
大学実績命の私学ではありがちな話ですが、まさか「公立」でこんなことをやっているのは少し驚きました。
◆白鴎
『日本の伝統・文化について次のいずれかの分野に継続して取り組み、上級の資格や卓越した能力のある者、卓越した能力の分野及び資格等
・囲碁・将棋:全国大会の地区代表者、又はそれと同等の能力のある者
囲碁:(例)・少年少女囲碁大会全国大会参加者 ・日本棋院院生
将棋:(例)・小学生将棋名人戦地区代表者 ・小学生倉敷王将戦地区代表者
(例) 日本将棋連盟奨励会会員
・邦楽(三味線、箏、囃子):稽古歴5年以上の者で、以下の条件を満たす者
三味線:稽古歴5年以上のうち3年以上の長唄三味線の稽古歴をもち、以下の曲中より、3曲以上の舞台経験を有する者又はそれと同等の能力を有する者
・小鍛冶 ・鞍馬山 ・越後獅子 ・勝三郎連獅子 ・五条橋 ・勧進帳
・鏡獅子(下) ・秋色種 ・花見踊 ・娘道成寺
箏:全国大会個人の部で、上位の者又はそれと同等の能力を有する者
(例) 全国小・中学生箏曲コンクール個人の部 入賞者
囃子(笛、小鼓、大鼓、太鼓):以下の曲中より、3曲以上の舞台経験を有する者又はそれと同等の能力を有する者
・鞍馬山 ・越後獅子 ・勧進帳 ・新曲浦島 ・島の千歳 ・石橋 ・鏡獅子(下)
・二人椀久 ・紀州道成寺 ・常磐の庭
・邦舞・演劇(日本舞踊、歌舞伎、能・狂言):稽古歴5年以上の者で、以下の条件を満たす者
日本舞踊:全国大会個人の部で、上位の者又はそれと同等の能力を有する者
(例) 全国舞踊コンクール邦舞第二部 入選者
歌舞伎、能・狂言:歌舞伎、能・狂言の舞台で、出演経験のある者又はそれと同等の能力を有する者
これは面白い、というより謎すぎます。
日本の伝統・文化について真剣に学んでいる子は尊敬します。
だからといって、公平であるべき「入試」で優遇されるべきなのかどうか。
一部私学の「スポーツ推薦」と同じ匂いがしますね。
校長人事
私学との最も大きな違いはここかもしれません。
「都立」ですから、普通の都立高校の人事異動の一環として校長人事が行われています。
例えば、
成瀬高等学校校長 → 白鴎高等学校兼附属中学校校長
世田谷泉高等学校校長 → 桜修館中等教育学校校長
桜修館中等教育学校校長 → 小石川中等教育学校校長
小石川中等教育学校校長 → 日比谷高等学校校長
さらに、教育庁人事部職員課主任管理主事 → 都立両国高校校長
といった人事異動もあります。
これは例えば私学でいえば、麻布校長 → 開成校長 、 開成校長 → 駒東校長、 駒東校長 →渋渋校長 といったかんじでしょうか。ちょっと想像できません。
しかも人事異動のスパンが私学よりもだいぶ短いですね。
学校は、やはり校長次第で大きく変わります。
都立中高一貫校が、学校の指導方針を継続して受け継いでいけるのかどうか、少々気になりました。
今後について
どうやら世間では、「私学の無償化のあおりをうけて、公立中高一貫校の人気が低下している」とみなされているようですね。
まさか授業料が安いことだけが公立中高一貫校を選ぶ理由ではないでしょうから、この見立てがあたっているのかどうかはわかりません。そんな学校選び、寂し過ぎますので。
しかし、「都立」である以上、東京都の意向に左右されることは避けられません。
私はかつての「日比谷潰し」を思い起こしてしまいます。
悪名高い学校群制度の導入により、200名近い東大合格者を誇っていた都立日比谷高校が、一気に1名までその数を減らしました。
入学してからの6年間でここまでの大きな変化は考えにくいですので、そんなに気にすることではないのかもしれません。
しかし、1960年代に日比谷に入学した生徒たちは、まさか30年後に母校がこんな没落をするなんて予想もしなかったことでしょうね。
中学・高校なんて、自分が在学する6年間だけ存続すればいい。卒業してしまえば無関係。そのようにビジネスライクに考えるのならどうでもよい話です。
しかし思春期の大切な時期を過ごした「母校」というものは、心のどこかに大きな割合を占めて「存在」すると思います。
◆公立中高一貫校対策
まずは過去問を入手しましょう。
幸い、どの学校も入試問題をHPで公開しています。もしまとめた問題集のようなものが欲しい場合は、現状はこれしかありません。
「東京学参」という出版社からもいろいろ出てはいるのですが、「数と図形編」「資料問題編」「作文問題書き方編」と、出題内容別に分かれていて、かえって使いにくいのです。
まずは一通り問題演習をした後に、苦手分野をフォローする目的で使うのならよいかもしれません。
ちなみに、この銀色の表紙が特徴的な過去問を出版している「みくに出版」というのは、日能研の子会社です。
公立中高一貫校で出題される「適性検査」は、おそらく初めて見ると、「うちの子には無理!」となると思います。
しかしよく問題を見てみると、そんなに高度な思考力を要求されているわけではありません。受験生のレベルを考えてもそのはずです。
入試問題演習は、こなす量が全てです。
きちんとした過去問演習は必須です。
※ただし、採点は難しいと思います。親が勉強して臨むのがベストですが、それが無理なら、そこはプロの手を借りるのも良いと思います。