「早期教育」がさかんです。
小学校に上がる前に、何らかの「教育」を行うのですね。
中には、「超早期教育」と称して、胎児~乳児の時期の教育まであるそうです。
こうした「早期教育」については、賛否両論あり、また多様な方法論が存在しますが、ここではそうした「議論」には踏み込みません。
あくまでも「中学受験」をすることを前提に、「早期教育」について考えてみたいと思います。
職業柄、多くの小学生の学力を見守ってきました。そうした小学生の親と話をしていいて、早期教育に取り組んでいたご家庭もそうでないご家庭もずいぶん見てきました。
その結果、中学受験に必要な「早期教育」は以下の3つに絞られると考えるに至ったのです。
語彙力
「日本人なんだから、日本語なんて自然に身に着くでしょ」
「普通に生活してれば、それだけで語彙力なんて身に着くよ」
「私だって、別に幼少期から特別なことはしていなかったけれど、とくに語彙不足で困ったことはないし」
こうした誤った考えが根強いですね。
そうです、「誤った考え」です。
この考えが成立する前提が、もはや今の時代には無いからです。
◆子どもにも大人と同様の話し方が求められる
◆身近に厳しい他人の大人が存在する
◆「子どもらしい」ことは美徳ではないという共通認識がある
かつては、大家族制度のもとで、毎日生活する空間・時間内に、厳しい大人が存在したものです。祖父・祖母・叔父・叔母、そうした存在です。もちろん父親や母親も。
彼らは、子どもだからといって決して甘やかしてばかりはくれません。
とくに言葉の使い方、「口のきき方」については厳しく機会指導が入りました。
家族といえども、親・祖父等には敬語で接するのが当たり前だったのです。
また、学校の先生も決してフレンドリーではなく、近所にも厳しい年寄りがいました。
こうした大人たちに囲まれて生活していれば、自然にきちんとした日本語表現・語彙力・敬語といったものが身に着いたのです。
しかし、これは昭和の話ですね。
もはや、子どもたちが生活する環境には、こうした厳しい大人がほぼ存在しません。
一つうかがいますが、わが子が敬語を使っているところを見たことがありますか?
ないでしょうね。
放っておけば、子どもが接する他人は、同学年の子どもたちと幼稚園の先生だけに限られてしまいます。また、家族は身内ですから、言葉遣いに気を遣う必要などありません。
だから、きちんとした日本語が身につかないのです。
したがって、意図的かつ計画的に言語を身に着ける必要があるのです。
具体的には、少し背伸びした書物を読ませてください。
そのためには、ひらがな・カタカナは当然として、早い段階から漢字を覚えさせなくてはなりません。漢字が読めないと本を読むことができないからです。
【1年生-80字】
一 右 雨 円 王 音 下 火 花 貝 学 気 九 休 玉 金 空 月 犬 見 五 口 校 左 三 山 子 四 糸 字 耳 七 車 手 十 出 女 小 上 森 人 水 正 生 青 夕 石 赤 千 川 先 早 草 足 村 大 男 竹 中 虫 町 天 田 土 二 日 入 年 白 八 百 文 木 本 名 目 立 力 林 六
1年生で習う漢字はたった80字です。
これくらいは、幼稚園生でもマスターしましょう。
【2年生ー160字】
引 羽 雲 園 遠 何 科 夏 家 歌 画 回 会 海 絵 外 角 楽 活 間 丸 岩 顔 汽 記 帰 弓 牛 魚 京 強 教 近 兄 形 計 元 言 原 戸 古 午 後 語 工 公 広 交 光 考 行 高 黄 合 谷 国 黒 今 才 細 作 算 止 市 矢 姉 思 紙 寺 自 時 室 社 弱 首 秋 週 春 書 少 場 色 食 心 新 親 図 数 西 声 星 晴 切 雪 船 線 前 組 走 多 太 体 台 地 池 知 茶 昼 長 鳥 朝 直 通 弟 店 点 電 刀 冬 当 東 答 頭 同 道 読 内 南 肉 馬 売 買 麦 半 番 父 風 分 聞 米 歩 母 方 北 毎 妹 万 明 鳴 毛 門 夜 野 友 用 曜 来 里 理 話
2年生ともなると、少し難しい漢字も出てきましたね。 これらについては、書けないまでも「読める」ようにしておきたいと思います。
【3年生-200字】
悪 安 暗 医 委 意 育 員 院 飲 運 泳 駅 央 横 屋 温 化 荷 界 開 階 寒 感 漢 館 岸 起 期 客 究 急 級 宮 球 去 橋 業 曲 局 銀 区 苦 具 君 係 軽 血 決 研 県 庫 湖 向 幸 港 号 根 祭 皿 仕 死 使 始 指 歯 詩 次 事 持 式 実 写 者 主 守 取 酒 受 州 拾 終 習 集 住 重 宿 所 暑 助 昭 消 商 章 勝 乗 植 申 身 神 真 深 進 世 整 昔 全 相 送 想 息 速 族 他 打 対 待 代 第 題 炭 短 談 着 注 柱 丁 帳 調 追 定 庭 笛 鉄 転 都 度 投 豆 島 湯 登 等 動 童 農 波 配 倍 箱 畑 発 反 坂 板 皮 悲 美 鼻 筆 氷 表 秒 病 品 負 部 服 福 物 平 返 勉 放 味 命 面 問 役 薬 由 油 有 遊 予 羊 洋 葉 陽 様 落 流 旅 両 緑 礼 列 練 路 和
さすがに3年生で習う漢字は、幼稚園生にはハードルが高そうです。
ということで、1年生の80字は書けるように、2年生の160字は、全部書けないまでも読めるように、というのを当面の目標にしましょう。
このようにして1・2年生の漢字を読めるようになると、メリット絶大です。
小学1・2年生用の本が読めるようになるからです。
お勧めは小学校の教科書です。できれば、地域の小学校で採用されていない出版社のものを入手しましょう。
【注意】
◆読み聞かせは不要です。自分で「読める」ことが目標ですので。
◆与える本は何でも良いわけではありません。子どもが好きそうなくだらないシリーズものはやめましょう。
◆みなさんが幼少期に読んで「今でも覚えている」本が良いですね。それだけ「心に残った」証拠だからです。別に最近の作家の本である必要はないでしょう。
計算力
これは、足し算と引き算が普通にできればOKです。
やみくもに計算を先取りすることにはあまり意味はありません。それより数の概念をきちんと理解することが先決です。
余裕があれば、掛け算に取り組んでもよいでしょう。九九は2年生の後半で習います。まだ慌てる必要はありません。
英語
早期教育が最も盛んなのは英語でしょうね。
しかし、急いで英会話教室に通わせる必要もないでしょう。
もちろん近所に評判の良い教室があれば別ですが。
多読用の教材、Oxford Reading Tree がおすすめです。
必ず音声教材も入手してください。
こうした英語早期教育用の教材は、日本の出版社のものは良いものはなかなか無いですね。とくに発音が「カタカナ」で書かれているのが最悪です。
洋書専門書店で、English as a Second Language(ESL)用の教材を探してください。
カラフルで楽し気で、まさに英語入門者向けのものがいろいろ売られています。
もちろん音声教材も入手しましょう。