別学か共学か。
世間では、この2択に関し、様々な声があるようです。
「今や時代は共学! 別学なんて前世紀の遺物!」
「欧米では共学が当たり前」
「異性を気にせず勉強できるから別学に限る」
今回は、そうした議論に終止符を打つつもりです。
- 異性との付き合い方を学べるから共学
- 別学では異性との付き合いが学べない
- 異性の目がない環境のほうがのびのびとできる
- 恋愛を意識しないほうが勉強に集中できる
- 中高6年間は社会に出る準備期間
- 別学出身の親は子どもを共学に入れたがる
- 人は自分の経験から逃れられない
- 学校数がそもそも違う
- 結論
異性との付き合い方を学べるから共学
共学推しの方からよく出る論調です。
「男女は半数ずついるのに、同性とだけ6年間過ごすなんて異常! 異性との接し方を学べないから、大学生になってから苦労する。やっぱり異性と過ごす当たり前の環境でないとね」
こんな感じでしょうか。
2020年の国勢調査によると、生涯未婚率は、男性が28.3%、女性が17.8%となっています。この男女差がとても気になりますね。
私の憶測では、
◆男性のほうが結婚年齢が遅いため、50歳を超えてから結婚する男性がカウントされていない(この調査は、50歳時点での未婚率を生涯未婚率とみなしているのです)
◆女性のほうが男性より結婚願望が強い
◆男女の賃金格差を反映している
◆女性のほうが売り手市場である
おそらくは、これらが複合しているのでしょう。
さて、この未婚率を共学・別学で分けた統計調査があればとてもおもしろかったのですが、さすがにそんな調査は存在しません。
とある結婚相談所のデータによると、結婚したくない人の割合・周囲で結婚していない人の割合・異性との経験が無い人の割合、これらが、出身校別に、共学≧女子校>男子校 となっていました。
なんとなく納得できるようなできないような。
もっとも、この調査は「結婚相談所」調べであることには注意が必要です。すでに相手を見つけている人は含まれないからです。男子校出身者の中でも、出会いがなかった人が集まっていますので。
別学では異性との付き合いが学べない
個人的には、この考えには賛同できかねます。
そもそも、中学高校は異性との正しい付き合い方を学ぶ場ではないと思っているからです。
そんな暇があったら勉強しろ!
というのが私の立場ですので。
そして、別学といえども、隔離された環境ではあるまいし、いくらでも異性と接触する機会はあります。
◆男子校だけど部活の一部は女子校とコラボして行っている
◆女子校だけど、近所にいくつか男子校があり仲良くつきあっている
◆塾にいけば出会いのチャンスなんていくらでもある
◆そもそも中学受験の塾友との付き合いも続いている
SNSが発達した現在、子どもたちの付き合いのフィールドは学校の枠組みをとうに超えています。周囲の大人が心配するのは余計なお世話でしょう。
異性の目がない環境のほうがのびのびとできる
別学推しの方がよく口にします。
「自分は別学だったけれど、あの6年間がいちばん充実していた」
ということですね。
異性の目が邪魔かどうかというジャッジになると思います。
勉強や学校生活にとって邪魔だと感じる場合は、別学のほうが確かに自己を解放できるでしょう。
しかしこれも、6年間充実するかどうかは、共学か別学かという区分けとは無関係だと思います。
恋愛を意識しないほうが勉強に集中できる
これは別学派の意見ですね。
しかし、これに対しては
◆共学だからといって、いつも恋愛を意識しているわけではない
という至極当然の反論が出てきます。
◆別学のほうが、異性と付き合い慣れていないため、恋愛にハマりやすい
これについては賛同しかねる人のほうが多そうです。
中高6年間は社会に出る準備期間
社会は男女半数ずつで成り立っているのだから、中高だけ同性だけの集団というのは不自然である。
共学派の方がよく口にします。
たしかにその通り、と説得力がありますが、だからこそ中高6年間くらいは同性の環境がよいという反論も成り立ちます。
別学出身の親は子どもを共学に入れたがる
別学で失敗したと思うからこそ、わが子は共学に入れたがるのだ。
そういう人もいるでしょうが、そうでない人もいます。
そもそも、親世代が受験したころには、大学附属以外の共学校はほとんどありませんでした。神奈川の桐蔭くらいです。つまり、別学で失敗したというより、進学した学校が合わなかったというだけで、その理由を別学に求めるのは強引すぎますね。
人は自分の経験から逃れられない
人生をやり直せるわけでもあるまいし、中高6年間を共学と別学で経験した人は存在しません。高校受験をすれば可能ですが、今は高校受験から入る高校の話をしているのではないのです。
◆自分が別学で6年間を過ごした
→子どもにも同じ環境を与えたい
→子どもは共学に進ませたい
◆自分が共学で6年間を過ごした
→子どもにも同じ環境を与えたい
→子どもは別学に進ませたい
この4パターンのうち、どの人が多いのかなんてわかりません。
正確なジャッジをするためには、同じ人間が両方経験するしかないのですから。
学校数がそもそも違う
手元にあるSAPIX偏差値表を見てみましょう。
ここでは、大学附属は除外しました。大学附属を選ぶということは、自動的に共学になりますので、別学と迷う理由がないからです。
また、午後入試・2回目・3回目入試の学校は除外しました。偏差値が高めに出すぎるからです。
進学校で、偏差値60以上の共学校は、渋谷幕張・渋谷渋谷・筑波大附属・都立小石川中等教育の4校です。
別学は、開成・麻布・聖光・桜蔭・女子学院・豊島岡の6校です。
偏差値50台を見てみます。
共学校は、広尾学園・広尾学園小石川・都立武蔵高校附属・都立桜修館中等教育・都立両国高校附属・横浜市立サイエンスフロンティア高校附属・区立九段中等教育・都立三鷹中等教育・横浜市立南高校附属・東京農大第一 となっています。
別学は、海城・駒場東邦・武蔵・早稲田中・サレジオ学院・本郷・逗子開成・栄光・浅野・洗足学園・雙葉・吉祥女子・鴎友学園・フェリス・白百合・お茶の水女子大附属 といった学校が上げられます。
つまり、サピックス偏差値で50以上(おそらく日能研・四谷大塚では偏差値58以上くらい)の学校で、私学で共学の進学校を選ぼうとすると、事実上渋谷系と広尾系と東京農大第一しかないと考えて良いでしょう。 公立でよければ、筑波大附属と公立中高一貫校が加わります。
ということは、上位の受験生にとって、別学か共学化という議論は、
◆公立中高一貫校をどう評価するか
◆渋谷幕張・渋谷渋谷をどう評価するか
◆東京農大第一をどう評価するか
という議論と同じなのですね。
渋幕・渋渋・広尾・広尾小石川の4校は、好き嫌いが二分される学校です。
4校とも新興校であり、国際化に舵を切った学校です。
そうした新しさを好ましく思うのか、それとも浮ついた印象を抱くのか。
とくに親世代が中学受験経験者だと、なかなかニュートラルに評価しづらいかもしれません。むしろそうした経験が無い方のほうが、フラットに学校を評価できるのでしょう。
結論
今回は、最終解答を出すと宣言してしまいました。
「ご家庭の方針次第です」といった玉虫色の解答では納得いただけないでしょう。
そこで、あくまでも私個人の私見を述べ、それを最終解答とします。
渋谷教育学園系や広尾学園系が気に入ったなら、そちらを選びましょう。
気に入らなかったなら、自動的に別学になります。
つまり、共学VS別学の議論は不成立です。
これが結論でした。
一つだけ注意したいのは、渋谷系も広尾系も人気が先行した学校です。学校の実力以上に入試難易度が上がっています。とくに広尾系には顕著です。
例えば、東大・一橋・科学大(東工大+医科歯科)・早稲田・慶應の合格力指数を較べたこの記事を見てください。
開成や桜蔭に次ぐ合格力指数の渋谷渋谷はさすがです。しかし、広尾学園の合格力指数は、入試偏差値で10低い攻玉社を下回っているのです。
このように書くと、「6年前の偏差値を考えないと意味がない」と必ず反論されますが、この6年間で広尾学園と攻玉社はともに入試偏差値が2上がっただけです。
いわゆる入口と出口という言い方をすれば、広尾学園は入口よりも出口が低い、という評価になります。
そのかわり、広尾学園には大学受験に直結しているわけではない多彩なプログラムがあるようですね。これを評価する方にとっては、魅力的な学校なのでしょう。
つまり、学校選びに、共学S別学という構図を持ち込んでも意味がないと思います。
角度を変えた分析をこちらでしています。