知人の塾教師と話をしていて出た話題です。
その先生の主張としては、6年生になる前にすでに勝負はついている、というのですね。
私としても、実はうなずける話でもあったので紹介したいと思います。
※決して6年生では手遅れということではありません、念のため。
理科・社会の知識量
その先生の塾では、6年生になるときに、理科・社会の知識の総まとめのようなテストを実施するのだそうです。
その塾では、理科は全分野が、社会科は公民分野を除いて地理も歴史もすべて5年生までに終了する、そういうカリキュラムです。
これは一般的な進度ですね。
そこで、6年生になった最初の週に、理科・社会の知識の確認のためのテストを実施するのが恒例行事でした。
テスト内容としては、完全に知識の一問一答形式だそうです。単に知っている/知らない、を問うだけの簡単なテストです。ただし、量がえげつない。理科・社会、それぞれで数百問ずつあるそうです。もっとも社会科では、年代を書くだけの問題も100問あったりするそうなので、そんなに厳しいテストではないようです。
このテストを実施することは、塾に通っている生徒達には、4年生のときから告知しています。とくに、5年最後の1月末から2月初にかけては、塾の授業はありませんので(入試期間中です)、そこできちんと復習をするように、生徒には周知徹底します。
さて、そのテスト結果ですが、意外ときれいな正規分布曲線とはならないそうです。3つの山ができると言っていましたね。高得点集団と、低得点集団の山ができ、その間に正規分布曲線の山がある、そんな分布です。
これは何となく予想がつきますね。
高得点集団は、4年生・5年生のときから学習をきちんと積み上げてきた生徒たちの集団です。また、直前1週間も有効に活用した生徒なのでしょう。
低得点集団は、はっきりいって知識を積み上げる学習をさぼっていた生徒たちの集団です。しかも直前1週間も有効に使っていません。受験に向けての意識が低い、と先生は言っていました。真ん中の正規分布の集団というのは、いわば普通の生徒たちです。やってこなかったわけではないけれど、そこまで真剣に取り組んではいなかった。そういう子たちなのでしょう。
この塾で、私が面白いなあ、と思ったのが、テスト後の対応なのです。
テストを返却し、間違い直しを指示した後、1か月後に再びテストをするのだといいます。全く同じテストです(ただし順番は入れ替えてある)。すでに1度やったテストで解答も配られています。それに基づいて覚えさえすれば、だれでも満点がとれる、そういうことになりますね。
しかし、テスト結果は、見事に二瘤ラクダのように山が二つできると言っていました。
まず、高得点集団は、さらに高得点に偏ります。満点が続出するそうです。
そして、真ん中の集団が消えます。反省して頑張った生徒は、高得点集団に加わるのですね。しかし、残念ながら真ん中の集団でも下位層の得点が下がります。おそらくは、テスト直前の1週間で付け焼刃的に暗記した知識が、その後何のケアもしなかったために、一か月で見事に消えてしまったと思われます。
問題なのは低得点集団です。2回目のテストでも、再び低得点に沈む生徒が多数いるのだそうです。
A:最初から高得点(満点近く)の生徒
B:1回目はふるわなくても、2回目で高得点となった生徒
C:1回目も2回目も低得点の生徒
難しいテストではない
テストも事前に告知済み
十分な時間もとっている
それでもなお、勉強しない生徒がいるのですね。
その先生の分析では、原因は2つあるそうです。
◆親の不干渉
◆子の学習習慣
ただ何となく塾に通っているだけ。親は子どもの勉強に干渉しようとしない。そうした生徒は、Cの集団となるのですね。
「ただの知識の暗記テストですよ。とくに2回目は、誰だって満点がとれて当たり前です。それなのにもう暗記の努力を放棄しているとしか思えない生徒がいるのです」
「1回目ができなくても、そこから頑張って高得点になる生徒はいないのですか?」
「それが、ほとんどいないのです。彼らは、4年生・5年生のときから、『覚える』という努力をしてこなかったので、『覚える』ことができないのですね。そこで急に覚えようとしても、どうやって覚えたらいいのかわからない、どうやっても覚えられない、そんな状況のようです」
わかります。
暗記って、簡単そうに見えて、実は習慣と深く結びついていると思います。理科・社会の膨大な知識量を、急に覚えようとしても、頭の働きがついてこられないのでしょう。
6年生になると、学習の主軸は「問題演習」にシフトします。もう単純な暗記に時間を割く時期ではないのです。
実は、この塾の先生からはさらに怖い話を聞きました。
この理社のテスト結果と、実際の入試結果を検証したデータがあるのだそうです。
結果は、予想通りでした。
理社を軽視する姿勢
中学受験では、算数の優先順位を高く考える受験生ばかりです。
算数という教科は、成果が目に見えやすいので、学習につい力が入るのでしょう。
また、中学以降の数学の世界観とは全く異なる(ように思える)算数の特殊算やパズルのような問題など、親が見ても難しく感じるものばかりです。残念ながら親にも解けない・教えられない問題も多数あります。
そこで、塾・家庭教師等のプロに頼むのですね。
塾としても、算数は目立つ教科ですので、ここに力を入れるようになります。
「理科・社会の成績を上げます!」よりも、「算数を伸ばします!」のほうが広告宣伝効果が高いのです。
ちなみに、「国語力をつけます!」という塾が少ないのは、国語力を上げることが難しいので宣伝しづらいということですね。
しかし、入試は4科目の総合力の勝負です。
「わかっている」生徒・親たちは、したがって4科目のバランスにこだわります。
苦手教科を出さない学習こそ合格への必須条件であることを理解しているのでしょう。
とくに理科・社会のような「知識暗記」を伴う教科は、早い段階から少しずつ仕上げていかないと、後でとんでもないことになりますので。
世間一般で言われているように、「算数が得意な子が入試で有利」なのではなく、「理社で手を抜かなかった子が入試で有利」ではないのか。それが彼と私の結論でした。