中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

中学受験VS高校受験

今回は、いささか偏向した記事になります。

中学受験と高校受験のメリット・デメリットを考えてみよう、という内容です。

この記事が偏向している理由は簡単です。私の専門が中学受験だからです。

それを承知でお読みいただければ。

※記事の性質上、乱暴な決めつけが多くなりますが、ご容赦ください。全て私の個人的な私見にすぎません。

教育環境

 

最初にこれを出してしまうのは反則かもしれません。瞬時に勝負がついてしまうからです。

中学受験というのは、「6年間(場合によっては10年間)の教育環境」を手に入れる行為です。

私立(国立)中学に進学する子たちは、小学校時代に中学受験の勉強を頑張った子たちです。もちろん人によってその努力値・到達地点は異なりますが、それぞれの中学には、「その中学に合格できる」だけの学力を備えた生徒達が集まります。

そうした同級生たちに囲まれて過ごす6年間になるのですね。

 

当然授業の水準も、そうした生徒達のレベルに応じた内容になります。また、文科省のカリキュラムに縛られずに、学校独自、教師独自の指導が盛り込まれるのも特徴です。

 

こればかりは、公立中学では得られません。

公立中学には、今お通いの小学校の生徒達のうち、中学受験しなかった生徒たちが全員進学します。

もちろん、中学受験をしなくても優秀な生徒がいることは承知しています。

しかし、人数・割合を考えるとこればかりはいかんともしがたいですね。

 

費用

最初に中学受験最大のメリットをとりあげてしまいましたので、費用について考えます。

考えるまでもなく、公立中学に進学して高校受験に挑むほうがはるかに費用は安くなります。

また、高校受験の選択肢で最も多いのが「公立高校」進学となります。

これもまた費用が安くすみます。

こればかりは、いくら高校無償化が進もうとしても、私立中高一貫校とは比較になりません。

これこそが、高校受験を選択する最大のメリットでしょう。

 

★塾費用を節約する方法についての本を出版しました。

ぜひ読んでみてください。

peter-lws.net

 

通学距離

 

自宅から歩いていける距離に、希望する私立中学がある方はほとんどいないでしょう。

仮にあったとしても、その中学に合格できるかどうかは別問題です。

大部昔の話で恐縮ですが、朝の通学時間帯に、半蔵門駅から下り電車に乗る女子高生を見かけました。深緑色の制服は、溝の口の洗足学園のものでした。千代田区番町に住んでいるというのも羨ましい話ですし、「下りだから空いている」ので通学が楽なのも良いのですが、実は半蔵門から徒歩圏内には、女子学院・大妻、少し離れますが雙葉・白百合等の学校があります。

大妻あたりを押さえとしての洗足学園第一志望だったのか、女子学院が残念で結果としての洗足学園だったのかまではわかりません。

 

 公立中学へは歩いていけます。3年間毎日のことですので、これは大きなメリットとなります。災害時の帰宅も問題ないですし、何より放課後の時間が有意義に使えます。

 

学習内容

 

公立高校の入試問題と、私立中学の入試問題を比較すればわかります。

あきらかに、公立高校の入試問題のほうが易しいのです。

思考力・記述力を要する問題はほとんど出ませんん。

とくに理科・社会が単純な知識問題だけで構成されています。

このレベルの問題を解く力を、3年間かけ学んでいくのです。

もちろんパーフェクトな得点力を身に着けようとすれば大変なのは理解しています。しかし、中学受験ですでに「生成AIの特徴と問題点」「クオータ制のメリットとデメリット」「多数決の問題点」といったテーマで200字の記述を書く力を身に着けているのです。そうした子がさらに私立中学3年間で高みを目指します。中3で数Ⅰまでは終了するのは普通ですし、世界史だって深いところまで学びます。

そう考えると、どんなに頑張って努力しようと、高校受験対策の勉強は、ゴール直前で足踏みさせられているような状況となってしまうのですね。

これは明らかに優秀な生徒ほど「可哀そう」な状況といえるでしょう。

ただし、一部の難関高校(開成・筑駒)では、さすがに難易度の高い問題も出題されています。

 

多様性

これは互角です。

公立中学には、多様な家庭環境、学習状況の生徒が進学します。いわゆる「ヤンキー」と呼ばれる生徒も必ずいますし、割り算もおぼつかない生徒もいます。もちろん中学入試残念リベンジ組の子もいますし、中学生になってから勉強に開花する子もいます。

これを「多様性」とみなすこともできるでしょう。

「社会に出れば多種多様な人と接しなくてはならないのだから、公立中学の多様性は望ましい」という意見もあるかと思います。

 

一方、私立中学には、こうした「学習の度合い」の多様性はあまりありません。割り算ができない生徒も存在しませんし、「ヤンキー」のような子も皆無です。(もちろん学校にもよる)

そういう観点では、画一的な生徒が多いという見方もできるでしょう。

ただし、最難関校は話が別です。「青天井」に優秀な生徒がいるからです。

 

市立中学には、広い地域から生徒が通ってきています。小学校もバラバラです。こうした多様性は公立中学にはありません。

 

つまり、中学校にどのような多様性を求めるのか、求めないかによって評価は変わるでしょう。

私個人の意見としては、割り算が出来ない子と机を並べたくはありませんし、不良に絡まれるのも願い下げです。

 

内申点

これが公立高校入試最大の問題だと思っています。

客観性のない評価で高校進学が決まるからです。

知人の、高校受験専門の塾の先生から、内申点をあげるコツを聞いたことがあります。

◆提出物の締切厳守

◆先生の意見には絶対に逆らわない

◆先生の間違いを指摘することは厳禁

◆授業中は先生の方を見て、頷きながら授業を聞く

◆授業には積極的に参加し、グループワークでは級友の意見も聞く

◆実技教科こそ手を抜かない

◆毎回の小テストはしっかりと得点する

◆時々先生に質問して自分の真面目さをアピールする

◆先生に積極的に相談する

◆部活は担任の先生が顧問のものを選ぶ

◆定期テストで高得点を狙う

 

当然と思えるものもありますが、そうでないものも多いですね。

「内申美人」への道のりは険しそうです。

「たとえよく理解できている内容でも、先生の得意な分野の質問をしに行くのもよいですね」」

これを聞いたときには正直ウンザリしてしまいました。

 

おそらく、その先生は私をからかっていたのだと思います。

卑しくも「教師」の道を選んだ学校の先生が、「お気に入りの生徒」に高評価を付けるような次元の低い人間のはずがないからです。

 

そうした話を聞いてしまうと、中学入試の公平さが際立ちます。

入学試験の得点

ただこれだけで合否が決まるからです。

 

中学校生活

 

高校入試があるため、中学生時代にも勉強に手を抜かずに努力するから、結果として中高一貫校生よりもよく勉強する。

こうした意見も聞きます。

偏った意見です。

この意見の前提として、「中高一貫校の中学生は勉強しない」という偏見があるからです。

 

こればかりは、「人による」としか言えませんね。

公立か私立かは無関係です。

 

地元の人間関係

 

私立中学に進学すると、地元の人間関係はリセットされます。

中学校が違いますので。

公立中学に進学すると、小学校・中学校の9年間、同じ仲間と過ごすことになります。この絆は大きいですね。

地縁を最優先する方にとっては、私立は選択肢に入らないのかもしれません。

お互いの家を気軽に訪問し合うことも、私立の場合にはほぼありません。

どこかに遊びに出かけるときにも、中間地点のターミナル駅に集まることになります。道を歩いていて、級友に遭遇することもありません。

成人式に出席しても浮くでしょう。

 

ただし、中高一貫校に進学すると、12歳から18歳の大切な思春期を6年間同じ仲間で過ごします。ここで生涯の友を得ることになるでしょう。

 

小学校生活

 

別に中学受験をしないからといって、小学生は遊んでいればいいわけではありません。

この時期にやるべき勉強をやるべき密度でやらなくてはならないのです。

もちろんこの「やるべき密度」は、小学校のカラーテストで満点を目指すことではありません。

せっかく中学受験をしない、塾に行かない時間をどう有効に活かすのか、そこが大切です。

中学受験はわかりやすい目標です。そうした目標が無い状態で勉強するのはなかなかたいへんです。これは中学受験をすることの大きなメリットだと思います。

 

極論すれば、たとえ中学受験をしないとしても、それと同等の学習をすることには大きな意味があると思っています。

 

 

私の知人に、高校受験専門塾の先生が何人かいます。公立中学の学習内容を熟知し、高校入試の専門家である彼らは、皆、自分の子どもを中学受験させました。

これが結論なのだと思います。

もっともたまたま私の周りがそうであっただけということにすぎませんので、何の証拠にもなりませんが。