中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

塾の合格実績は、半分だけ信じられる

今回は、嫌な話となります。

塾の合格実績の真実について書いてみます。

 

以前、塾の出す「合格実績」の実態について詳細に紹介しました。

peter-lws.hateblo.jp

今回の記事は、いわば前回の記事の抜粋版です。

 

塾には2種類ある

 

実績を正直に公表する塾と、ごまかす塾の2種類です。

 

どの塾がどちらの塾なのか、業界には情報が流れてきます。しかし噂レベルなので、さすがにここで名前をあげるわけにはいきません。訴えられてしまいますので。

 

正直な塾の場合

 

例えば、正直な塾はこんなかんじです。

 

◆事前に生徒の受験校の受験番号を提出させる

 まあ、これはどの塾でも常識でしょう。

◆合格発表は、塾でも番号を確認する

 学校によっては、受験生本人にしか結果を伝えないシステムとしているところもありますが、合格番号を掲示or公表するところも多くありますので。また、塾と学校の信頼関係がある程度構築されていると、特別に塾に合格者番号の一覧を送ってくれる場合もあるようです。

◆保護者からの合格(不合格)の連絡をいただく

⇒保護者からの連絡と、塾で別個に確認した合格確認の両方が一致した場合のみ合格者にカウントする

 

ここまで徹底すると、正確にカウントできますね。

 

さらに、何をもって「自分の塾の生徒」と言うのかについても、正直な塾はこんなかんじのようです。

◆最低でも半年以上は、平日&土日のレギュラー授業を継続して受講した生徒

 

まあ6年の後半になってから転塾する生徒もほぼいませんので、実質上は1年以上の指導ということになるのでしょう。

どの塾も、6年生になると、通塾日数は3日~5日程度になります。また、宿題も多く、家庭学習にも綿密な指示が出ますので、他の塾との併用はできないのが普通です。

他塾との併用を推奨する塾など皆無です。

例外としては、その集団指導塾がやっている個別指導塾を併用するケースくらいでしょうか。

 

つまり、少なくとも半年以上、普通は1年以上はその塾だけに通っている生徒の実績が合格実績となるのです。

 

そうした「正直塾」の経営者に聞いたことがあります。

「塾の合格実績など、誤魔化そうと思えばいくらでも誤魔化せるが、一度でもそれをやってしまうと、今後自分の塾が出す合格実績を誰も信用してくれなくなる。そして、まず社員から腐っていく」

「良い結果」も「悪い結果」も正直に公表するそうした姿勢は尊敬に値します。

というより、当たり前のことなのですがね。

 

誤魔化す塾の場合

 

昔は、一度も通ったことなどなく、1回無料テストを受けだだけの生徒の合格実績を盗むような「野蛮」な塾もありました。さすがに今はやっていないと思います。

 

一番多く見られるのが、他塾の優秀な生徒をいかに引き抜くかに全力をあげる塾です。

さすがに他塾の優秀な生徒は移りません。だって、今の塾の学習で成果があがっているのですから。

そこで、せめて週1日、1講座でも自分の塾の講座を受講してもらい、「うちの塾に通っていた生徒」という体裁だけを作ろうとするのです。

 

また、公益社団法人 全国学習塾協会」という業界団体があるのですが、そちらが定めた合格実績にカウントできる条件というのが、実に緩いのです。

◆「受講契約」を結び「有料の講座」を受講する

◆30時間以上あるいは3か月以上の指導

◆オンライン受講やWEB視聴でもよい

だいたいこんなかんじです。

 

「誤魔化す」ことを目的とする塾にとって、こんな条件をクリアすることは容易いですね。したがって、HPの合格実績のページに、「当塾は、公益社団法人 全国学習塾協会の基準に基づく生徒の実績のみを合格実績としています。無料講習生やテストを受験しただけの生徒はふくみません」などと喧伝してあったとしても、それだけで「正直塾」であるかどうかはわからないのです。

ちなみに、この業界団体には、日能研四谷大塚サピックスは加盟していません。したがって、業界を代表する団体ということではありません。

 

無料テスト・特待生に注意

「誤魔化し塾」が他塾の優秀層を集めるツールとして、例えば「筑駒合否判定模試」といったようなものを、無料で実施する場合もあります。わかりやすいですね。他塾の優秀な生徒の個人情報を刈り取るのが目的です。そうして成績優秀な生徒のところに、執拗な勧誘が行われるのです。

もちろん断るのも乗るのも自由ですし、ビジネスとしては問題は何もありません。その程度の生徒集めは多くの塾で見られます。

また、「特待生」というのも、有効なツールですね。

まあ特待生になれるほど優秀な生徒なら、どの塾に通っても大丈夫でしょうし、手厚い指導が受けられるでしょう。しかもタダで。

しかし、そうしたやり方にモラルはありません。私は軽蔑しています。

 

個別指導塾の合格実績は意味がない

個別指導塾は、集団指導塾と併用する生徒が大半です。したがって、週5日どこかの集団指導塾に通っていた生徒が、週1日だけ個別指導を利用したとして、その子の実績を個別指導塾の手柄とするのには無理があります。

 

個別指導塾を選ぶ際には、合格実績以外の要素に注目すべきでしょう。

 

正直な塾の見分け方

 

◆合格実績を1名合格の学校まで全て公表

◆卒業生数を公表

◆グループ塾・提携塾の実績を合算していない

◆教室単位の合格者数を公表

◆合格者数の公表が早い

 

せめてこれくらいの開示の姿勢があれば、ある程度信頼できるのですが、そうしている塾は多くはありません。

 

別に塾の合格実績など気にならない、良い指導さえ受けられれば。

そうした考えもあるでしょう。ただし、「誤魔化し体質」の塾にどれだけの指導力があるのかは甚だ疑問です。

 

塾選びの指標としては「合格実績」は気になりますが、話半分くらいにとらえるしかありません。その程度の信憑性だということです。