入試問題を解いていて、やはりみなさん「合格最低点」が気になりますよね。
プロとしてのアドバイスを言うと、そこは気にしすぎてはいけないところなのですが、でも気になる。
そこで、今回は合格最低点について考察します。
合格最低点と偏差値の関係
高偏差値の学校ほど入試問題が難しい、と普通は考えますね。そうすると、偏差値が高くなるにつれて、合格最低点は下がっていくのでしょうか。
たとえばこんなふうに?
あるいは、こうも考えられます。
高偏差値の学校を受験する生徒ほどよくできる。まあそれはそうですね。
したがって、高偏差値の学校ほど、合格最低点は上がるにちがいない。
たとえばこんなふうに?
そこで、実際はどうなのか、いくつかの学校について調べてみました。
学校によって満点が異なりますので、4科目合計点を100点として計算しています。
パーセントと考えてもよいですね。
また、学校の偏差値(80%合格偏差値)については、サピックスの偏差値を採用しました。
偏差値 合格最低点
筑駒 71 65.2
開成 69 65.2
豊島岡 62 64.7
渋渋女 62 60
渋渋男 61 56
早実女 60 65.3
駒東 59 65.5
栄光 59 58.8
洗足 58 55.4
早実男 57 61.3
吉祥女子 55 74.1
鷗友 53 63
サレジオ 53 64
城北 48 60.3
世田谷学園 45 56
横浜雙葉 45 65.8
大妻 44 63.8
成蹊女 43 65
成蹊男 41 60
山脇 39 67.2
桐光 38 54.6
女学館 38 63.3
千葉日大一 36 54.4
大妻多摩 33 50.3
さすがにこれではわかりづらいので、散布図にしてみます。
これをみると、偏差値とは無関係に、合格最低点は横並びです。
平均を計算すると、61.6となりました。
つまり、各中学校は、受験生の学力レベルに応じた入試問題を出しているということが言えると思います。
どの学校を受験するにしても、おおよそ65%ラインを一つの目標としていけばよい、そういうことになります。
過去の生徒についても、過去問演習で、7割の壁を突破した生徒は合格していた印象があります。65%ラインは、まさにギリギリの線、やはり「合格最低」ラインと考えるべきでしょう。
入試問題の難易度という陥穽
我々プロの塾屋は、多くの学校の入試問題を分析しています。
そうすると、「ああ〇〇中学の今年の問題は難しめだな」「今年は算数が易しい」といったように、入試問題の難易度を「絶対評価」で測ってしまうのです。
しかしこれは受験生にとってはほとんど意味がない情報です。
どんな難易度の問題であれ、例えば4倍の倍率の学校なら、上位25%に入ることだけが重要だからです。
あとから振り返って、「今年は〇〇中学の算数は易しかったから、算数が得意な受験生は不利だった」「今年の△△中の国語はとても難しくて平均点が下がったから、むしろ国語が苦手な子に有利となった」などと語るのはほとんど意味がありません。
その年の受験生にとっては「すでに終わってしまった過去」についての話ですし、未来の受験生にとっても、「来年はどうなるかわからない」以上、過去の情報は役に立たないからです。
それでもついついそうした分析をしがちなのは、塾屋の性というか習性なのでしょうね。得意そうにそうした情報を語る先生の中には、「それでこそプロっぽい」という誤解があるのかもしれません。
これだけ受験産業が発達し多くの情報が得られるようになると、受験生の層も固定化されがちです。
偏差値50の受験生は、45~55くらいの幅の学校を受験しますし、偏差値40の学校には、偏差値70の生徒は受験にこないのです。
学校としても、受験生のレベルに合わせて問題を調整してくるのです。
入試問題の難易度を語るのなら、相対評価でなければならないでしょう。
「君の現在の得点力だと、〇〇中学の入試問題では合格点は難しい。△△中の入試問題のレベルなら合格点に届くだろう」といった具合でしょうか。
結論としては、前述したように、65%~70%の得点率を目指して過去問演習に励むことを推奨します。