私は「ママ」ではないので、ママ友はいません。
したがって、ママ友同士の付き合いの軋轢の当事者ではありませんが、職業柄、多くの生徒の母親からいろいろな話を聞かされることがあります。
また、当事者でないことで、「他人事」として客観的に見えてくるものもあります。
今回はそんな話題となります。
※「実態はそんなことはない!」という突っ込みはご遠慮ください。あくまでも私が見聞した狭い範囲の話題に過ぎませんので。
ママ友の分類
どうやら、「ママ友」とよばれる付き合いにも、何段階かあるようですね。
(1)幼稚園入園前の付き合い
妊娠・出産・子育てという体験を共有する仲間ですね。子どもセンターや児童館で知り合う場合あるそうです。その時は情報交換など活発に行うものの、幼稚園に入園すると、別のコミュニティにそれぞれ所属するので、割と早く自然消滅すると聞きました。
(2)幼稚園・小学校(公立)の付き合い
いわゆる「地縁」によるつながりです。家が近所ですので、互いの家を行き来したり、ランチなどで集まりやすい環境です。
ただし、こんな声も聞きました。
「幼稚園・小学校のママ友の付き合いって怖いですよ」
「そうなんですか? 何かありましたか?」
「皆で一緒にランチに行っても、あれこれ理由をつけて食事代をたかる人がいました。今日は財布を忘れたからちょっと貸しておいてとか、今日は〇〇で手持ちがないとかいって。わずかの金額だからといっても、毎回それだとね。また、他人の家庭事情に妙に首をつっこみたがる人や、人の噂話に尾ひれをつけて広める人とか」
「それはどんなコミュニティでもありそうな話ですね」
「それはそうですけど。でも、今まで私の周りにはそうした方はいなかったので」
このお母さまは、中学受験をして、大学附属の中高からそのまま大学に進学しました。
「よく考えてみれば幼稚園や小学校のママ友って、たんに近くに住んでいるというだけの関係ですから。それも田舎のように、何代も前からお互いの家同士の付き合いがあるような濃い関係でもないですよね」
この方がお住まいの地域は、子育て世代も多い新興住宅地です。
「バックグラウンドも不明な方ばかりです。だから、本当に心を開いてのお付き合いはできないですし、しないほうがよいということを実感しました」
だそうです。
ずいぶんシニカルだなあと思ってお話をうかがうと、ある母親に、安からぬ金額の借金を申し込まれたことまであったそうです。当然断りましたが、そうした方がいること自体が信じられないと驚いていましたね。
まあ大人になってから構築される人間関係ですから、学生時代のように心を開いたおつきあいができないのも当然かもしれません。
(3)私立中高一貫校のお付き合い
今回のメインテーマはこちらです。
さきほどの(2)のおつきあいと比べると、
◆同じ学校に合格するための努力を家庭でしてきた
◆同じ学校を選んだ
この2点において、共通点は多いはずですね。
しかし今度は、多くの地域・ご家庭から集まることで、別の問題が生じるようです。
中高一貫校のママ友関係の難しさ
◆家庭の教育方針の相違
例えば中3の娘が、同級生同士でディズニーランドに泊りがけで行くプランを立てたとしましょう。みなさんならどう考えますか?
①中学生の娘だけで外泊なんてありえない!
②少なくとも監視役の保護者が1名は同行すべき
③そんなに多額の費用をかけた遊びはおかしい
④お金がないわけではないし、多感な時期のお付き合いなのだからかまわない
⑤娘は自立しているし、小遣いの範囲の遊びは自由である
⑥本心は反対だが、娘の立場もあるだろうから黙認
私個人の意見は、①&③です。
中学生には中学生にふさわしい遊び方があるはずで、多額の費用をかけたり宿泊はあり得ないと思っています。まあ私は昭和の価値観を引きずる保守的な人間ですので。
多くの人は、⑥のような気がします。しかし、そもそもそうしたプランが持ちあがるということは、④と⑤の家庭も多くいるということなのですね。
◆金銭感覚の相違
私立中高に進学すると、ここの相違に驚かされるでしょうね。子どもの進学を機に学校近くに引っ越す方もいます。引っ越すと簡単に言っても、赤坂・青山・広尾・麻布・千代田区番町といった、「超」がつく高級住宅エリアです。また、代々同じ学校に通う、近くのお屋敷から歩いて通学する子もいます。上場企業経営者のご子息・ご息女も通っています。著名な学者や政治家の子どももいます。もちろん、ごく普通のサラリーマン家庭の子どもが多いとは思います。
そうした家庭の事情を反映して、子どもたちの金銭感覚も異なります。
バレンタインやクリスマスや誕生日などのプレゼントにもそれが反映します。
そもそも中高一貫校でママ友はどのようにしてできていくのでしょう。
◆母親のサークル
最近は、学校公式の母親サークルも多くあるようですね。コーラス・フラワーアレンジメント・美術・読書・器楽等。そうした集まりで自然に交友関係が生まれます。
◆部活つながり
子どもの部活が共通で、親も集まる機会がある場合です。子どもの公演に集まるついでにランチとかでしょうか。
◆保護者会をきっかけに
クラス懇親会や保護者会が活発な学校ですと、それなりに母親同士がつながる機会が増えます。
◆学校行事のお手伝い
学校によっては、文化祭や体育祭に、保護者を積極的に巻き込むところも多くあります。
中高一貫校でママ友は必要か?
子どもが中高生にもなれば自立した存在として、親が全面に出る必要はないかもしれません。別にママ友のつながりなどなくてもかまわない、そう考える方も多いでしょう。
しかし、私が聞いた限りでは、多少のつながりがあったほうがよさそうなのです。
◆子どもが親に何も報告しなくなる
多感な思春期ですからね。小学生時代のようには、親にあれこれ話してくれなくなります。多少のママ友ネットワークがあったほうがよいという方が多数派でした。
◆学校行事の把握
これも、本来なら子ども経由で入手すべき情報ですが、なにせ子どもは何も言ってくれませんので。渡すべきお知らせのプリント類も行方不明です。
◆不登校になったとき
卒業生たちに聞くと、どの学校にも不登校の同級生がいるそうです。人数まで聞きませんでしたが、学年に数名はいるようだとか。不登校の原因は様々です。多感な時期ですので、ちょっとしたきっかけで学校に行きづらくなる子もいるでしょう。起立性調節障害で行きたくとも行くことが難しくなる子もいるでしょう。
もしわが子がそうなったら。様々な情報が途絶します。学校から教えていただける公式な情報以外にも、生徒間で流れる非公式な情報が意外に大事なのです。
数名でもママ友がいれば、教えていただける貴重な情報もあると思います。
親同士が親密な関係を築く必要はありません。
たまにランチで集まって情報を交換する程度。そうした人間関係は大事ですね。