脊髄反射とは、大脳を経由せずに脊髄の反射中枢を介して起こる反射のことです。
目の前にボールが飛んできたときに反射的に目をつぶったり、熱い鉄板に指が降れた瞬間に手をひっこめたりする反応ですね。
信号が脳まで行く前に脊髄が反射的に指令を出すのです。
さて、もちろんこの記事で書きたいのは、こうした医学的なお話ではありません。
子どもたちが、考え無しに反射的に発言する現象を、私は「脊髄反射」と名付けたいと思います。私の発明ではなく、世間でも一般的に使われる用法ですね。
「脊髄反射」の例
生徒A:「先生、男女差別っていつごろ生まれたの?」
生徒B:「縄文!」
私:「B君、どうして君は縄文だと思ったのかな? 理由を説明して」
生徒B:「・・・・・・・」
全く考えていないで発言しているのです。
生徒Aが質問した瞬間に「縄文!」と叫んでいます。
当然、理由を聞いても答えられません。
私:「女性は男性にくらべて筋肉量が異なるのは仕方がないね。でもそれだけで女性を下に見る風潮が生まれるとは考えにくい。他に何か理由があるのだろうか?」
生徒B:「知能!」
私:「B君は、男よりも女のほうが知能が低い、と考えているんだね。その実例と根拠を説明してくれ」
生徒B:「・・・・・」
これもひどい発言です。
まさに「脊髄反射」で言葉を発しているだけなのです。
しかも差別発言です。
私:「貨幣の役割は3つある。わかるかな?」
生徒B:「投げる!」
まさか銭形平次を知る世代ではありません。
私:「アイヌは日本人なのか、日本人ではないのか、どう思う?」
生徒B:「宇宙人!」
これは説教物です。
ひどすぎます。
ここでは、アイヌへの差別や偏見の歴史、「日本人」という語句の定義と歴史的背景についてじっくりと考察させる場面のはずだったのです。
さらに、国籍について、なぜアメリカは出生地主義で、日本は血統主義なのかを考える授業でした。
なぜ「脊髄反射」で答えるのか?
このように、脊髄反射で答える子の理由は簡単です。
うけると思っているのです。
小学校で、あるいは塾の教室で、当意即妙の(と本人は勘違いしている)答を反射的に口にすると、クラスがどっと沸いたことがあるのでしょう。
それで、何でもいいから口にする習慣が染みついたのだと思います。
特に、なるべく突拍子もない答のほうが受けると勘違いしているので始末におえません。
こうした生徒の発言を、私は絶対に許容しません。
きちんと考えた末の答えなら、それがどんなに的外れでも、否定はしません。どうしてその答えに至ったのか、そしてどこで考えの筋道を間違えてしまったのか、それをじっくりと考察させていくきっかけになるからです。
しかし、「脊髄反射」の答えは取り上げる価値はありません。
「脊髄反射」で発言する子が伸びない理由
考える習慣が身につかないから、成長しないのです。
たまたま脊髄反射の答えが正しかったこともあるでしょう。
そして周囲から褒められることもあったのです。
これで、勘違いが増幅してしまうのですね。
こうした生徒の特長として、人の意見にきちんと耳を傾けることができないという点があげられます。
また、幼少期にも原因があるのかもしれません。
大人びた発言をすることで、周囲の大人たちから「賢い」と誤解されるからです。
もしお子さんがこうしたタイプだったら問題です。
経験上、こうした生徒は伸びないからです。
「くだらないことを言うな!」
と真向否定してもいいのですが、私はいつも、その発言の真意を説明させることにしています。もちろん説明などできません。
発言するということは、その発言に至った理由を説明できる状態でなくてはならない。
これが論理的思考の第一歩だと思うのです。
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