中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】直前の謎の行動について

いよいよ受験が迫ってきました。

1月校の結果も出始めている時期です。

しかし、こんな時期なのに、わが子が謎の行動をとりはじめたのです。

今回はそうしたケースを紹介します。

※プライバシー保護の観点から、当事者が読んでも気づかぬレベルまで設定を変えていますが、実話です。

 

ゲームのコントローラーにしがみついていた子

 

難関校を受験する予定の子でした。

母親から泣きながら電話がかかってきたのは、1月31日です。

子どもが、ゲームにしがみついているというのです。

ゲームのやり過ぎで、コントローラーを操作する指の腹から血を流しながら、それでもなおやり続けているというのです。

 

もともと子どもに甘い母でした。ゲームだって、何度も取り上げるようアドバイスしたのですが、結局そうはできなかった。そのツケが最後に噴出したとしか思えません。

この状況に対して、私からできることは何もありません。母親を慰めるくらいです。

 

原因はよくわかります。

現実逃避をしているのです。

大人だってそうですね。締め切りが迫っている仕事があるのに、つい本に読みふけってしまったり。大掃除を始めたものの、気が付けば昔のアルバムに見入っていたり。

子どもにとって、中学受験というのは、一人では立ち向かえないほどの壁なのです。

そこで逃げ出そうとする心理が働いているとしか思えません。

 

ユーチューブにはまった子

 

受験直前1週間になって、子どもが親に隠れて夜中までユーチューブを見ていることが発覚しました。

親としても、情けなくって涙がこぼれます。

両親とも腫れ物に触るようにして子どもに気を遣い、弟の遊びも我慢させ、勉強に向かう環境を作ってきたのに。

 

これも現実逃避ですね。

 

急に余裕を見せ始めた子

 

「多分受かると思うよ」

「今さら慌ててやっても無駄だから。それは勉強ができないやつだけだよ。俺は違うし」

いったい何を根拠にしているのかわっぱりわかりませんが、そんな余裕を見せ始めたのです。

 

これは虚勢です。

余裕なんかあるはずもないのですから。

 

急に机にしがみついた子

 

今まではいくら注意をしても集中して勉強できなかったのに、試験まであとわずかとなったら、急に机にしがみつくようになりました。

風呂や食事の声をかけても、耳に届いていないようです。

「うちの子もやっと受験生の自覚が芽生えた」と喜ぶ前に、いったいどんな勉強をどれくらいの量、どれくらいの時間をかけてやっているのかチェックしてみてください。

 

効率の悪い勉強、今さらやる必要のない勉強をやっている可能性は高いです。

 

明かにこれは、必死に勉強した自分を演出しているだけです。

入試結果が思わしくなったときの、自分と周囲への言い訳の準備です。

 

受験をしないと暴れ出した子

 

親に受験させられている、勉強を強制させられている、自分は本当は友達といっしょに地元の公立中に進学したかった。

もう受験はしない!

いきなりこんなことを言って暴れ始めるのです。

 

不合格の恐怖が大きくなりすぎたのでしょう。

 

それまで親に逆らうこともなく、優等生的な勉強をしていた子だけに、親も驚きます。

子どもとしても、「いい子」であることに限界が見えているのです。

 

対応

 

本当は、そんな行動になる前に何とかするべきでした。

子どもが気軽になんでも親に打ち明ける親子関係があればよかったのです。

今となっては、できることはほとんどありません。

 

◆完全スルーした

 子どもが謎の行動をとる理由は、明らかに親に対する何らかのアピールに他なりません。

それをいちいち取り合ってはいられない。全てをスルーした方もいましたね。

それでうまくいくかどうかは、何ともいえません。アピールを無視されて余計に悪化するのか、アピールの無駄をさとってあきらめるのか。

 ただし、親が巌のごとき不動の態度を示すのは悪くありません。子どもの不安を鎮めるのには一番です。

 

◆温泉に行った

 近所の日帰り温浴施設で親子で半日過ごした方もいました。もう脳みそが溶けるくらい、ゆったりとお湯につかったそうです。

究極の気分転換ですね。

これを楽しめる心の余裕が親にあればうまくいくかもしれません。それがないと、子どもの焦りが加速するだけです。

 

◆第五志望を第一志望にした

 受験戦略の中で、いわゆる「押さえ」の学校として、第五志望の学校がありました。子どもの実力からいえば不合格になることはまずないだろうというレベルの学校です。本当に万が一のための「控え」の学校だったのです。

 この学校を、「第一志望」であると宣言したのです。

「〇〇中(第一志望)も△△中(第二志望)も素敵な学校だけれど、★★中(第五志望)のほうがよい学校だと最近思うよ。もうここに進学できたら最高じゃない! それでお母さんもお父さんも満足できるよ。きっとあなたも素敵な中高生活を送れる学校だから。いちおう〇〇中と△△中はせっかく出願したから受験してもらうけど、★★中に合格できたら大成功だね!」

 

 表面的なお芝居なら子どもに見抜かれます。両親が本気でそう思うことで、子どもの無駄な力みと葛藤が軽減されるのです。

 

◆日常をただ静かにおくる

常日頃と何等か変わらぬ日常をただ過ごすだけです。

どうせ放っておいても受験日はやってきます。

今さらうろたえても意味はありません。

まず親がその境地に到達し、普通に過ごします。

やがて子どもにもその境地が少しだけ伝染するかもしれません。