以前は、中学受験が終わってしばらくした、3月から4月くらいによくご相談を受けていたのです。
「〇〇中学なら、みなさんどんな塾に通っているのでしょう?」
「そろそろ塾に行かせようと思うのですが、おすすめの塾を教えてください」
しかし、まだ入試も終わっていない1月なのに、もうご相談を受けるようになったのですね。
そこで、今回は、「中高一貫校生の塾に行くタイミング」について書きたいと思います。
煽ってくる塾
塾だって商売ですから、早い段階から生徒の確保に必死です。
それは、黙っていても生徒が集まる人気塾でも同様です。
「中学合格おめでとうございます。しかし,中学入学はそれ自体がゴールなのではありません。有名進学校から東大に現役合格しているのは卒業生の2,3割に満たず,一流中学校に合格したからといって決して安心することはできません。大学受験の準備は早ければ早いほど有利となります。中学への入学は,6年後の大学入試に向けてのスタートの時でもあるという認識が重要です。」
これは、東大実績で有名な「鉄緑会」のチラシの文言です。
タイトルには、「合格おめでとう 次は東大!」と大書されていました。
煽ってきますね。
「☆オープンコースは例年早い時期に定員に達し,募集が締め切りとなりますのでご注意ください。
指定校進学予定者 …… 選抜試験なしでオープンコースに入会できます。
指定校合格者(かつ進学予定者)は,中1の4月期の入会に限り,指定校合格がオープンコース合格に相当するものと見なし,選抜試験が免除となります。電話にてご予約いただき籍を確保されたうえで,入会金 25,000 円を指定口座までお振り込みください。予約が定員に達し次第締切ります。」
こうも書かれています。
これは焦らされますね。
この塾の「指定校」とは、以下の15校で、これだけの人数が在籍しているそうです。
これらの「指定校」に進学する生徒にとっては、優越感をくすぐられますよね。そして、塾としても、優秀な生徒を早くから囲い込めるのですから、実にうまい戦略です。
さらに、これらの「指定校」以外の学校に進学する生徒は、選抜試験に合格しなければなりません。その選抜試験の日程は、1月最終週から2月にかけての土日に設定され、1回しか受験できないことになっています。
こうなると、「指定校」以外の生徒も焦りますね。
なにせ「指定校」進学者が早い段階から席を埋めていくのですから、少しでも早く合格しないといけない焦りに駆られるのは当然です。
さらに、塾の新中1対象の説明会が、1月末から2月にかけて実施されます。
おそらく1月の実施は、千葉・埼玉方面の生徒を対象としているのでしょうが、2月の入試直後からもう塾の説明会があるのです。
2月3日の説明会ということは、開成の合格発表を見たその足で説明会に行くということなのでしょうか。
誤解なきよう言っておくと、私はこの塾を揶揄するつもりはありません。東大の実績は他塾を寄せ付けないものであり、いくら優秀な生徒を集めたからといって出るものではないからです。
営業戦略も見事なものだと感心しています。
ただ、煽り方がえげつないとは思っています。
他にも中高一貫校生が多く通う、SEGを見てみましょう。
こちらは、新中1から囲い込む煽りの文言は見当たりません。
ここもHPに高校別在籍者数を公表しています。
こんなかんじで7名在籍の学芸大小金井まで101校紹介されていました。
延人数というのがよくわかりませんが、たぶん2科目受講者を2名とカウントしている数字でしょう。
あれ、鉄緑会の数字はどっちなんだろう? 鉄緑会も、英語だけ、数学だけ、そして両方、そういった取り方ができるのです。もしかして延人数を在籍者数としているのかも?
実は以前から疑問に思ってはいたのです。鉄緑会の公表している高校別在籍者数を各学校の生徒数で割って鉄緑会在籍率を計算すると、例えば桜蔭は64%、筑駒は70%となるのです。さすがというべきか、異常というべきか。
もっとも検証のしようもありませんので、私の邪推かもしれません。
SEGの学年別の数字、これも、地味に煽られますね。
「ほら、あなたの学年でもこんなに通ってるじゃない!」
「うん」
「誰が通ってるの?」
「そんなのわかんないよ」
「A君とかB君じゃないの?」
「いや、あいつらはたぶん鉄だったと思う」
「それじゃあC君かしら?」
「だからわかんないって」
「そろそろ通ったら?」
「いいよ、まだ。先生も塾には行く必要はないって言ってるし」
「でも、結局みんな通ってるじゃないの」
よくわかりませんが、こんなかんじでしょうか。
私が言うべきことではありませんが、冷静になりましょう。
塾に通わないと合格できない
これは、中学受験塾が作り出した虚構です。
その勢いのまま、中高一貫校に入ってすぐの塾探しを焦る前に、考えることがあると思います。
次に、どんな生徒がどのタイミングで通うとよいのか、場合分けします。
中1の4月から通う
正直言って、まったくお勧めしたくありません。
それでもどうしても通いたい場合は、以下に当てはまるかお考えください。
(1)進学予定の中高の学習がぬるすぎる場合
カリキュラムも授業内容もぬるすぎて不十分な場合です。その場合は、最初から塾ありきで考える必要があります。
しかし、そんな私立はありません。あるとすれば、進学した生徒のレベルが低すぎ、学校の授業がそこに合わせているケースでしょうか。
そもそも授業も始まっていないか始まったばかりのタイミングで、そのジャッジはできないですね。
(2)進学予定の中高の学習が難しすぎる場合
学校の授業についていけない場合です。しかしその判断は4月には不可能です。
(3)英語が吹きこぼれている場合
すでに英検準1級を持っているのに、中学校で取り出し授業が無い。これはわかります。英語初習の生徒と同じ授業はつらいですね。英語のみ、どこかに通うというのはありでしょう。
(4)学校の授業はどうでもよい場合
東大に合格するためには、学校の授業は捨てる覚悟です。いったい何のために受験したのかわかりません。
(5)学校では学べないものが塾にある場合
具体的な例が思い浮かびません。芸大受験のためにデッサンを学ぶ、といったケースでしょうか。
(6)男子校(女子校)なので、異性との出会いを求める場合
意味不明です。そんな生徒はさすがに中1にはいません。中3くらいになると、塾での出会いもあるようですが、それを目的にするお馬鹿さんはいません。
中1の夏から通う
(1)定期試験がピンチの場合
1学期の初めての定期試験がひどかったのです。
「夏期講習に通いなさい!」と親が怒りました。
しかし、これもやめたほうが良いと思います。私立中学の独自のカリキュラムに完全に合わせた塾は無いからです。かえって傷口が広がります。まずは学校の担当の先生に相談して、夏の間の学習を自分で組み立てるのが先決でしょう。
(2)学校の授業に余裕がある場合
まだ中1の前期ですから、余裕があるのは当たり前です。それでも、もっといろいろ勉強したくなった。だから夏期講習に行きたい。
本人がそう自分で言い出したのなら、行かせてもよいでしょう。
ただし、「夏から」ではなく、「まず夏期講習だけ」が正解です。
中1の後半あたりから、とくに数学の加速が学校で始まるからです。
中2・3から通う
(1)学校の授業が物足りない場合
1・2年間通ってみて、学校の授業では物足りなさすぎる場合です。軽く流しているのに、定期試験で満点ばかり。先生の指導もつまらない。そんな生徒、実は稀ですね。たまに、マニアックな数学を求めたり、海外大学進学を目指して英語を学びたかったり、そうした子はいます。
(2)学校の授業についていけない場合
そろそろ落ちこぼれかかっています。
なんとかしなくちゃ!
そこで塾に通うのはお薦めできません。
学校の進度と塾のカリキュラムは合わないからです。
個別指導や家庭教師、それも優秀な指導者を見つけられれば良いかもしれません。
一般の集団指導塾は避けましょう。
高1から通う
このあたりで塾に通い始める生徒が多そうですね。
学校によって異なっていたカリキュラムも、少しずつそろうようになりました。
最終ゴールは同じですので、徐々に同じようなカリキュラムになってくるのですね。
どの学校でも、一般の高校1年~2年くらいの内容は終了しています。
本人にも、行きたい学校や学部が少しずつ見えてきました。
そのためには、英語(数学)の強化をしたいと考えています。
そこで、1科目だけ塾に通うことにしよう。
これは正解です。
ただし、必ず通わなければならないという意味ではありません。
自分で自己分析ができていて、きちんと塾情報も得ていて、その上での判断であるのなら、という意味です。
本当に学校の勉強だけでは不足しているのか、きちんと判断する必要があります。
結論
◆皆が通っているから
この理由での塾通いは絶対にやめましょう。
人は人、自分は自分。学力も能力も家庭方針も住んでいる場所も目標も違うのですから。
学校の勉強は完璧にできている
目標も明確になっている
無理なく通える距離・時間
以上3点が中高一貫校生が塾に通うための必要条件です。
こちらの記事も参考にどうぞpeter-lws.hateblo.jp