中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】雑誌情報は信頼できないと考える理由

先日書店をのぞいていて、雑誌の「中学受験特集」を手に取ってみていました。

すると、驚くほど内容が薄く、かつ偏向しているのです。

大手の出版社の雑誌です。

こんなものを鵜呑みにする人が可哀そう。

その思いで今回の記事を書きました。

教育系雑誌

 

大きく分けて3種類あります。

(1)ビジネス雑誌系

(2)専門出版社系

(3)塾系

それぞれ説明します。

 

(1)ビジネス雑誌系

普段ビジネス雑誌を読んでいる保護者にとっては、信頼できる出版社ですね。また、子育て世代でもあります。そうした層をターゲットとしたものが各種出版されています。

 

◆プレジデント・ファミリー

いわゆる四大ビジネス誌の一つ、プレジデントのファミリー版という位置づけで、季刊です。

ちなみに四大ビジネス誌は、「日経ビジネス」「PRESIDENT」「週刊ダイヤモンド」「週刊東洋経済」の四誌です。

最近の表紙タイトルを見てみましょう。

全保存版 中学受験大百科
わが子が輝く進路・受験
この学校のここがスゴイ!
医学部進学大百科
子どもが伸びる親の言葉・愛読書
みるみる算数が得意に!
一生モノ!賢い脳をつくる生活習慣
小学生知育大百科
こども英語大百科
東大生150人「自走力」がついた親の言葉
夏休み、賢い子になる本棚
算数が大得意になる
可能性の伸ばす親・つぶす親
自分で学ぶ子が育つ家
読解力は家で伸びる

 

さすがという他ありません。思わず手にとりたくなる文言が躍っています。

 

アエラ

「完璧中学受験」アエラムック

朝日新聞社ですね。ちょいちょい中学受験特集を出版しています。家では朝日新聞をとっている層へアピールすると思います。

 

 

週刊ダイヤモンド

「わが子に最強の中高一貫校、塾&小学校」

「本気で子どもを伸ばす、中高一貫校ランキング」

そそるタイトルです。

こちらもちょいちょい中学受験特集を出版しています。

 

◆ビタミンママ

横浜の書店で見かけました。

「子どもの20年後に必ず活きる中学受験を考える」

「知っておきたい中学受験のメリット」

たまプラーザを本拠とするママ向け出版社のようですね。

 

小学館

「小学3年生 中学受験チャレンジ増刊号」

 

日本経済新聞社

「中学受験を考えたらまず読む本」

 

まだまだありますね。

 

(2)専門出版社系

例をあげることはしませんが、受験情報・学校情報専門の出版社というものがあります。

一般出版社との違いは、広告の多さです。

ページの多く(ほとんど!)が学校の広告で占められているのです。

こうした出版物の収益は、広告収入に依存しています。

〇各学校に営業をかけて、広告依頼をする

〇それらしい記事を集めて雑誌の体裁とする

〇書店に並べることで雑誌の体裁をとる

 

場合によっては無料で配られたりもします。

 

(3)塾系

◆『Dream Navi (ドリームナビ)』(四谷大塚ーナガセ)

◆『進学レーダー』(日能研みくに出版

◆『私立中高 進学通信<関東版>』(栄光)

◆『サクセス12』(早稲田アカデミーーグローバル教育出版)

◆『さぴあ』(サピックス)※

大手の塾が、塾内部生向けに作成したものが、一般書店でも売られています。

残念ながらサピックスのものだけは市販されていません。一部記事だけ、WEBで読むことができます。また、校舎の受付に行けばもらえるようですが、さすがに毎月行くのはためらわれますね。

 

さて、こうした雑誌のうち、どれを信用すべきでしょうか?

普通なら、こう考えますよね。

「やっぱり大手出版社のものが安心よね。聞いたことのない出版社のものは広告ばかりで読むところがほとんど無いし、塾が出版しているものって、なんとなく信頼できないから」

これが間違っているのです。

大手出版社といえども、中学受験の専門家は社内にいません。

ここでいう「専門家」というのは、

中学受験生を直接指導している組織の人間

という意味です。

「評論家」ではありません。

指導経験もないのに、中学受験について語る「評論家」は信用できませんので。

わが子の小学校生活の悩みを相談するのに、教育学の博士と、元小学校の校長と、どちらに相談したいですか?

 

出版社としては、出版すれば一定の部数が売れることが見込める「受験情報」は美味しい商売なのです。

そこで、「専門家」に記事の作成を依頼し、また記者が取材をして、雑誌をつくりあげます。

しかし、この「専門家」が玉石混交なのです。

◆難関校への合格を出したこともない塾の経営者が難関校について語る

◆マスコミに顔が売れている自称「カリスマ家庭教師」が子育てについて語る

◆公立中高の教員経験者が中学受験について語る

 

こうした、自称「中学受験の専門家」が書いた記事が多すぎます。

内容は、どうしても「当たり障りのない」「ふわっとした」「一般的な内容」になるのも無理はないですね。

もちろん、中には綿密な取材と分析に基づいた記事を書くことのできる「専門家」もいますが。

 

また、記事の偏向にも注意が必要です。

私立中高は、2種類あると思っています。

〇アピール下手

〇アピール上手

の2種類です。

以前は、学校が外部にアピールする必要などありませんでした。「営業」という概念もなかったと思います。

とある私立校が、生徒募集に苦戦し、教育系出版社に相談したのだそうです。

「名刺を作って塾を回りなさい」とアドバイスされたとか。

慣れない手つきで名刺を差し出したその先生から直接聞きました。

 

今や、大半の学校が、生徒募集には自校のアピールが不可欠であることを認識しています。

ただ、それについても上手・下手は分かれます。

放っておいても生徒が集まる学校ほど「下手」ですね。

逆に言うと、生徒募集に熱心な学校ほど「上手」です。

広告代理店出身者を学校の広報担当に迎え入れた、そんな話も聞きます。

学校を「良く見せる」ことに長けている学校も多くみられます。

ただし、「広報活動が上手」=「良い学校」ではないですね。

当たり前のことです。

しかし、取材をしやすい・広告を大きく出してくれる・記事にしやすいのは、そうした学校なのです。

したがって、出版社系の雑誌を開くと、「おすすめの学校」「今注目の学校」「伸びている学校」として取り上げられている学校の大半が、「広報上手」な学校となってしまいます。

もちろんそれらの学校にも「良い学校」がたくさんあります。

しかし、記事が偏向していることは間違いありません。

広報下手で目立たないけれど、地に足の着いた教育を実践している学校が抜け落ちてしまい、厚化粧が上手な学校が取り上げられやすいからです。

 

別に出版社には、教育に対する思いなどゼロですから。記事になりさえすれば、それも目を惹く記事になりさえすれば、それで良いのですね。

 

したがって、出版社系の雑誌については、「記者が自分で集めた数値情報」のみを私は信頼します。

 

意外なことに、塾系の雑誌のほうが視線はフラットです。

自分の塾の生徒達が、あらゆる学校に進学しますので、あらゆる学校と等距離のスタンスを取らざるを得ないからでしょう。

その中でも、

◆『Dream Navi (ドリームナビ)』(四谷大塚ーナガセ)

◆『進学レーダー』(日能研みくに出版

の2誌をおすすめします。

塾の規模が大きいことから、情報の蓄積度が大きいことが期待できるからです。

どちらも書店で普通に売られていますし。

 

その他の情報入手方法

 

教育系雑誌以外の情報取集方法はこんなところでしょうか。

◆学校の発信する公式情報・・・HP・説明会等

◆塾の発信する情報

◆マスコミ情報

◆ネット(掲示板・SNS等)情報

◆口コミ情報・・・ママ友

◆プロの情報・・・教育評論家・プロ家庭教師・受験アドバイザー等

 

これらで唯一信頼できる情報は、学校の発信する公式情報のみです。

当然ですね。

それ以外は信頼できません。

それでも、まあ信頼できるのは、お通いの塾の発信する情報でしょうか。

しかし、その塾が小規模塾の場合は要注意です。

学年生徒数が最低でも5000人を超える規模の塾なら、おかしな情報を発信すると死活問題ですので、信頼できると考えてもよいでしょう。

ただし、気を付けなくてはならない点もあります。塾も商売ですので、生徒を集めることと、合格実績をあげることからは逃げられませんん。そのため、一部の塾・教室では、かなり強引な誘導も行われています。また、塾はまともでも、担当教師が信頼できるかどうかはわかりません。

・特定の学校を妙にすすめてくる

・特定の学校を妙に貶す

・行く気もない学校の受験を熱心に勧めてくる・・・1月校・関西受験

・自信なさそうに曖昧なことしか口にしない

・自信ありげに断定ばかりする

いずれも要注意です。

 

今回の内容については、より詳細に記事にしています。

peter-lws.hateblo.jp