子どもたちはミスをします。
それもつまらないミスを大量に。
今回は、そうしたケアレスミスを分析することで対策につなげる、という内容になります。
ミス1:問題文を読まない
「正しいものを1つ選びなさい」
「誤っているものを全て選びなさい」
「漢字で答えなさい」
「本文中の語句を用いて答えなさい」
こうした問題文の指示を読み落とすのです。
たぶんこれが最も多いケアレスミスでしょう。
たとえば、「オイルショック」を答えさせる問題があったとします。「カタカナで答えなさい」という指示があります。それなのに、「石油危機」「石油ショック」と書く生徒が必ずいるのです。
たとえば、「浄土真宗を開いた人物」を答えさせる問題があったとします。「ひらがなで答えなさい」という指示があります。それなのに、「親鸞」と漢字で書く生徒が必ずいるのです。この「鸞」の文字は、小学生は書ける必要がありません。しかし生徒の中には(なぜか男子生徒)、こうした難しい漢字に燃える子がいます。「俺書けるんだぜ!」と得意になって解答用紙に書いたのでしょう。
たとえば記号の5択問題があったとします。5つの短文の中から、誤ったものを1つ選ぶ問題です。A君はアを選びました。正解はエです。
「どうしてアを選んだのかな?」
「だって・・・・・」
「まさかとは思うが、『正しいもの』を選んだのではないだろうな」
「あっ!」
「それに、イ以降の選択肢を君は読んだのか?」
「・・・・・」
「今回のミスの問題点は2つある。1つ目は、問題文をきちんと読まなかったことだ。正しいものを選ぶのか、誤っているものを選ぶのか、1つだけなのか、それとも全て選ぶのか。そうした部分に線を引くのは常識だ。さらに2つ目、たとえ最初に解答が見つかったと思っても、かならず最後の選択肢まで読むのも常識だ。そうすれば、問題文を読みとばした君でも、『あれ? アが正しいけれど、イもウも正しいぞ。全て選ぶ問題だったのかな?』と疑問を抱いて、もう一度問題文を読むはずだ。そうすれば、自分が問題文を読み飛ばしていたことに気づくはずだった」
こうした注意を、何十回しても、またやらかすのです。
ミス2:漢字の書き間違い
国語の漢字テストではありません。普通の解答を書くところでやらかすのです。とくに社会がやっかいです。
八郎潟・大隈重信・鹿児島・墾田永年私財法・溥儀・比叡山・薩摩・蝦夷・井上馨・犬養毅・葛飾北斎・祇園祭・元寇・冠位十二階・五榜の掲示・元禄文化・渡辺崋山・盧溝橋事件・干鰯・民撰議院設立建白書・夏目漱石・坂本龍馬
小学校で習う1026文字には含まれていなくても、社会科ではこうした漢字が普通に使われます。
とくに、潟や墾、龍などは、間違える生徒が多いので、採点する側もことさら注意してチェックするのです。
しかし、ミスをおそれてひらがなばかりでは、減点されると考えましょう。
ミス3:記号の間違い
略地図中に、川はabcdというアルファベット小文字が、都市はアイウエというカタカナが使われています。
「該当する都市をア~カの中からそれぞれ選びなさい」となっているのに、abcdを答えるのですね。
同様のミスに、「該当する都市を下のア~カの中からそれぞれ選びなさい」となっているのに、全て漢字で都市名を書く生徒も必ずいます。しかも悲しいことに、都市名は合ってはいるのです。
ミス4:記述の文末の間違い
「理由を答えなさい」→「・・・・ので。」「・・・・から。」
「説明しなさい」→「・・・・こと。」
と書くべきところなのに、「説明しなさい」→「から。」と書く生徒が多数います。
ミス5:思い込みの間違い
「刀狩りの目的は?」
この問いなら「一揆の防止」を書けばよいですね。それなのに、「兵農分離が進んだ」と書いてしまう。
「参勤交代について説明しなさい」
これなら、「妻子を江戸に置いて人質とし、大名に領国と江戸の間を1年交代で行き来させた制度」とでも答えるべきでしょう。それなのに、「大名に金を使わせるため」と書いてしまう。
例えば国語の問題。シングルマザーのもとで育つ太郎が大介と喧嘩をした。喧嘩の原因は野球のポジションをめぐる争いだったのに、「父親のいないことを大介に馬鹿にされたから」という選択肢を選んでしまう。「太郎には父親がいない→可哀そう」という短絡思考から、勝手な妄想に入ってしまうのでしょう。
ミス6:解答欄の間違い
信じられないでしょうが、いるのです。解答欄を間違える生徒が。
おそらくは、途中でわからない問題を飛ばして空欄にするのが原因です。
しかも、入試問題の解答用紙は不親切です。間違いを誘発するためなのか?と思ってしまうほど、書きづらい解答用紙も見かけます。
これは、「空欄を残さず解く」習慣を身に着けることで防げます。たとえわからなくても何か書いてから先に進む。時間があれば、そのわからず「適当に解答欄を埋めただけ」の問題に立ち返る。
それだけでよいのです。
ミス7:謎の間違い
記号を選ぶ問題です。問題のほうには、正解のウのところに〇印がついているのです。それなのに、なぜか解答用紙にはエと答えている。
もう「謎」としか言いようがありません。
それなのに、このことを生徒に話すと、「あ、それやったことある!」と嬉しそうにしている生徒が何人もいるのです。
解決策
ありません。ミスをゼロにすることは不可能です。
しかし、少しでもミスの可能性を減らす努力はしたいですね。
それは、「たくさんミスをする」です。
そして、「そのミスの重さ」を知り、痛い目に合う。これしかありません。
「誤ったものを選ぶ」べき場面で正しいものを選んでしまった。
「なんだ、誤ったものを選ぶ問題か。それならエに決まってるよ。僕、わかってたから。ちょっと問題文を読み間違えただけで、この問題、わかってたから」
記号でウと答えるべき場面でcと答えてしまった。
「なんだ、地図が紛らわしかっただけだよ。僕、ちゃんとわかってたから。この問題は解けてるから」
ひらがなで答えるべき場面で「井伊直弼」と漢字で書いてしまった。
「なんだよ、ひらがな指定って。俺、ちゃんと漢字で書けるもんね。だからこれは間違ったとはいわないよ」
子どもは、自分の間違いを認めたくありません。完璧に知らない、わからないのならともかく、「わかってたこと」を「ちょっと間違えただけ」というミスについては、認めたくない心理が働くのです。
だから、ケアレスミスを、頭の中の「正解」「不正解」の引き出しのううち、「正解」のほうに入れてしまうのですね。
これでは、永久にケアレスミスはなくなりません。反省が無いのですから。
ケアレスミスを減らすためには、一つ一つのミスについて、「なぜやらかしてしまったのか」と原因をきちんと分析し、「これは重大なエラーだぞ!」と猛省することが大切です。
「ミスをミスと自覚する」
これがスタートラインです。