中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【学校研究】市川中高について

今回は、千葉の市川中学校・高等学校について書いてみます。

 

※この学校を持ち上げる意図も貶める意図もありません。なるべくフラットな視点を心がけますが、どうしても私の主観が出てしまうことはご容赦ください。

 

沿革と理念

 

いつものように、公式HPから学校の歴史を見てみましょう。

 

1937    市川中学校を開校

2001     ニュージーランド「ジョン・マクグラッシャン・カレッジ校」と姉妹校締結     
2003   市川中学校共学化     
2006   市川高等学校共学化     
2010    ニュージーランド「セント・ヒルダ・カレッジ校」と姉妹校締結     
2012    英国ケンブリッジ大学研修開始     
2013    英国オックスフォード大学研修開始     
         中3シンガポール修学旅行開始     
2016    英国イートン・カレッジ  サマースクール開始     
2017     ボストン・ダートマスカレッジ研修開始     
2023    シンガポール研修開始     
    

創立者の古賀米吉氏は、苦学した後学校教育を務めていた人物です。イギリス留学中に、イートン校の教育に感銘を受けて、後の市川中学校設立につながりました。

教育理念にもそれが反映しています。

 

建学の精神

「独自無双の人間観」
人はかけがえのない唯一無二の尊い存在であり、それぞれが素晴らしい個性や可能性を持っている。

「よく見れば精神」
生徒一人ひとりの持ち味を見極め、引き出し、開発・進展させる。

「第三教育」
本校では家庭教育、学校教育をそれぞれ「第一教育」「第二教育」とし、それに並行して自ら学ぶ自分自身による教育を「第三教育」としている。生涯にわたり学びを続ける能力を育む「第三教育」を教育の主眼とする。

 

また、積極的に海外の学校と姉妹校となったり、海外研修を実施しているところも、建学精神の延長線上にあるのでしょう。

 

環境

残念ながら最寄り駅から歩くのは遠すぎます。バスでの通学となります。

京成「鬼越駅」より徒歩20~25分(1.7km)
JR・都営地下鉄新宿線本八幡駅」よりバス11分
JR「市川大野駅」よりバス11分
JR「西船橋駅」より直行バス20分(登下校時のみ運行)

西船・本八幡を利用する生徒が多そうですね。

西船橋駅と学校のちょうど中間には、「中山競馬場」があります。以前、西船橋駅前で、普通のタクシーのドライバーが、「競馬場、競馬場!」と大声を出して、複数の乗客を募っている光景に驚いたことがあります。タクシーの乗合営業は違法だったはず。今でもやっているのかな?

郊外立地のため、校地面積は2.8万㎢と余裕があります。

校内の総合グラウンドに加え、300mほど離れたところにもグラウンドを所有しています。このあたりは、さすが元男子校といったところですね。

 

生徒数

中学校は320名の募集で、高校からは90名の募集となっています。

生徒数

高校になると1学年400名以上と、なかなかのマンモス校です。また、女子の割合が37%程度ですので、まだまだ男子校の名残があるのかもしれません。

 

また、千葉から通う生徒が965名、東京から通う生徒が261名となっています。東京でも江戸川・葛飾江東区といった城東・城北エリアからの通学が多いのはうなずけますが、横浜市川崎市からも4名通っているのが驚きです。通学大変そう。

 

 

 

大学実績

東大・千葉大実績推移

 

早慶実績推移

大学実績としては、東大と千葉大、そして早慶をグラフ化しました。

年度による変化を追うと非常に見づらくなるので、5年の移動平均をとっています。

これを見ると、2010年前後からの躍進が目覚ましいですね。

これは明らかに共学化が成功したとみるべきでしょう。県内および東京の東北よりの優秀な生徒が集まってきたのが主因だと思います。もちろん学校側の努力もあったことでしょう。

早慶についても、右肩上がりで伸びています。

 

感想

 

1986年に渋谷幕張が中学募集を始めました。

それまで千葉および東京の千葉よりの優秀な受験生は、市川と東邦大東邦に出願するのが普通でした。

入試難易度は、東邦大東邦>市川となっていました。

1月の市川中の入試日には、千葉と東京の受験生が、大挙して集結したのを覚えています。今ほど1月の受験校の選択肢が多くなく、神奈川エリアからも多くの受験生が「お試し受験」として集まりました。

開成や駒東等の都内難関校を第一志望としている生徒たちも多く受験していましたね。

とくに、男子校志向の生徒にとっては東邦大東邦が選択肢とならなかったのです。

しかし、渋谷幕張が人気を集めるのと対照的に、東邦大東邦と市川の人気がなくなってきたと思います。とくに市川は、共学人気のあおりをうけたのか、保護者からも「まず渋幕にチャレンジして、それから東京の受験」といった声をよく聞くようになりました。

ここで市川は思い切った路線変更に踏み切ります。

共学化です。

2003年から、共学校へと生まれ変わりました。

それが大きなターニングポイントになったと私は思っているのですが、渋幕のあまりの人気ぶりと難化を敬遠する受験生が、市川も志望校とするようになったようです。

もちろん学校の努力もありました。

今では、渋幕・東邦大東邦・市川の3校から、成績・通いやすさ・好みに応じて志望するようになったと思います。

 

今は幕張メッセでの大規模入試が話題として報道されることが多いですね。ただし、この受験はやはり独特の雰囲気ですので、2月の東京・神奈川の受験の直前の「お試し」受験としてはお薦めできかねます。やはり学校の教室で実施される入試のほうが予行演習になりますので。

もちろん、合格したら入学手続きをして「進学」する意図があるのなら話は別ですが。

 

◆お試し1月校受験について

 古いスタイルの受験指導をする塾の先生は、「1月に予行演習としてのお試し受験は必須」といった指導をしていますね。中には、いくつもの学校の「お試し」受験をさせる塾まであります。

しかし、この「お試し受験」は、はっきりいって不要です。

インフルエンザ・コロナ等の感染リスクと天秤にかけた場合、そのリスクを冒す価値が無いからです。

合格したら通う意図が無いのなら、無理してまで受験する必要はないでしょう。