いよいよ新6年生の学習がスタートしました。
お通いの塾でも、新年度の授業が始まったことと思います。
今回は、私がいつも新6年生にする話を書いてみます。
実はあと1年ではない
「実はあと1年ではないんだ」
私がこう話し始めると、必ずこう返す子どもたちがいます。
「そうだよ! 1年マイナス12日だよ!(2/12に話をした場合)」
正確さにこだわるのは悪いことではありませんが、私の言いたいことはそこではありません。そこで、こう話を続けます。
「1年は12か月だね。そこで、12か月を6で割ってごらん。2か月になるね」
「何で6で割るの?」
「みんなは、算数・国語・理科・社会、それぞれ同じ時間をかけて勉強しているかな?」
まあほとんどの生徒は、自分の学習時間など把握してはいません。それでも生徒たちの意見をまとめると、少なくとも算数と国語は、理科・社会の2倍以上は勉強していることが見えてきます。
「もし、今から算数だけ4か月間勉強すると考えよう。もちろん小学校にも通いながらだ。次の4か月間は国語だけ、そして2か月間は理科だけ、2か月間は社会だけ、そうして全部合わせると12か月になる」
察しの良い子なら、私が何を言わんとしているかを察知して、深刻そうな顔になります。
「今から算数だけ4か月やったとして、4か月後に入試問題で満点が取れるかな? 過去問演習だって全くやってないよね。それも含めて4か月間だ。 今から社会科だけ2か月間やったとして、2か月後に入試問題が解けるかな? まだ歴史だって十分にわかっていない。地理はだいぶ忘れた。公民は全く手をつけていない。それに過去問演習だって何もやっていない。それらすべてを2か月間でできるだろうか?」
生徒は皆首を横に振っています。
「でも、それらを全部やらないといけないんだ。凝縮すれば、算国で4か月ずつ、理社で2か月ずつしかかけられる時間はない。それを、少しずつ科目を変えながら12か月間で学ぶ。残り1年という言葉の意味は、そういうことだ。」
1年という残り時間は、我々大人にとってみればあっという間です。しかし、まだ11年程度の時間しか生きていない子供たちにとっては、1年は無限の時間です。
この1年を、無限の時間ではなく、有限の、それもとても短い時間だということを認識するところから、受験学年が始まるのです。
今日が2026年の1月31日だとしたら
「ちょっと想像してみようか。もし、今日が来年の、つまり2026年の1月31日だとしたらどうだろう?」
生徒たちは、また私がおかしなことを言い始めたぞ、そういう顔をしています。
「明日は、2月1日、入試本番の日だ。今日はその前日なんだ。そんな日に、無駄に過ごす時間はあるかな? 無駄に過ごす余裕はあるかな?」
皆首を横に振っています。
「割合の計算はまだ苦手だ。漢字ももう一度おさらいしておきたい。水溶液の濃度計算も自信がない。社会科の年代もきちんと覚えてはいない。あれもまだ、これも足りない、そうした思いでいっぱいになりながら、必死に机にしがみついて勉強するはずだね。でも、明日の本番に備えて、今日は早く寝なくてはならない。刻一刻と時間は過ぎていく。そうした日に、ぼんやりとしたり、意味もなく冷蔵庫を開けてみたり、ちょっと寝転がってゲームをしてみたり、そんな余裕があるだろうか?」
さすがに全員の目が真剣になります。
「そうした1月31日の1時間と、今日の1時間は、実は全く同じ1時間だ。この1時間でやれる勉強の量は全く同じだ。1月31日の1時間を無駄にできないのなら、どうして今日の1時間は無駄に捨てることができるのだろう。今日が入試前日のつもりで勉強してみたらどうだろう。そうした日々を重ねることが大切だね」
本人の自覚
私は精神論が大嫌いです。
「気合」「根性」「やる気」
こんな要素は勉強に不要です。
ここで私がお話ししたいのは、いかに時間の無駄をなくすのか、ということなのです。
受験生全員の持ち時間は同じです。その持ち時間を、どれだけ無駄をそぎ落とし、有効に活用するのか、それが最重要だと考えています。
そのためには、まず子ども本人が、残りの時間をきちんと自覚する必要があります。
その上で、今の自分に足りないものを自分で把握しなくてはなりません。
そこで初めて、現在やらなければならない勉強が見えてきます。
しかし、何せ相手は子どもです。
私が上記のような話をしたとして、その瞬間だけは納得していますが、まあ1日ももちません。
それでも、今どのような時間の使い方をしなければならないのか、そしてそれは何故なのか。それをきちんと一度は話しておく必要があると考えています。
「ゲームは1日30分までって決められてるんだ」
「テレビばかり見るなって怒られる」
そんな不満そうな声を生徒から聞くと、がっかりします。
まだゲームを与えている。まだテレビを見せている。
余裕ですね。
今回のお話は、実は受験生の親であるみなさんに向けてのメッセージです。
気持ちの余裕はとても大切ですが、時間の余裕はあってはいけません。
時間をタイトにコントロールし、無駄な時間をそぎ落とすことが重要です。
そのことの意味は、来年の1月31日になってみるとわかります。
それでは手遅れです。
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