中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】その塾、その教室の合格実績はどうでもいい

塾選びのさいに、その塾・その教室の合格実績は気になりますね。

しかし実のところ、その実績はどうでもよいのです。

今回はそこについて検証します。

実績の信憑性

 

各塾は合格実績を競っています。

しかし、プロの目からみると、うさんくさい、というよりは意図的に水増しされた数値が蔓延っているのです。

 

(1)関連塾の実績を合算

塾のHPの合格実績のページに、読めないような小さな文字でこう書かれています。

「当塾の開発した教材やテスト体系を使用している提携塾全体の実績です」

「〇〇塾と個別指導〇〇塾の実績を合わせて掲載してあります」

 

例えば、「ダイエット効果」を売り物にした健康食品があったとしましょう。

「当社のダイエット食品を食べた結果、6割の人が10㎏のダイエット効果を実感!」

とあります。思わず買ってしまいそうです。

しかし、そこに小さくこう書かれていたらどうでしょう。

「毎日10キロのジョギングと100回のスクワットを半年以上継続しながら当社の食品を食べた成果です」

 

つまり「合わせ技」による実績など、何の意味もないと考えたほうがよいのです。

 

(2)他塾の実績を盗む

入試直前に3か月間の格安個別指導を提供して、他塾が天塩にかけて育てた生徒の合格実績を盗む。

これも横行しています。

無料テストを餌にして、成績優秀な他塾生徒を一本釣りするのです。

違法ではありませんが、モラルには反します。

 

(3)実績稼ぎのために複数校の受験を強要する

通学できるはずもない遠隔地の学校を受験させる場合もありますね。中には交通費や受験料まで負担する塾もあると聞いたことがあります。さすがに嘘だと思いたいですが。

 

(4)複数の学校の実績を合算して公表する

これも多いですね。「難関校100名!」といったかんじでしょうか。

 

他にも姑息な手段はいくつもあるのですが、書いていてウンザリしてきたのでこれくらいにします。

 

もちろん、正直な数字をきちんと公表している塾も多くあります。

 

ある中学校の合格者数を見ていました。ここは辞退者が非常に少ない学校です。

普通は合格を出しても入学しない辞退者がけっこういるものです。最難関校は少ないのですが、それでも300名定員なのに400名の合格者を出すくらい珍しいことではありません。

しかしこの学校は、120名定員なのに、130名程度しか合格者を出さないのです。つまり辞退率が非常に少ない学校なのですね。

さて、いくつかの塾が公表している数字を足してみます。たった4つの塾の数字を足しただけで、180名を越えました。

◆全ての塾の数字が水増しされている

◆一部の塾の数字が水増しされている

考えられるのはこの2つの場合です。

そして、業界の内情を知る私から見ると、2つの塾は正直に数字を公表していると私は思っています。ということは、残り2塾が数字を水増ししていますね。

 

塾の合格実績など、その程度のものだと割り切るべきでしょう。

 

教室の実績は変動するのが当たり前

 

サピックスの2025年の卒業生数は6415名でした。

首都圏一都三県の校舎数は45校舎です。関西エリアは5校舎です。

関西の校舎のほうが規模が小さそうですが、詳細は不明です。

単純に割り算すると、1教室あたりの6年生平均人数は、128名~145名ということになります。

 

神奈川の啓進塾は、卒業生数415名で教室数は5校舎です。

単純に1教室あたり82名となります。

 

実は、在籍生徒数を公表している塾はほとんどないのです。

そこでこの2塾をとりあげました。

 

乱暴ですが、1教室あたり6年生の人数が100名程度としてみましょう。男女が50名ずつとします。

さて、この6年生の人数が100名の「仮想」塾の「仮想」教室が渋谷駅にあったとします。

東京はもちろん、神奈川も千葉・埼玉も通学圏に入ります。

2月1日の学校だけを見ても、

開成・麻布・駒東・慶應普通部・武蔵・早大学院・早稲田実業

これらの学校が2月1日に1回だけ入試を行う学校であり、上位の生徒がこれらの学校に分散します。

0名~2名程度の合格実績となるのでしょう。

しかも、年較差は大きくなります。

たまたま「開成志望者」がゼロ名の年もあるでしょうし、複数名が志望する場合もあるでしょう。

そうした教室単位の合格実績など、較べたところで無意味です。

 

過去の生徒の合格が今の受験生の合格を保証するわけではない

 

当たり前のことですね。

いくらその塾・その教室で「開成〇〇名合格!」となっていたとしても、それがお子さんの合格とはつながっていません。

せいぜい、「合格できる」かもしれない雰囲気がある程度です。

 

気にするのは実に無駄なことです。

 

ただし、1つだけ言えることがあります。

その塾・教室から1つの中学校に多数の合格が毎年のように出ていた場合です。

例えば、開成や桜蔭に毎年2桁の合格者がいたとしましょう。そこで10年以上指導していた教師がいると、この教師は開成や桜蔭に合格した生徒を3桁の人数過去に指導してきたと考えらえます。

もちろん、不合格だった生徒も多数見てきたはずです。

そうすると、この教師には、数値化できないようなノウハウが蓄積するのですね。

「偏差値は足りないが、この生徒なら開成は行けるだろう」

「数値上は可能性が80%と出ているが、この生徒は桜蔭は危険だと思う」

こういう目に見えないような「ノウハウ」の蓄積があるのなら、その校舎・教室の合格実績にも何等かの意味があると考えることはできるかもしれません。

 

 

 

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