中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】残り1か月の過ごし方の最適解

実は残り一か月の過ごし方について、ちょうど1年前にも書いています。

peter-lws.hateblo.jp

しかし、本当によく聞かれる相談でもありますので、今回は以前の記事であまり触れていない点についてお話しましょう。

 

ネット掲示板に流れる嘘

 

実はこの記事を書くにあたって、ネットの掲示板を見てしまったのです。

見なければよかったと後悔しました。

相も変らぬ偽情報が溢れています。

もう二度と見ないぞと何度目かの決意を固めましたね。

 

Q:塾の模試が12月で終わってしまいました。1か月以上実力が把握できないまま受験するのが不安です。他塾の模試を受けるべきでしょうか?

Q:最後の1か月で何をやればいいのでしょうか。

 

このような質問が書きこまれています。もちろん本当の受験生の相談であるかどうかはわかりません。

これに対して、間違った解答が、「こうするべきです」「我が家はこうしてうまくいきました」といった文脈で大量に書きこまれているのですね。

書きこみが真実であったと仮定しても、一人の子にうまくいったやり方が、万人にとって最善であるはずもないのです。

 

そもそもネットに相談している時点でリテラシーが無さ過ぎです。

 

ネット掲示板は絶対に見てはいけない

 

インターエデュやヤフー知恵袋等を良く見る方に忠告します。

これから入試が終わるまで、絶対に見ないでください

もし受験生の親同士の交流サイトのようなものに登録していたら、それも削除してください。

根拠のない情報を見ることで、得られるものは皆無です。むしろ害毒にしかなりません。

「〇〇中は今年人気殺到して難化するらしい」

「△△中は今年はねらい目だって」

そんな情報、何の役にたつのでしょう?

 

ネット情報には中毒性があります。(見ないように決意している私ですらたまに見てしまいます)

強い意志でURLを削除し、絶対に見ないようにしましょう。

 

出願者数情報は見てはいけない

1月になると、各中学校の出願者数の情報が、日々更新される形で公表されます。

学校が正式にHPで公表している場合もありますし、塾が発信していたり、まとめサイトのようなところが情報を集約しているケースもあります。

 

これは、決して見てはいけません

 

これを見て、何か得られることってあるのでしょうか?

「どうしよう! 受験校の〇〇中学の出願者がいつもより多そう! 倍率が高まるの?」

そううろたえて、受験を取りやめるのですか?

「あら、△△中、今年は受験倍率が低そうね」

そう楽観視して、急遽受験するのですか?

 

1月になってからの受験校変更はあり得ないですね。

また、同一試験日に2校に出願して、わが子の合否状況に対応して受験校を切り替える作戦というのもありますが、これも倍率を参考にするべきではありません。

1日に受けた駒東の合否を見て、合格していたら3日は筑駒チャレンジ、不合格の場合は3日は浅野受験、というものですね。ここに倍率情報の入る余地はありません。

 

ちなみに、2024年は、筑駒の倍率は4.34倍、開成は2.8倍、桜蔭の実質倍率は1.97倍でした。二人に一人が受かった計算になります。

「二人に一人の合格なら、楽勝ね!」と思えますか?

 

繰り返しになりますが、出願倍率を気にすることは、百害あって一利無しの典型です。

 

他塾の模試は絶対に受けてはいけない

すでに12月中旬には、受験校(志望校ではありません)は確定しました。

願書も準備し、出願も始まっています。

このタイミングで、模試を受けてその結果を見ることでどうするのですか?

もしかして受験校を変更するのでしょうか?

受験が近づくにつれて不安な気持ちがつのるのはわかります。

模試の成績表で、「合格可能性80%以上」の文字を見て安心したいのですね。

しかし、その「安心」には何の意味もありません。

さらに、成績を見て「不安」を募らせるリスクが高いのです。

 

塾が、1月にもなってから「公開模試」を実施する目的は3つしかありません。

(1)他塾の優秀な生徒の「合格実績」を手に入れる

(2)次年度以降の進路指導のデータを手に入れる

(3)直前の予行演習をさせる

 

このうち、(3)の理由は唯一正当性のある理由ですが、それなら通塾生のみを対象とすればよいはなしです。わざわざ「公開」模試とする必要はありません。

(2)の理由は、進路指導の確度を高めるためには、一人でも多くの受験生の成績データが欲しいのです。「〇〇中オープン」などと銘打って公開模試を実施すれば、〇〇中を受験予定の他塾の生徒の成績データを大量に集積することが見込めます。それが狙いです。受験終了後に、実際の合否結果を調べる執拗な電話が必ずかかってきます。

(1)の理由は、実にさもしい理由ですね。しかし、残念なことにこうした塾は多く存在します。模試受験後にしつこい勧誘電話がかかってきますよ。また、入試が終了してから、受験校と結果をリサーチする電話も執拗です。

 

受験直前期に余計なノイズを入れてはいけません。

コロナやインフルエンザの感染リスクを押してまで受験する意味は皆無です。

 

理科・社会の暗記教材だけをやっても無駄

 

何でしょうね。昭和の受験戦略のような情報を、まだ賢しげに語る方が多いのですね。

「入試直前一か月は、理社の知識を整理しましょう」

「理社の暗記物をやる時期です」

 

です。

 

この時期にそんな学習をしても得点力はあがりません。

それ以前に、まだ「暗記しなくてはならない」知識が大量にあるようでは、間に合いません。

暗記教材は、4年生くらいから少しずつ進めて、6年の夏前には完璧に仕上げておくべきものでした。

 

「いやいや、わが子は理社の知識が怪しいのです。だからせめて暗記だけでも・・・」

気持ちはわかりますが、今からその学習法では間に合いません。

理社の知識の量をご存じですか?

4年生から、2年半かけて膨大な知識を扱ってきたのです。

それをわずか1か月で復習することは不可能です。

 

例をあげると、知識暗記物教材や参考書を見ると、「ぬるめ」「まわし水路」「流水客土」という語句が書かれています。しかし、もはや入試では見かけません。出るのは、沖縄での露地での電照菊栽培に関連して、大田市場における菊の入荷地域別量グラフを読み解くような問題です。また、「輪中」「水屋」を今さら覚えたところで、入試には「なぜ輪中の工事を薩摩藩が行ったのか」を答える問題が出るのです。

 

理社の知識に関しては、実践的な入試問題を通じて確認すべきです。

 

受験校の過去問を何度も繰り返すのは意味がない

 

たまに、「受験校の問題を5回は解きましょう!」などと言う方がいるのです。

 

全く無意味です。

一度解いた問題をもう一度やったところで、得る物は少なすぎるのです。子どもは答えを覚えてしまいますので。

 

 

やるべき学習法

 

(1)過去問演習

本来は、この時のために、受験校の過去問の最新版を手つかずで取っておくべきなのです。

それを丁寧にやるのが有効です。もちろん答え合わせ・間違い直しは丁寧に。

それだけでは足りませんね。

受験予定校に限らず、良質な過去問を、学校を問わず・男女共学問わず、時間をはかって毎日1本(4科目)解いてください。そしてその答え合わせと間違い直しを丁寧にしましょう。

◆国語は文章読解スピードが上がる

◆算数は多様な問題を解くことで足腰が強化される

◆理科・社会は、問題に出てきた知識を身に着けることで、「実践的な知識」が取得できる

 

こうした効果が期待できます。

さきほど、理科社会の暗記ものをやることは無意味だと書きました。知識は、実際の入試問題から吸収してください。それこそが、「入試に良く扱われる実践的な」知識ですので。

 

(2)漢字(語句)トレーニン

実践的な漢字・語句ドリルのようなものをお持ちですね。それを繰り返しやってください。これは漢字の瞬発力を鍛えると同時に、同音異義語に惑わされない力をつけるのが目的です。今までもすでに毎日10分間はやってきたはずですので、それを少し拡大して、例えば1日2セット~3セットやるのがよいですね。

 

(3)計算練習

なるべく実践的な一行問題や分数・少数の面倒くさい計算練習をやりましょう。すでに今までも、毎日10分間費やしてきたと思います。これを少し拡大して、1日2回にするのがよいでしょう。

これは、いわば、ピアノにおけるハノンのようなものなのです。計算力を高い水準に維持したまま受験に臨みましょう。

 

(4)理科・社会の資料集を読む

中学受験用の資料集として、中学生用の資料集を塾からもらっているはずです。手擦れした愛用の資料集を、隙間時間にいつも見るようにしてください。そこに出ている「小さな写真」「ちょっとしたグラフ」が入試に登場します。

 

以上の学習を、入試の前日まで繰り返すだけです。

 

これが、残り一か月の「正しい」過ごし方なのです。

 

 

小学校は休ませるべきか?

ご家庭の方針次第です。

「1月1か月間の小学校生活」と、「中学受験合格可能性の向上」の二つを天秤にかけて、どちらを重視するのか。

ただし、1月の1か月を小学校に行かずに家にいたとしても、合格可能性が向上しそうもない場合もありますね。生活のリズムが崩れたり、親が不安な気持ちを子どもにぶつける時間が増えるだけだあったり。

普通に直前まで小学校に通っていたほうが、親子共々平常心を保ててプラスである場合もあるでしょう。

 

ただし、この天秤は、コロナ禍を契機に、全く状況が変わってしまいました。

 

「1月1か月間の小学校生活」と、「中学受験できなくなる可能性」の二つが天秤に乗るようになったのです。

 

もちろん、コロナ流行以前でも、風邪やインフルエンザ等のリスクは存在しました。しかし、新型コロナウィルスの流行は、私たちの感染症に対する考え方を大きく変えてしまったのですね。

 

過剰に恐れることは良くありませんが、リスクを下げる努力はすべきであると思います。

 

塾は休ませるべきか?

 

これも、ご家庭の方針次第です。

 

「塾で学ぶことによる合格可能性向上」と、「中学受験できなくなる可能性」の二つが天秤に乗っています。

 

この「塾で学ぶことによる合格可能性向上」については、学習内容によるものに加えて、生徒の心理に及ぼすプラスの効果も無視できません。

 

また、「中学受験できなくなる可能性」、つまりインフルエンザ等感染症のリスクについては、塾のほうが小学校よりも幾分かは低いと思います。

◆時間が短い

◆子ども同士が話す時間がほぼ無い

◆生徒(家庭)が相当気を使っている

この3点があるからです。

さらに、塾としても、教室での集団感染など悪夢でしかありませんので、対策を講じているところがほとんどでしょう。講師全員にインフルエンザ予防接種を受けさせている塾などいくらでもあるはずです。

 

また、最近はリモートでの授業参加のシステムを整えている塾が大半です。

 

これらを加味しての総合判断ということになります。