前回の記事の続きです。
中学受験を決意して塾に通うことにしました。
今回はその後の戦略について検討します。
塾を転々としない
塾に通い始めました。
どうも「宣伝文句」と異なる点がたくさんあるようです。
「まめに家庭にご連絡いたします」
→3か月たったが一度も電話はない。
「宿題は丁寧に添削指導します」
→ノートを提出しても返却が遅い。
「〇〇中学に〇〇名合格!」
→合格実績が粉飾されていることがわかってきた。
「実力のあるベテラン教師しかいません」
→あきらかに学生アルバイト講師がほとんど。
「勉強に集中できる教室環境」
→授業の妨害をする生徒がいても放置されている。
「気軽に質問できる」
→実際には教師は忙しそうで、質問に行くと疎んじられる。
「こんなはずじゃなかった」
「転塾」の2文字が脳裏をよぎりはじめますね。
別に我慢する必要はありません。気に入らなければ移ればいいだけの話です。
しかし、移った先の塾が、はたして今より「良い」可能性はどれだけあるのでしょう?
どの塾に行ったとしても、不満はかならずあるものです。大事なのは、その不満が許容できるるレベルなのかどうか、という点だと思います。
塾については、カリキュラム・教材・テスト、この3点が重要です。そこに指導力が付け加わればいうことはないのですが、この「指導力」はまさに教師次第です。また相性というものもあります。
普通の指導力の教師であれば良しとすべきだと思います。
塾屋目線から言わせていただければ、塾を転々と移る生徒は警戒します。
常に不満を見つけることばかりに注力するご家庭だと判断されるからです。
転塾を真剣に考えるのは、以下のケースだと思います。
◆教師の人間性
こればかりは改善できません。暴力的な言動の教師が幅を利かせていたり、精神論を振りかざすだけの教師・塾は信頼できませんので。 すぐに転塾を検討すべき案件です。
◆拘束時間が長すぎる
最も大切な家庭学習時間を確保できない塾は、やめたほうが良い塾ですね。塾としても商売ですから、授業をしないと「お金」にならないのです。本当に良い塾なら、授業と家庭学習のバランスをきちんと考えています。
◆お金儲けの匂いが甚だしい
塾もビジネスですから、ある程度は仕方がない。しかし、教師がやたらに「オプション講座」の受講を勧めてきたり、系列の個別指導の受講を勧めてくるようなら要注意です。
◆教室コントロールができない
教室で遊ばせるために塾に行かせているのではありませんから。あまりに力量が低い教師、次元の低い生徒の組み合わせは最悪です。
◆レスポンスが遅い
塾のほうから積極的に連絡してくることは期待すべきではありません。それより、こちらが質問・相談したことに対するレスポンスが遅すぎるのが問題です。
親がカリキュラムを把握する
合格に向けて、とても重要です。
今苦手な分野があるとして、その分野は今後もう習わない分野なのか、それとも今後も何度も繰り返し学ぶ内容なのか、それによって家庭学習は変わります。
別に子どもに全て親が教える必要はありません。子どもが、今何を、どれくらいの時間をかけて取り組んでいるのか、そしてどれくらい理解できているのか、ここだけでも親が把握してあげましょう。
得意教科を伸ばすのか、苦手教科を克服するのか
これは簡単です。
苦手教科をなくしましょう。
受験は、4科目の総合力で勝負がつきます。
1科目でも苦手科目があると、これが最後まで足を引っ張るのです。
塾内でよく言われることですが、「目立たない生徒が合格する」ことが多々あるのです。
「目立たない生徒」というのは、その教科を担当している教師から見て「目立たない」ということなのですね。
集団指導塾はからなず成績でクラスを分けますね。例えば、1組~7組まで、7クラスに分かれている塾があったとしましょう。算数の教師からみて、太郎君(仮名)は3組にいても、さほど目立った生徒ではありません。むしろ、源太君(仮名)のほうが授業中の発言も多く、積極的に授業に参加しています。教師からみても算数は良く出来る生徒です。
しかし、この場合、太郎君のほうが合格には近いところにいるのです。
なぜなら、源太君は、それだけ算数が目立って出来るのにもかかわらず、3組なのです。2組や1組に上がっていません。つまり国理社のいずれかに弱点があるため、その教科が足を引っ張っているが故の3組なのです。それに対して、太郎君は算数がさほど目立って出来ないにもかかわらず3組にいます。つまり他の科目が満遍なくできていることが考えられます。
4教科の足並みがそろっていることは、受験には実に有利となります。
Bさんのケース
とにかくBさんの娘(仮に花子さんとします)は国語が苦手でした。
残り3教科は悪くはないのです。とくに算数は得意です。
しかし国語が。
塾の先生からは、「まるで男子みたいな得点力ですね」とよく言われました。しかし花子さんが目指しているのは女子校です。
一般に女子校の入試問題の国語は、難易度が高いといわれています。国語が得意な女子が多いため、平均点が高いのです。
それなのに国語が苦手なのは致命的です。理科や社会なら、配点が低い学校を選ぶという手も使えますが、国語は算数と並んで配点は低くはありません。
考えてみれば、父親も母親も理系であり、国語が得意だったという記憶は全くありませんでした。花子さんにもとくに読書をすすめたこともありません。国語が苦手でも何とか大学までは行けた、そうした「偽りの」成功体験が邪魔をしていたのでしょう。
もちろん塾には何度も相談しました。しかし、教師の話に、もう一つ納得も共感もできなかったのです。
「大丈夫ですよ。このままきちんと宿題をやって塾に通っていれば、やがて点は取れるようになりますから」
・・・その確信がないから相談しているのに、これでは納得できるはずがないよ。
「今からでも本を読ませたほうがいいですね。おすすめの本のリストをお渡ししますから、さっそく読ませてください」
・・・本を読むだけで国語の点が今から伸びるのか? あと2年しかないのに。
「まずは漢字や慣用句などで落とさないことが大切です」
・・・そんなの当然わかっています。漢字は毎日取り組んで、得点源になっています。
「授業中の解説をきちんと聞いて、宿題もきちんとやってください」
・・・それでもダメだから相談しているのに。
「天声人語の書き写しと要約を毎日やってみましょう」
・・・いつの時代の学習法だ?
結局のところ、まじめに取り組んでいる花子さんの国語の得点力向上の方法論を、塾の教師は持ち合わせていないようでした。
そこでAさん夫婦は腹をくくりました。
こうなったら、家族3人で国語の強化に本腰を入れよう。
娘によくよく聞いてみると、花子さんは論説文はまだ何とかなるものの、物語文が苦手なことがわかりました。物語の状況も人間関係もよくつかめないまま、適当に記号を選んでいたのです。記述も、文章を引用するような書き方しかできてはいませんでした。
そこで、まずは「読解力」を鍛えることを目標に置きました。
素材として選んだのは、入試問題です。
入試問題には、あらゆる物語文が、一部切り取られる形で使われています。読解のトレーニングには最適でした。
書店で買ってきた入試問題集から、物語文だけを選んで読解します。そこでAさん夫婦がこだわったのは以下の2点でした。
◆問題を解かずに、ひたすら読解に徹する
◆易しい物語は選ばない
毎日夕飯後に、親子の読解タイムが設けられます。3人でその場で読み、その短い文章から、登場人物を整理し、プロフィールを推察し、物語の舞台や背景、そして場面と出来事を整理していきます。
ときには論争になりました。
「主人公は小学生でしょ。たぶん小6?」
「違うだろ。中学1年生のはずだ」
「どうして? どこにそんなこと書いてあったの?」
「ほら、ここ。1回目の夏休みってあるよ」
「もしかしてこの学校に転校してきて最初の夏休みかもしれないし」
「転校してきたってどうしてわかるんだ?」
「だって友達いないし。いつも一人だし」
「いつも一人だからって転校生とは限らんだろ」
こんな調子です。
そのうちに、問題として出題されている部分についても論争するようになりました。
「絶対ここで主人公は笑ったんだよ。だって自分をイジメてた子が退学させられるんでしょ?」
「いやいや。そこまで重い結末は望んでなかったんじゃないか。だからむしろ主人公は後悔してるはずだ」
「どうしてそれがわかるの? どこに書いてあった?」
毎日30分の、この家族論争タイムが、実に豊穣な時間を家族にもたらしたことは間違いありません。
もちろん1年後には、国語が花子さんの得意教科になりました。