2025年の慶應湘南藤沢の国語入試問題を見てみます。
分析というより雑感です。
ポアンカレ
アンリ・ポアンカレは19世紀末に活躍した数学者ですね。
「ポアンカレ予想」は有名です。
「単連結な3次元閉多様体は3次元球面に同相である」
トポロジーは私の理解を越えています。私が知っているのは、「ポアンカレ予想」という語句と、それが位相幾何学の話であること、ロシアのグリゴリ・ペレリマンが証明したが賞金の100万ドルを拒否して隠棲したこと、といった数学とは無関係の情報だけです。
大問2は、いきなり「ポアンカレは・・・」と始まりましたので、「えっ! ポワンカレ予想?」と怯えましたが、「無意識でひらめく」ことについての文章でした。記憶と無意識についての考察が展開されています。禅宗の公案など出てきて身構えますが、文章も設問も難しくはなかったです。
あの空の色が欲しい
大問3は、蟹江杏「あの空の色が欲しい」が出典です。
蟹江杏氏は、画家です。画家・版画家・絵本作家・小説家、といったことになるのでしょうか。マルチな活躍をされている方のようですね。
この作品は、絵を描くのが大好きな小学4年生の少女と、変わり者で有名な老芸術家の交流と、少女の成長を描いた物語です。
主人公の少女は、学校で変わり者と思われています。その少女が、さらに変わり者の老芸術家の美術教室に行くことで、徐々に心が成長していきいます。
しかし、変人で危険人物とされている「オッサン」=老画家の教室に通っていることを学校の男の子に馬鹿にされ、ついかっとなって喧嘩となりました。
学校に母親と呼び出され、男の子とその母親に面罵されながら頭を下げる。
そのような話が展開します。
あくまでもこの入試問題に使われている部分だけからの感想ですが、登場人物と設定・セリフがステロタイプでちょっとびっくりしました。
しかし、小学生が読むならこれくらいのほうが読みやすいのでしょう。感動的ということで、評価も高かったようです。
こういう「安定の設定」が使いやすかったようで、今年はいろいろな学校で出題されました。
作者本人がインスタにこう書いています。
「私の初小説『あの空の色がほしい』が、中学受験の読解問題になっている。しかも、なんだか沢山の学校で、、、。
読んでくださった人はお分かりとおもうけど、オッサンが生きてたらびっくりするとおもいます。
受験生、がんばれ!春は近い。
以下の学校で読解問題で出題されたよう。
名門ばかり、、。多分自分で,解けない気がするけど。
大妻1、慶應義塾湘南藤沢、海城(②)、サレジオ学院(B)、横浜共立学園(A)、國學院大學久我山(①)、三輪田学園(②)、久留米大学附設、、などなど。
#蟹江杏」
Norman Rockwell
大問4は、20世紀アメリカを代表するイラストレーターのNorman Rockwellのイラストからの出題です。
絵を掲載できないのが残念ですが、ロックウェルは、『トム・ソーヤー』や『ハックルベリー・フィン』の挿絵も多く手掛けていますので、何となく絵柄が想像つく方も多いでしょう。いかにも古き良きアメリカを思わせるテイストです。
さて出題された一枚のイラストは、332枚もの雑誌の表紙絵をまとめた本が出典でした。
絵にはドアらしきものが描かれ、そのドアの四角い窓から顔をのぞかせている人物、たぶん女性がいます。ドアの前には、小粋なカンカン帽をかぶってニヒルな?表情の少年。片手には花瓶と花を持っています。足下には一匹の犬がじゃれついています。犬の首輪からはロープと杭が見えています。少年は犬に何かを言いながら後ろを指さしている、そんな絵柄です。
ドア向こうの女性の首にまるでロープがかかっているように見えるのが不気味です。最初は首吊りロープか? と思いましたが、どうやらそういう図柄の隙間なのでしょう。
少年が女の子を花を持って誘いにきたら、少年の飼い犬が繋がれた杭を引き抜いてついてきてしまい、「House!」と少年が犬をしかりつけている、そんな場面のように見えます。
絵に10字以内の題名をつけ、なぜその題名にしたのかを150字以内で説明するというのが問題です。
タイトルはすぐに浮かぶとして、それを説明するのがやっかいです。
「ひらめき」「思いつき」のようなものを説明させられるからです。30字くらいならよいのですが、150字ですから。