中学受験は算数・国語・理科・社会の4科目で実施されます。
最近は、午後入試を中心に、2科目入試や単科入試も見かけるようになりました。
英語を入試科目に導入する学校もあります。
しかし、やはり主流は4科目入試です。
しかし、国語の成績に悩む方も多いのですね。
今回は、そんな悩みに正面から向き合おうと思います。
国語の成績が悪い理由
国語で点が取れない理由はたった一つです。
国語の学習を後回しにしてきたツケが回ってきたのです。
「いや、そんなことはない。幼少期は本の読み聞かせをしてきたし、今までもなるべく本を読ませてきた」
「漢字や語句のトレーニングだってやってきた」
「塾の宿題だってきちんとやっていたはず」
こう反論が聞こえてきそうですね。
それでは、問いますが、国語の学習に費やす時間は算数と較べてどうでしたか?
算数を勉強するのと同じ時間、国語を勉強してきましたか?
私が今まで教えてきた生徒達のほぼ全員が、学習時間に関しては、
算数>>>理科・社会≧国語 でした。
算数が中学入試で最重要科目である。
皆がそう思い込んでいます。
しかし、4科目入試の学校では、算国の配点よりも理社の配点が低い学校はあっても、算数の配点が国語の配点を上回る学校などありません。
つまり、算数と国語は同じ配点、同じ重要度なのです。
それでは、なぜ国語の学習時間が少なくなり、算数ばかりに時間を費やしてしまうのでしょうか。
◆塾から出される宿題が算数は多い
中学受験塾では、算数の授業時間が最も多く設定されているところがほとんどです。また、宿題の量も圧倒的に算数が多くなっています。やってもやっても終わらない量が課せられるのです。
国理社の3教科は算数に遠慮して、宿題の量をセーブします。
◆まず算数から勉強してしまう
ほとんどの方が、まず算数から勉強を始めます。やってもやっても終わりません。次の日も算数を解いています。まずい、明日は塾の理科・社会の日です。プリントを暗記しておかないと、小テストで先生から怒られる! あわてて理科・社会をやります。
まずい、明日は国語の漢字テストがある。あわてて漢字だけをやっておきます。
こんな調子で家庭学習をしていれば、それは国語までは手が回らないのが道理です。
◆算数で勝負がつくと思いこまされている
塾にとっては、算数の教科指導が最もしやすく、最も差をつけられるところです。そこで、算数が重要であると塾も思い込み、保護者・生徒にもそれが伝わります。
昔の受験の世界では、そう言われていたこともありました。今は違います。4教科のバランスで合格していくのです。しかし、古い価値観に縛られた塾教師は、未だに「算数さえできれば」と口にしているようですね。
◆算数が解けると嬉しい
子どもにとって、〇×がはっきりとつく教科は頑張りがいのある教科です。算数はいいですね。解けなかった問題が解けたときの喜びはひとしおです。その点、国語の読解・記述解答は、どうもすっきりしません。解けた・わかったという爽快感が無いのです。
◆採点がしづらい
記述答案の採点が生徒本人にはできません。親も自信がありません。だから後回しになるのです。
◆国語はやらなくてもすぐには点に響かない
国語の学習は、先の見えない深い霧の中を歩く登山のようなものですね。やってもやっても得点があがらず、先が見通せません。さぼってもすぐに成績が落ちるということもありません。これでは一所懸命頑張るモチベーションなど生まれるはずもないのです。
国語の何ができていないのか?
(1)語彙不足
まず、漢字や熟語、さらには慣用句などの「語彙」が不足している場合があります。
こうした語彙は、系統だてて早い段階から積み上げていかないとまずいのです。語彙が不足していると読解にも悪影響があるからです。
小学生で必要な漢字は1026字ですが、この程度は5年生になる前には仕上げておくくらいのスピード感が本来は必要です。
(2)文法力不足
小学生では系統立てた国文法は学びません。それでも最低限の文法の知識は出題されています。例えば、正誤問題で文法的に誤った短文を選ぶような問題ですね。また、助詞・助動詞の使われ方もよく出題されています。
国語が苦手な生徒たちの解き方を見ていると、「何となくこれがおかしく思えたから」といった次元の解き方をしているのです。「何となく」判断できるほどの読解体験がない生徒がこういう解き方をすると必ず間違います。きちんとした文法知識の裏付けがないと学力とはいえないのです。
(3)物語文の読解
入試で出題されるのは、簡単な物語文だけではありません。小学生が感情移入しやすいような主人公・設定ではないことも多いのです。
・ニート中年男性が立ち直る物語
・子どもがいない女性の、子育て中の母親に対する僻み
・娘を持つシングルマザーの恋愛
・戦争中に友人を死に追いやってしまった中年男性の葛藤
・首が透明になってしまった男の子の話
・団地の屋上でキリンを飼う男の子の話
こんな設定・主人公の文章がいくらでも出題されています。
それでも読解するしかないのです。
(4)論説文の読解
論説文の多くは、小学生を対象として書かれていません。また、著作者が子供向けの文章を書き慣れていない場合もあります。さらに扱うテーマが難しいものばかりです。
最近は、哲学者の書く文章もよく見かけるようになりました。
こうした論説文を解けない生徒に聞くと、「まったく何を言っているのかわからなかった」という感想が返ってくるのです。
(5)随筆文の読解
意外と厄介なのが随筆文です。エッセイストと呼ばれるような随筆専門の著者の文章はわかりやすいものが多いですが、あまりにも「あっさりと」しすぎていて、入試問題が作れません。そこで、随筆を専門としていない著者、例えば自然科学の学者であったり人文科学の学者であったり、あるいは画家や音楽家などの「畑違い」の人の書く随筆が好まれるのです。
しかしこうした「畑違い」の方々の多くは、文章を書くトレーニングを受けていません。「読者にわかりやすく伝える」文章を書くのが不得手です。
したがって、残念ながら、こうした専門外の方の書く文章は読みづらいことが多いのです。
(6)スピード不足
読むスピードが遅いと、最後まで行きつきません。
(7)記述力不足
記号選択は何とかなるとして、記述が空欄な生徒も多いですね。記述で空欄を残すようでは、高得点など不可能です。
どうすればいい?
あと1年もありません。
この段階で、国語ができていない生徒を救うのは実は困難です。
しかし、だからといって手をこまねいているわけにもいきません。
そこで、国語を何とかするための方法を一つだけ伝授します。
入試問題を解くのです。
国語については、小6の今の段階で「知識」不足で解けないということはありません。
どんな学校のどんな国語の問題でも、本来は解けなくてはいけないのです。
しかし、解けません。
そこで必死に間違い直しをする。
この繰り返しです。
読解が平易な文章をいくら読んでも読解力は身に付きません。
設定が難しかったり意味がつかめない文章を、必死に読み解こうとする努力こそが、読解力向上の鍵となるのです。
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当ブログに掲載していた記事をまとめ、大幅に加筆修正したものです。