人は誰しも自分だけの「成功体験」を持っています。
「こうしたらうまくいった!」
「このように努力したら成功した!」
というものですね。
私などは非常に少ないのですが、皆さまは豊富に成功体験をお持ちだと思います。
そして、大人にとって「勉強」「受験」に関して、最も新しい成功体験は、大学入試です。
だから、ついつい大学入試の方法論をわが子の中学受験勉強に適用してしまうのですね。
はっきり言いましょう、それは大きく間違っています。
今回はここを説明します。
高校生と小学生は別の人種
大学受験を迎える高校3年生は、18歳です。成人年齢です。
なぜ世界のほとんどの国で、この18歳を成人年齢としているのかには理由があります。
◆自己分析ができる
◆論理的に考えることができる
◆分析的・批判的に考えることができる
◆目標に向かって努力する「バックキャスティング」ができる
◆失敗を他人のせいにしない
◆失敗を自分で受け止めることができる
◆努力とその先にある成功の因果関係がわかっている
◆ある程度の時間集中して勉強に取り組むことができる
◆他人の目を意識した答案作成ができる
他にもありますが、これが18歳の普通の姿です。
しかし、小学生は全く異なります。
◆自己分析が全くできない
◆論理という語句が欠落している
◆分析・批判的思考は無理
◆バックキャスティングどころかフォアキャスティングですらできない
◆失敗を他人のせいにする
◆失敗を自分では受け止められない
◆努力と成功の因果関係がわからない
◆集中力がない
◆他人の目を意識した答案作成はできない
他にもありますが、これが小学生、12歳の普通の姿です。
大学受験をする高校生徒、中学受験に臨む小学生の違いは、一言でいえば、「大人」と「子ども」の違いです。
親はそれで成功したのかもしれないが
中学受験をしようとする小学生の親は、それなりに社会的に成功した方ばかりです。仕事も充実していたり、お子さんの教育に熱心な方ばかりです。おそらくは、大学入試でも成功した方が多いのでしょう。
それだから、と私は思っていますが、自分自身の最後の成功体験である大学入試の方法論を、そのままわが子に適用しようとする方が非常に多いのですね。
それでもまだ母親のほうが、柔軟に考えることができるのか、あるいは気持ちが前に出るのか、わが子の中学受験に際しては、良い意味で「無我夢中」に取り組んでいただけます。
それがいいのです。
しかし、私の経験上、父親がわが子の勉強に関わり始めると問題が発生する場合が多いような気がします。
◆無駄な勉強と有効な勉強を分ける
実は、中学入試の勉強は、「大人になる第一歩としての基礎教養を身に着ける」側面が強いのです。ですから、理科・社会でも暗記する項目も多いですし、算数も様々な特殊算を扱います。
しかし、そうした学習は、大人の目から見ると、「こんなことまで覚えるのか?」と思われがちなのですね。
そうして「有効」と考える勉強だけを無駄なくやらせることに走り勝ちなのです。
その結果、「足腰の強い」学力が身につかず、入試でちょっと傾向を変えられると、たちまち得点できなくなるのです。
◆中学校の入試問題分析をやり過ぎる
過去に出たことがないからといって、次の入試に出ないとは限りません。過去によく出題されていたからといって、次の入試に確実に出るとはいえません。たった1校しか受けない受験生はほぼいませんので、複数の受験校に幅広く対応できる学力が求められます。
つまり、特定の学校に特化しすぎた学習は、中学受験では逆効果になることも多いのです。
「うちの子は〇〇中学を狙っているのだから、他の学校の問題など不要」
「男子なのだから、女子校の入試問題など意味がない」
こう考えることは危険です。
このようなことをやり勝ちなのが、父親というものなのでしょう。私にもわかります。分析って面白いですから。
小学生は詰め込みも無理もきかない
単純に体力がありません。
したがって、直前の詰め込み学習はできないのです。
しかも、何度も同じ間違いを繰り返します。
それを「イライラ」してはならないのです。
間違えたら、何度でもやり直せばよいのです。
忘れたら、何度でも覚えなおせばよいのです。
小学生の学習は、そのような根気良い繰り返しで成り立っています。
「効率」とは無縁の世界ともいえるでしょう。