中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】なんでもありの帰国生入試は終わった?

今回は、帰国生入試の話題です。

少々厳しめの記事になると思います。

なぜ帰国生入試が行われる?

 「本来の」帰国生入試は、親の海外赴任のせいで教育機会を奪われる子供たちへの救済措置でした。

 海外に暮らさざるを得なかったのは本人の責任ではないですからね。しかも、海外のどの都市でも日本と同じ教育が受けられるはずもありません。日本人学校が無いところも多いですし、まして現地校に行けば日本の教育環境とは無縁です。

 そうした「気の毒な」子供たちに、2月1日に一般受験生と同じ算数・国語・理科・社会の入試を実施することはあまりに「可哀そう」ですね。

 そこで、一般入試とは別に、科目数を減らした入試を行う学校が出て来たのです。

 例えば、算数・国語の2科目に面接、そうした入試です。

 海外でどんな生活を送っていたのか、どのような教育を受けていたのかについては、面接で把握するしかありませんし、本人がその学校の教育環境に馴染めるかどうかについても面接が必須です。あとは、基礎学力を算数・国語の2科目で測ろうというわけです。

 こうした趣旨を考えれば、入試日程を一般入試と分ける必然性はありません。同じ日に、別教室で別メニューで入試を行い、合否判定も一般生と同じように行うべきでしょう。

 しかし、丁寧に面接を実施するとなると、一般受験生と同一日だと学校の負担が大きくなる場合もあります。そこで、少しだけ日程をずらして実施する、そうした学校が出てきても不思議はありませんね。

 

 これが本来の「帰国生入試」のはずでした。

 しかし、「優秀な生徒」を集めたくて必死な一部の学校はこう考えたのです。

「帰国生は、英語がすでにできるから、後の大学入試でとても有利なはずだ。それなら、もっと積極的に帰国生を受け入れるべきだ」

「他校と横並びの入試日程では、優秀な生徒を他所に獲られてしまう。だから1日でも早い日程で入試を行い、青田買いをすべきだ」

「英語がネイティブに使える帰国生を一定数受け入れると、学校全体の英語力が向上するに違いない」

「グローバルな匂いをアピールするのに役立つ」

「海外大学進学者を出せれば、一気に学校のステータスが上がる」

「一人でも多くの帰国生を取り込め!」

 

さて、これらが私の勝手な憶測なら良いのですが、そうではないでしょうね。

私は、海外にある日本人用受験塾を訪問したとき、そこでばったりと日本の某私立中学の入試担当者に遭遇したことがあります。わざわざ海外まで出向いて、日本人塾に営業をしているのです。その熱意に頭が下がるというよりは、なりふり構わぬ姿勢にあきれたものでした。

 

 海外在住者が日本に帰国してからでは手遅れとばかりに、インターネット入試や海外会場入試を実施している中学校もいくつもあります。中には、校長自らがシンガポールに足を運んで面接を実施し、その場で合格を出す学校もあるのです。まさに「優秀で」「英語ができる」生徒を集めるのに必死です。

 しかも、こうした入試には、大義名分があるのです。

「海外帰国生に教育機会を与えるため」

 という大義名分です。

 

 これが帰国生入試の正体です。

 

帰国生入試の厳格化と英語入試の実施

 

 こうした風潮に、さすがに歯止めをかける必要が出てきました。中には8月に入試を実施する学校まで出てきてしまいましたので。

 そこで東京都の私学協会が2つのルールを定めました。

◆海外在住1年以上、帰国してから3年以内

◆11月20日以降に入試解禁

 私に言わせれば、これのどこが「厳格化」なのかと思いますが、まあ一定のルールを課したというところに意義はあるのでしょう。

 さて、これで困ったのは、今まで「帰国生入試は無法地帯」とばかりに生徒獲得に邁進していた学校です。

 そこで次にどういう手が打たれたのか。

英語入試の実施です。

 例えば、国内インターナショナルに通っていたり、あるいは帰国して3年以上が経つ、そうした「帰国生入試」の受験条件から外れている生徒の中にも、英語力が高い生徒が多数潜んでいるはずです。

 こうした生徒を入学させれば、学校としては帰国生を取り込むのと同様の効果が得られます。

 一気に英語入試実施校が増えたのはこれが原因なのでしょうね。すでに百校を超える学校で実施されるようになりました。

 なかには、「英語資格入試」と称して、自前で英語の入試を実施せずに、英検の級に応じて「みなし得点」を与える学校もあります。例えば英検1級は100点、といった具合ですね。

 すでに小学校では英語が正式教科化されていますので、算国理社ではなくて英語を入試科目にすることには問題はないのです。しかも、すでに算数・国語・理科・社会の入試内容は、とうに小学生の学習範囲を逸脱しています。それなら、何も英語だけが「小学校で学んだ範囲」にこだわる必要はないのですね。

 おそらくそうした判断によるものなのでしょうけれど、英語入試の問題レベルは、とてもじゃないけれど小学生レベルではありません。

「英検4級相当」の入試問題を出す学校など良心的なほうですね。英検4級は、だいたい中学2年生レベルとされていますので。しかし、現実にはいくつもの学校で「英検準1級でも合格できない」レベルの英語入試を実施しています。

 

帰国生入試実施校

 ここでどんな学校が帰国生入試を実施しているのかをリストアップしました。

2月以降の実施校および千葉・埼玉エリアの学校は基本的に除外しています。一般生入試とは別日程の学校だけを取り上げてみました。

 もちろんこのリストは万全ではありません。一部抜粋にすぎません。また、帰国生入試についてはコロコロと日程や試験科目等が変わる傾向にありますので、実際に受験を検討する際には直接学校に確認してください。

 

帰国生入試実施校

このリストを見てどうお感じになりますか?

中には、名門校・難関校・人気校も混ざっていますが、その大半は、生徒集めに注力している(あるいは苦戦している)学校が並んでいます。

 つまり、そういうことなのです。

 

帰国生にとって

 ここまで、若干辛口のスタンスでコメントしてきました。

それは、私の生徒の大半が「一般入試」にチャレンジする受験生たちだからです。

ただ「親が海外にいた」だけで、ここまで優遇される入試があるのは、生徒達の必死の努力を知っている私からすれば、やはりどうしても納得しづらいのです。

 しかし、帰国生にとっては状況は異なります。

 実は私の教え子にも、帰国生はたくさんいました。

 2月入試本番の前に、合格がもらえる。

これが帰国生入試最大のメリットです。

ただし、その最大のメリットを活かすためには、気を付けねばならないことがあります。

それは、4科目の学習にも手を抜いてはいけない、ということです。

一般入試で受験しても合格できるレベルの教科力をきちんと身につけて、その上で帰国生のメリットを享受する。

 そうしないと、中学校に進学してから大変な苦労をすることになりますので。

 

帰国生入試についてはこちらでも詳しく書きました。

peter-lws.net

 

こちらは塾に行かないで受験するアドバイスです。

海外在住生には役に立つ内容です。

peter-lws.net