中高一貫校への進学、おめでとうございます。
これで親子ともほっと一息つけますね。
のはずなのに。
もう塾を探すのですか?
ちょっと冷静になりましょう。
中高一貫校生に塾は必要か?
結論から先に言いましょう。
不要です。
進学した学校の先生方に相談してみてください。
全員が口をそろえて言うはずです。
「学校の勉強だけで十分です!」
それでもなお塾を探すのはなぜでしょう?
塾に行く理由
(1)みんな行くから
おそらく最も多い理由はこれでしょうね。
周囲がみな行くので焦るのです。
ただ、よく考えてみてください。この「皆」というのは、どこから出た情報ですか?
確かな数字ですか?
おそらくは、中学校側もそんなデータは持っていないはずです。
塾が出すデータなど信憑性ゼロです。
私も知りません。
「知り合いの〇〇さんも塾に行くっていうから」
「ネット掲示板を見たから」
「〇〇中学はみな△△塾に通うって聞いたから」
こんな曖昧な情報(情報とすら呼べない)を根拠として、塾に行くのですか?
(2)塾に行くのが当たり前だから
犯人は受験産業です。
すいません、私もその一人です。
たしかに、中学受験は塾の役割は大きいものでした。
(本当は塾が無くても受験で成功できるのですが)
理由は簡単です。
小学校の学習だけでは中学受験をするには不十分すぎたからです。
そこで、みなさん受験塾に通いました。
週4日~5日、夜9時すぎまで塾にいる生活でしたね。
だから、「勉強をする=塾に行く」と刷り込まれてしまったのです。
中学校は4時くらいには終了します。部活がなければ、6時前には家に帰れるでしょう。
この生活リズムが不安なのですね。
だから、とにかく塾に夜まで通おうとするのでしょう。
一度冷静になり、塾の「呪縛」から離れてみましょう。
中高一貫校生が塾に行くのは、決して「当たり前」ではないのです。
(3)学校の勉強だけでは不十分だから
これは正当な理由です。
学校の勉強だけでは物足りないのですね。だから塾に通う。
でも、まだ学校の勉強は始まってません。
今からどうして「学校の勉強だけでは物足りない」と判断できるのですか?
そもそも、進学する中学校は、お子さんの実力に対応した学校のはずです。
同じくらいの成績の生徒が集まっています。
学校の授業では物足りない、学校の先生のレベルが低すぎる、そう考えるのはおかしいはずです。
唯一の例外として、いわゆる「青天井」の学校があります。例えば開成。優秀な生徒たちが集結していますが、たまに「規格外」に優秀な生徒もいます。ギフテッドレベルの天才です。開成の授業では物足りない、その場合ならわかりますが。
最初の定期テストで全科目満点を取ってから考えるべきですね。
(4)学校の勉強についていけないから
ああ、これはわかります。
もう落ちこぼれてしまったのですね。
でも、残念ながら、あなたを救う塾はありません。
集団指導塾では、特定の学校の授業内容をフォローするカリキュラムなど存在しないからです。
唯一あるとすれば、家庭教師でしょう。それも優秀な。
しかし、まだ授業が始まる前のこの段階で考えることではありませんね。
(5)早く入塾しないと席が埋まるから
これは完全に受験産業の脅し文句に脅されていますね。
「土曜クラスはすぐに埋まるから手続きを急いでください」
「今なら〇〇中学の生徒は無試験で入れます」
「東大に向けてのスタートは今からなのです」
塾だって商売ですから、あの手この手で優秀な生徒をかき集めようと必死です。
そんなものに踊らされる必要はありません。
こうして必死で「青田買い」をした塾では、踊らされて入塾した生徒が途中で抜けていくのが通例です。席などいつだって空いているのです。
それに、もし席がふさがっていたとしても、それがどうした?
別にその塾でなければならない理由なんてないのです。
塾なんて山ほどあります。予備校もあります。必要になったときにじっくり選べばそれで済む話です。
(6)英語だけは強化したいから
これも、学校の英語の授業がスタートしてみないと、本当に必要かどうかの判断はできません。多くの私立では、英語は相当力を入れて授業が組み立てられていますので。普通は物足りなくはないと思います。それでもなお、塾が必要だと判断するのなら別です。
◆アメリカの大学に進学したいので、TOEFLiBTのスコアが最低でも100必要だから
◆学校は多読中心で文法を教えてくれないのは、上の子の時に身に染みてわかったから
◆学校の授業だけではどうしてもディベート力が不足するから
こうした明確な判断基準がある場合だけでしょうね。
★業界の闇
怖いお話をしましょう。
私がこの業界に入りたてのころのお話です。
指導していた生徒が無事に受験が終了し、お母さまがご挨拶にいらっしゃるとき、よく相談されたのです。
「先生、塾はどこがいいですか?」
「もう塾に通うのですか?」
「ええ、みんな中1から通うって聞いたので」
(どこの誰から聞いたんだ?)
「本人が行きたがってるのですか?」
「いや、本人はもう塾は嫌だって言ってます」
(そりゃそうだろう)
「まだ行く必要はないですよ。せっかく勝ち取った合格ですから、本人の意思を尊重しましょう。少しはのんびりさせてあげてください。新しい友人もできますし、クラブ活動だって始まります。その上で、まずは中学校の勉強にどっぷりと浸かるのが大切です。学校の授業に全力集中し、小テストや定期テストで満点を目指しましょう。そうして、学校の勉強だけでは物足りなくて、もっと勉強したいと思ってから検討すればいいのです」
このように、至極当たり前のことをお話していたのですね。
ところがある時、そうしたお母さまと、その塾の経営者の教師が話しているのを隣で聞いてしまったのです。
「塾長先生、いろいろお世話になりました」
「〇〇君は頑張りましたからね。ところで、塾はもう決めましたか?」
「えっ! 塾に行かないとだめなのですか?」
「当たり前です。あの中学の生徒のほとんどは、中1になる前から塾に行っていますよ」
「そうなんですか・・・」
「スタートダッシュが肝心です。医学部目指していましたよね」
「ええ。まあ本人がその気になったら、の話ですが。まだまだ先の話ですし」
「それだったらなおさら、早くから塾に行かないとダメですね。△△塾なら、あの学校の生徒も大勢通ってますし、お薦めです」
こう言って、△△塾を強力に薦めていたのです。
隣で聞いていた私は目が点になりました。
この塾長、鬼だな。○○君もかわいそうに。
さて、話はこれで終わりません。
この塾を離れてから何年もしてから、私は知ったのです。
例の鬼塾長、実は△△塾の出資者だったのです。
全ての塾・教師がこんな人間ばかりだとは申しませんが、こうした闇があることも知っておくべきでしょう。
こちらにも詳細に書きました。ぜひお読みください。