本日は大晦日ですね。
そこで今回は、2024年の重大ニュースを振り返りましょう。
あくまでも「中学入試」に出そうなものだけを、思いつくままにとりあげてみます。
- 能登半島地震
- 生成AⅠについて
- アメリカ大統領選挙
- 出生率過去最低
- 円安と日本の経済力低下問題
- オーバーツーリズム
- 新紙幣発行
- 衆議院選挙
- ロイアによるウクライナ侵攻
- イスラエルによるガザ地区攻撃
- 健康保険証の廃止問題
能登半島地震
ちょうど1年前になるのですね。
1/1 午後4時10分でした。
元日の夕方という、誰もが1年で一番くつろいでいたはずの日に、しかも帰省してきた子や孫とにぎやかに過ごしていただろう日に、この地震です。
神も仏もないものなのか。
よりによってこの日を選んだ「何か」に強い悪意を感じます。
災害の詳細については、報道された通りです。
「入試問題」の視点から、いくつか気になったことがありました。
◆支援が迅速に行われなかった
関東大震災のように首都圏が壊滅したのではないのです。能登半島という限られた地域で、大都市でもない地域です。全力の支援が実施され、あっという間に復旧作業が進むと思っていたら、どうも様子が異なりました。
半島という地形上、道路が寸断されると救援も輸送も滞ったのです。また、高齢者が多く住む町であることも被害の拡大につながりました。
◆行政の問題
支援が迅速かつ大規模でなかった印象をどうしても持ったのですが、その背景に国の方針があります。
「東日本大震災」について、総務省消防庁のHPにはこうありました。長いのですが、災害対策を考える上でのヒントがありますので、そのまま引用します。
釜石の子どもたちは、自らの命を守っただけでなく、まわりのお年寄りや幼児の避難を助けたことや、避難所の清掃、避難住民の名簿づくりなど、避難後の生活にも貢献したことで知られています。
このように、災害のときには、まず自分で身を守り、そして助け合うことが必要となります。
それでは、災害のときにあなたを守り、助けてくれるのはだれでしょうか。
自分自身、近くの人、消防隊などが考えられます。災害への備えを考えるとき、「自助」「共助」「公助」の3つに分けることができます。 「自助」とは、災害が発生したときに、まず自分自身の身の安全を守ることです。この中には家族も含まれます。
「共助」とは、地域やコミュニティといった周囲の人たちが協力して助け合うことをいいます。
そして、市町村や消防、県や警察、自衛隊といった公的機関による救助・援助が「公助」です。
大規模な地震による犠牲者の多くは、地震発生直後の建物倒壊や家具の転倒によるものであり、東日本大震災では、地震発生後に、巨大な津波が短時間で襲ってきました。
こうした地震直後の状況下で、一人ひとりを助け、守ることに必要不可欠となるのは、自ら守る「自助」と、近隣で助け合う「共助」です。
「公助」だけでは被害にあった人がたくさんいる場合には救助・援助する側の人手が到底足りません。
たとえば下敷きになった人は一刻も早く助け出す必要がありますし、津波のときは声をかけあって高台にすぐ避難することが必要です。災害発生時だけでなく、日ごろの対策や、復旧・復興対策においても、それぞれの役割を考えておくことが必要です。
例えば、家具などの転倒防止や個人住宅の耐震化、水や食料の家庭での備蓄などは「自助」が中心となります。
一方、避難所等の確保や避難路の整備等は「公助」が中心となります。
また、防災教育・防災訓練は、学校・地域・家庭が連携して行うことが必要となるなど、「自助」、「共助」、「公助」の連携が不可欠です。「自助」、「共助」、「公助」のうち、私たち自身にできるのは「自助」と「共助」です。
一人ひとりが、「自分の身は自分で守る」、「自分たちの地域は自分たちで守る」という考えを持ち、日ごろから災害に備えておくことが重要です。
そういえば、かつて菅義偉首相も同様の発言を繰り返していたのを思い出します。
「私がめざす社会像、それは自助、共助、公助、そして絆であります」
「まずは自分でやってみる。そして、地域や家族がお互いに助け合う。そのうえで政府がセーフティーネットでお守りします」
自分で、自分自身と家族の命を守ろうと努力するのは当然です。
しかし、それを「行政」サイドが強調することに違和感を覚えます。
みなさんは、東京大空襲が「人災」であったことをご存じでしょうか。
もちろん、アメリカ軍が「効率よく人を焼き殺す」目的で開発した焼夷弾を合理的に使ったことが主因です。
しかし、それに加えて、人々に「逃げずに消火」することを徹底しようとした政府によって被害が拡大したのも事実です。
この当時の広報ポスターを見ると、焼夷弾の炎が小さな焚火くらいに描かれて、それを箒やバケツリレーで消しているイラストがあり、新聞では地下足袋で踏んで消火した武勇伝などが喧伝され、「自分たちでも何とでもなる」誤解を人々に広めたのです。
ナパーム弾は、着弾すると30mもの炎を噴き上げ、その温度は1300度にも達します。水をかけても消火できません。
◆避難所の問題
最近報道されることが増えたので、災害時には、その後の避難所が大切であることが周知されてきました。体育館に雑魚寝の避難所など国際的には「あり得ない」という報道です。
◆その他の地震
こうした災害に関連する出題では、過去の大規模災害も合わせて出題されることが多いのです。
1995年 兵庫県南部地震
2004年 新潟県中越地震
2011年 東北地方太平洋沖地震
2016年 熊本地震
これらについても合わせて整理しておきましょう。
生成AⅠについて
2025年度東邦大東邦帰国生入試英語の最後の問題はこうです。
「人工知能(AI)の技術の発達は、今後のあなた自身の日常生活にどのような変化をもたらすと思いますか。60~70語程度の英語で答えなさい。」
実はこれに類した出題は、2年前ほどからよく見かけるようになりました。
Chat GPTを代表とする生成AIが、学校教育の現場でもそうとう話題(問題)になっているのです。おそらく学校の先生方の本音をいえば、「また迷惑な技術が出てきたな」というものでしょう。しかし、時代の流れとしては無視するわけにもいきません。そうした葛藤や試行錯誤の中、入試問題にも反映するようになったのだと思います。
AIの現状と問題点については、きちんと整理しておいたほうがよいでしょう。
アメリカ大統領選挙
大きなニュースでしたので、とりあげる学校も多そうです。
ただし、詳細な内容は出題されません。傍目にはかなり問題がありそうな大統領が選ばれてしまいましたが、それはアメリカ国民の選択ですから。
ここでは、大統領選挙の仕組みと日本との違いを整理しておけば十分です。
出生率過去最低
合計特殊出生率が、1.20と過去最低を記録しました。
少子高齢化の原因と影響については頻出項目ですので、正確な理解が求められます。
ただし、「少子化は問題だ」という視点は、「子どもをたくさん産まなくてはならない」という誤った方向性に行きがちですので注意が必要です。
子どもを産む・産まないは女性のみがもつ権利だからです。
また、少子化の対策としては「子どもを産みやすい社会」「子育て支援金の支給」といったものが取りざたされがちですが、その前に、「結婚しない・できない」社会となってしまっていることに目を向けなくてはなりません。
関連して、後期高齢者=75歳以上の割合が2000万人を突破したことも話題となりました。
円安と日本の経済力低下問題
実は、地味だけど最重要といってもよいテーマです。
日本はすでに「経済大国」とは言えないレベルになってきているのですね。
最近欧米に旅行された方なら実感されたと思います。
あまりにも物価が高いのです。
ちょっとファストフード店でランチしただけで、日本円で5000円が飛んでいきます。
これは、外国の物価が高いというよりは、日本の物価が低いというべきでしょう。
5ドルでちゃんとしたランチが食べられる国など欧米先進国のどこにもありません。
かつて日本人がベトナムやフィリピン・インドネシア等発展途上国を旅して感じた、「うわ、安!」という感想と同じ感想を、欧米諸国からの訪日観光客が感じているのですね。
日本人としては少々複雑な思いがします。
また、物価安でかろうじて表面化していない、低い給与水準を忘れるわけにはいきません。
そこに至る経済政策の失敗の積み重ねについては、高校の政治経済のテーマとしては面白そうですね。
中学入試では、そこまで深堀りできませんので、円安や最近の物価上昇が生活や社会にどのような影響を及ぼすのかについて出題することになるでしょう。
オーバーツーリズム
コロナ禍で激減していた訪日観光客数が伸びてきました。2024年の数値は(11月までの統計ですでに)過去最高を記録しています。
しかし、そのことが弊害ももたらしています。いわゆる「オーバーツーリズム」の問題です。
日本の有名観光地はまた、日本人にとっても人気の観光地です。さらに、京都のように、普通の生活が営まれている町であったりもするのです。
観光地・町のインフラのキャパを完全に超えた観光客が押し寄せています。
外国人観光客の中には、日本や地元の文化・習慣を理解していない、理解しようとしていない人も大勢いることも事実です。京都祇園の舞妓さんの振袖の袖を引っ張って破った観光客などその典型ですね。
また、観光地とはとても呼べないような町にまで影響は及んできました。
先日、ごく普通の駅前のスーパーで、買った商品をレジ前のカウンター(かごの商品を袋詰めするスペース)で広げて立ったまま食べている10人ほどの家族連れを見かけて目が点になりました。アジア圏から来たと思われる大家族です。
国内出張の多い方ならおわかりだと思いますが、ホテルの予約がしにくくなりましたね。しかも価格が高騰しています。シティホテルどころか、ビジネスホテルまで多くの観光客で埋まるようになりました。
ホテルのビュッフェ形式の朝食での彼らのマナーを見るにつけ、かつての海外における日本人観光客のマナーの悪さを思い出します。
インバウンド消費の増加だけでなく、それがもたらす問題点や解消法まで考察することが大切です。
新紙幣発行
実はさほど重要なニュースとはいえません。
ただし、紙幣に採用された人物に関連する歴史の出題は作りやすい。
問題の導入として使われそうですね。
衆議院選挙
政権交代は起きませんんでしたので、重要度は下がります。
ただし、選挙関連の出題、一票の格差・投票率の低下・小選挙区比例代表並立制の弊害等は要注意です。
ロイアによるウクライナ侵攻
国際ニュースとしては最重要です。
しかし残念なことに、深堀りしづらいテーマです。
どう扱ったところで、ロシア・プーチンが一方的な悪者になるからです。
今回の戦争については、プーチンを擁護する要素がみつかりません。
ただし、入試問題という観点からは、そうもいきません。基本的に中立の立場をとるのが学校教育の基本だからです。
したがって、出しづらい。
せいぜい、ウクライナの場所・特徴(穀倉地帯)・チェルノブイリの話題くらいでしょうか。加えて、この戦争が世界に与えた影響についても把握すべきです。
イスラエルによるガザ地区攻撃
これも重要なニュースです。なぜここまで問題がこじれたのか、子どもたちにもじっくりと考えてほしいテーマです。
ただし、それを考えさせるのは中学生になってからです。
中学入試では扱いづらいテーマです。
したがって、表面的な知識だけを押さえておけばよいでしょう。
健康保険証の廃止問題
これも私たちの生活や社会保障政策に密接にかかわる大問題です。
しかし、これも入試では扱いづらいテーマです。
どう扱ったところで、政策に批判的な論調にならざるを得ないからです。
障碍者の中には、まっすぐカメラ目線の写真が撮影できなかったためにマイナンバーカードの申請が拒否されたなどという事例まであるのです。
一部の「信念を持つ」学校では出題されるかもしれません。