中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】ケアレスミスの7種類

子どもたちはミスをします。

それもつまらないミスを大量に。

今回は、そうしたケアレスミスを分析することで対策につなげる、という内容になります。

ミス1:問題文を読まない

「正しいものを1つ選びなさい」

「誤っているものを全て選びなさい」

「漢字で答えなさい」

「本文中の語句を用いて答えなさい」

 

こうした問題文の指示を読み落とすのです。

たぶんこれが最も多いケアレスミスでしょう。

 

たとえば、「オイルショック」を答えさせる問題があったとします。「カタカナで答えなさい」という指示があります。それなのに、「石油危機」「石油ショック」と書く生徒が必ずいるのです。

 

たとえば、「浄土真宗を開いた人物」を答えさせる問題があったとします。「ひらがなで答えなさい」という指示があります。それなのに、「親鸞」と漢字で書く生徒が必ずいるのです。この「鸞」の文字は、小学生は書ける必要がありません。しかし生徒の中には(なぜか男子生徒)、こうした難しい漢字に燃える子がいます。「俺書けるんだぜ!」と得意になって解答用紙に書いたのでしょう。

 

たとえば記号の5択問題があったとします。5つの短文の中から、誤ったものを1つ選ぶ問題です。A君はアを選びました。正解はエです。

「どうしてアを選んだのかな?」

「だって・・・・・」

「まさかとは思うが、『正しいもの』を選んだのではないだろうな」

「あっ!」

「それに、イ以降の選択肢を君は読んだのか?」

「・・・・・」

「今回のミスの問題点は2つある。1つ目は、問題文をきちんと読まなかったことだ。正しいものを選ぶのか、誤っているものを選ぶのか、1つだけなのか、それとも全て選ぶのか。そうした部分に線を引くのは常識だ。さらに2つ目、たとえ最初に解答が見つかったと思っても、かならず最後の選択肢まで読むのも常識だ。そうすれば、問題文を読みとばした君でも、『あれ? アが正しいけれど、イもウも正しいぞ。全て選ぶ問題だったのかな?』と疑問を抱いて、もう一度問題文を読むはずだ。そうすれば、自分が問題文を読み飛ばしていたことに気づくはずだった」

 

こうした注意を、何十回しても、またやらかすのです。

 

ミス2:漢字の書き間違い

国語の漢字テストではありません。普通の解答を書くところでやらかすのです。とくに社会がやっかいです。

八郎・大重信・鹿児島・田永年私財法・儀・比山・摩・蝦夷・井上・犬養北斎園祭・元位十二階・五掲示・元文化・渡辺山・溝橋事件・干・民議院設立建白書・夏目石・坂本

小学校で習う1026文字には含まれていなくても、社会科ではこうした漢字が普通に使われます。

とくに、潟や墾、龍などは、間違える生徒が多いので、採点する側もことさら注意してチェックするのです。

 

しかし、ミスをおそれてひらがなばかりでは、減点されると考えましょう。

 

ミス3:記号の間違い

略地図中に、川はabcdというアルファベット小文字が、都市はアイウエというカタカナが使われています。

「該当する都市をア~カの中からそれぞれ選びなさい」となっているのに、abcdを答えるのですね。

同様のミスに、「該当する都市を下のア~カの中からそれぞれ選びなさい」となっているのに、全て漢字で都市名を書く生徒も必ずいます。しかも悲しいことに、都市名は合ってはいるのです。

 

ミス4:記述の文末の間違い

「理由を答えなさい」→「・・・・ので。」「・・・・から。」

「説明しなさい」→「・・・・こと。」

と書くべきところなのに、「説明しなさい」→「から。」と書く生徒が多数います。

 

ミス5:思い込みの間違い

「刀狩りの目的は?」

この問いなら「一揆の防止」を書けばよいですね。それなのに、「兵農分離が進んだ」と書いてしまう。

「参勤交代について説明しなさい」

これなら、「妻子を江戸に置いて人質とし、大名に領国と江戸の間を1年交代で行き来させた制度」とでも答えるべきでしょう。それなのに、「大名に金を使わせるため」と書いてしまう。

 

例えば国語の問題。シングルマザーのもとで育つ太郎が大介と喧嘩をした。喧嘩の原因は野球のポジションをめぐる争いだったのに、「父親のいないことを大介に馬鹿にされたから」という選択肢を選んでしまう。「太郎には父親がいない→可哀そう」という短絡思考から、勝手な妄想に入ってしまうのでしょう。

 

ミス6:解答欄の間違い

信じられないでしょうが、いるのです。解答欄を間違える生徒が。

おそらくは、途中でわからない問題を飛ばして空欄にするのが原因です。

しかも、入試問題の解答用紙は不親切です。間違いを誘発するためなのか?と思ってしまうほど、書きづらい解答用紙も見かけます。

これは、「空欄を残さず解く」習慣を身に着けることで防げます。たとえわからなくても何か書いてから先に進む。時間があれば、そのわからず「適当に解答欄を埋めただけ」の問題に立ち返る。

それだけでよいのです。

 

ミス7:謎の間違い

記号を選ぶ問題です。問題のほうには、正解のウのところに〇印がついているのです。それなのに、なぜか解答用紙にはエと答えている。

もう「謎」としか言いようがありません。

それなのに、このことを生徒に話すと、「あ、それやったことある!」と嬉しそうにしている生徒が何人もいるのです。

 

解決策

ありません。ミスをゼロにすることは不可能です。

しかし、少しでもミスの可能性を減らす努力はしたいですね。

それは、「たくさんミスをする」です。

そして、「そのミスの重さ」を知り、痛い目に合う。これしかありません。

 

「誤ったものを選ぶ」べき場面で正しいものを選んでしまった。

「なんだ、誤ったものを選ぶ問題か。それならエに決まってるよ。僕、わかってたから。ちょっと問題文を読み間違えただけで、この問題、わかってたから」

 

記号でウと答えるべき場面でcと答えてしまった。

「なんだ、地図が紛らわしかっただけだよ。僕、ちゃんとわかってたから。この問題は解けてるから」

 

ひらがなで答えるべき場面で「井伊直弼」と漢字で書いてしまった。

「なんだよ、ひらがな指定って。俺、ちゃんと漢字で書けるもんね。だからこれは間違ったとはいわないよ」

 

子どもは、自分の間違いを認めたくありません。完璧に知らない、わからないのならともかく、「わかってたこと」を「ちょっと間違えただけ」というミスについては、認めたくない心理が働くのです。

 

だから、ケアレスミスを、頭の中の「正解」「不正解」の引き出しのううち、「正解」のほうに入れてしまうのですね。

 

これでは、永久にケアレスミスはなくなりません。反省が無いのですから。

 

ケアレスミスを減らすためには、一つ一つのミスについて、「なぜやらかしてしまったのか」と原因をきちんと分析し、「これは重大なエラーだぞ!」と猛省することが大切です。

 

「ミスをミスと自覚する」

 

これがスタートラインです。