今回の記事は、現在小学5年生、来年6年生になる受験生を持つ方対象の話題です。
小学校が冬休みに入りましたね。
塾の冬期講習が始まっているかもしれませんが、まだ切羽詰まった雰囲気は無いでしょう。
冬期講習はお休みして、帰省したりスキー旅行・正月旅行に行かれているかもしれません。
そんなのんびりした年の瀬に恐縮ですが、今回は厳しめの話となっています。
- あと1年しかない
- 偏差値を10上げることはできない
- ケアレスミスはゼロにはできない
- 志望校を強制できない
- 学校選びにかける時間が足りない
- 子どもに自覚は(自然には)芽生えない
- 弱点は埋まらない
- 得点力を安定させる
まずは、あと1年では出来ないこと・間に合わないことから書きます。
あと1年しかない
もしかして、なんとなく6年生になってから1年あるような錯覚をお持ちではないでしょうか。
小学校が6年生に上がるのは4月ですが、受験は2月1日からの1週間です(東京・神奈川の場合)。
したがって、5年生の2月から数えて1年間なのです。
しかも、志望校に出願するタイミングを考えると、12月中には受験校が確定します。どの塾も(一部を除き)12月に最期の公開模擬試験が実施されます。その成績で、最終受験校を確定することになるでしょう。
つまり、「あと1年」というのは、実質上、今この瞬間からの1年と考えるべきなのです。
偏差値を10上げることはできない
直近の公開模試の成績を把握されていますね。
以上4種類の模試だけが、中学受験生が受験する意味がある模試です。
それ以外の塾の模試は、受験者数が少なすぎて、データに価値がありません。
最低でも1学年5000人以上の受験生がいないと、模試としての意味を成しませんので。
また、受験生は多いですが、四谷大塚主宰の「全国統一小学生テスト」は中学受験には無意味です。中学受験生以外が多く受けていますので、データが参考になりません。
四大模試の詳細については以下の記事をご覧ください。
6年生を意識した記事ですが参考になります。
第一志望の学校の80%ラインが偏差値60だとしましょう。
現在お子さんの偏差値は45です。
「よし、あと1年あるから頑張って偏差値を15上げよう!」
意欲は立派ですが、現実を見ていません。
偏差値60は、全体順位でいえば上位16%に相当します。
偏差値45は、上から数えて69%に相当します。
仮に、5000人が一斉にスタートしたマラソンレースだとして、偏差値60以上には800人がいます。この800人が、いわゆる先頭集団を形成します。
偏差値45より上には、先頭集団を含めて3450人がいます。
先頭集団に追いつくためには、あと2650人をごぼう抜きにしないといけません。
この2650人は、立ち止まっているわけではありません。あなたと同様、皆前を向いて、少しでも順位を上げようと必死に走っています。それを抜かないといけないのです。
それがいかに困難なことかがイメージできたでしょうか。
仮に、現在偏差値55だとすると、上位31%のポジションということになります。
さきほどの5000人マラソンレースに例えれば、前には1550人が走っています。先頭集団最後尾の偏差値60に並ぶには、750人抜かなくてはなりません。
少し現実味を帯びてきました。
もっともこのレベルになると、750人は、レースの走り方を知っている人ばかりですので、抜き去るのは容易ではありません。
偏差値30から35に上げるより、55から60に上げるほうがより困難なのはわかりますね。
経験上、偏差値で5あげるのがせいぜい、10上げた生徒はほぼいませんでした。
もっとも、偏差値は毎回大きく変動します。そこで、直近3回の偏差値の移動平均をとって考えることを推奨します。
過去には、1年間で10以上伸ばした生徒ももちろんいます。
こんな生徒たちでした。
◆帰国生・・・6年になる直前に帰国して、そこから本格的に受験勉強にとりくんだ。
この生徒の場合は、伸ばしたというより、最初がひどすぎたというべきでしょう。
◆地方から引っ越してきた・・・帰国生と状況は同じです。地元の公立中学を念頭においた学習しかしてこなかったのです。これも、最初がひどすぎただけですね。
◆目標が定まった・・・本人に、どうしても行きたい学校ができました。それまでの生活態度を改め、必死で学習に向き合った生徒です。理想的ではありますが、このタイプの生徒が一番レアなケースです。
◆親の覚悟が定まった・・・このご家庭は、まずテレビを処分しました。子どもの前では、両親ともスマホを見ることもやめました。子どもが勉強している横で、父親は資格試験の勉強を、母親は語学の勉強をしたそうです。勉強するのが当たり前の空気を演出したのですね。母親がソファに寝そべってスマホをいじりながら「勉強しなさい!」と言うのではだめということです。
◆塾を辞めた・・・とにかく拘束時間の長い塾だったのです。ほぼ毎日塾があるため、家庭学習時間が十分に確保できていませんでした。とりあえず塾に行かせさえすれば何とかなる、そうした誤解が誤解であることに気が付いたのですね。そこで思い切って塾を辞めました。別の塾に転塾したのではありません。家庭学習に完全に切り替えたのです。幸い、すでに社会科以外の単元学習はほぼ終了していました。社会科で残っている近現代史と公民分野なら親にも教えられそうです。相当不安だったのですが、思い切って正解でした。親ばかりか子どもも腹が据わったそうです。この子のケースというのは、塾が子どもの成績の足を引っ張っていたというケースでした。
ケアレスミスはゼロにはできない
小学生は(中学生でも)本当にミスが多いものです。
・漢字の間違い
・計算ミス
・問題の読み落とし
・記号の書き間違い
「正しいものを選べ」という問題で誤ったものを選ぶ
「誤ったものを選べ」という問題で正しいものを選ぶ
「ア~オから1つ選べ」というのに、なぜか数字で答える
「当てはまるものが無い場合はオと答えなさい」とあるのに、消去法で解く
問題用紙の選択肢3を選び印をつけているのに、解答欄には4と書く
まだまだありますね。
こうした話をすると、生徒は必ず「うんうん、あるある!」と嬉しそうです。
自分がしでかした過去のミスを得意そうに披露してくれます。
「どうしたらケアレスミスが無くなりますか?」
よく相談されます。
しかし、残念ながら、ケアレスミスは無くなりません。
そもそも、本人たちが、ミスを「重大事故」とは思っていませんから。
「僕は本当はわかっていたんだ。解けていたんだよ。ちょっと書き間違えただけだから」
そういう気持ちの子どもですから、何度でも何度でもミスを繰り返します。
ミスによる失点を、「解けていたはずの問題」だったと考えることを止めるしかないのです。
志望校を強制できない
もし子ども本人が「ここに行きたい!」という学校があり、そして親がそこには行かせたくない場合、子どもの意志を変えるのには1年では足りません。
だいたいの場合、子どもは最初に連れていった学校が気に入る場合が多いですね。
また、文化祭で見た展示が気に入って、もうこの学校しかない、と思い詰める場合もあります。
子どもが特定の学校にこだわる理由は単純です。
しかし、その単純な思い込みが強力なのです。
これを、冷静かつ客観的に総合的な情報に基づき判断するための、材料が圧倒的に足りないのですね。
大人だって、10校以上の学校の説明会等に足を運ぶことで、複数の学校の比較が可能になるものです。学校を判断するための自分なりの尺度のようなものができるイメージでしょうか。
しかし、学校訪問回数が少ない子どもにそれを期待することは難しいのです。
かといって、今から多くの学校に連れていくのは時間の無駄です。しかも、学校訪問のチャンスは、秋に集中しています。受験直前期にそんな時間はありません。
ここはあきらめて譲歩し、それ以外の志望校を戦略的に選ぶしかないでしょう。
学校選びにかける時間が足りない
みなさんは、すでに何校くらいの学校に足を運びましたか?
仮に5校に志望校をしぼったとして、その倍の10校くらいには行かれたことと思います。
これが最低ラインです。
また、訪問数以外にも重要なポイントがあります。
現時点の偏差値よりマイナス10くらいの学校にもきちんと足を運んでいますか?
「うちは、開成と麻布と駒東で迷っているので、3校には2回ずつ説明会に参加しました。文化祭にも子どもを連れていっています。あとは念のため筑駒にも1度行きました。栄光には行きましたが聖光にはまだ行っていないので、来年度行く予定です。子どもは渋谷渋谷に行ってみたいと言うので、そこも行くかもしれません」
もしお子さんのサピックス偏差値が現時点で70なら問題ありません。
もっともそうした子でも、浅野・海城は検討校に入れて訪問しているものですが。
ある意味、最難関校には何度も足を運ぶ必要はないとすらいえるでしょう。むしろ、安全校や実力適性校として考える学校こそ、学校案内やHPには表れない学校の長所・短所を見極めるために積極的に足を運ぶ必要があったのです。
子どもに自覚は(自然には)芽生えない
これも毎年相談されます。
「いつになったらうちの子は真剣に勉強に取り組むようになるのでしょうか?」
「受験生であるという意識をはっきり持つのはいつになるのでしょう?」
子どもは子どもです。
放っておいても自然に「受験生の顔」をするようになり「自主的」に「真剣」に勉強に取り組むようになどなりません。
そうなるのは、周囲がそう仕向けるからなのです。
弱点は埋まらない
模試の答案を見ると、お子さんが苦手なジャンル、いつも間違える分野がありますね。
「ここをきちんと強化すれば・・・」
当然の考えですが、その時間はありません。
次から次へと押し寄せる勉強におぼれそうなのですから。弱点補強の時間は、そうとう頑張って捻出しないとならないでしょう。
次に、あと1年で何ができるか考えましょう。
得点力を安定させる
実は可能なのはこれだけです。
今までの単元学習で足りなかったのは、問題演習の量なのです。
今後この量を増やすことで、お子さんの得点力を安定させることが可能です。
具体的には、スピードをつけることと、入試によく使われる出題パターンがわかってくることと、入試頻出の知識が定着することが可能です。
ケアレスミスは相変わらずとしても、少しだけ減ってきます。定番のひっかけ問題にも引っ掛からないようになります。
つまり、得点力が安定してくるのです。