最近は、ますます合理化・効率化がすすむ出願です。
まずweb出願が主流になったのが大きいですね。
面接を廃止する学校も増えています。
出願料もカード払いで済みます。
ただ、一部の学校では旧態依然とした部分が残存しているのです。
それが「志望理由」です。
今回は志望理由の書き方について考えてみましょう。
出願書類の例
慶應普通部
HPで出願書類のPDFファイルがダウンロードできます。
出願書類には、「本校志望の理由(次の行の ▼ から必ず保護者が自筆で記入してください)」
となっていて、9行のスペースがあります。手書きです。
1行24字程度とすると、200字程度ということですね。
まずは、パソコンのWord等の書式設定で、24×9行の枠をつくり、あとは打ち込みながら推敲に推敲を重ねましょう。
慶應中等部
HPから出願書類のPDFファイルをダウンロードできます。
A4横の半分が記入部分です。A5サイズですね。
そこに、「志願者の自己紹介(志願者本人記入)」が7行、「中等部志望の理由(保護者記入)」が10行となっています。
記入欄は狭いのですが、行のピッチも狭いので、少し小さめの文字で記入することになりますね。
本人が200字程度、保護者が250字程度でしょうか。
慶應湘南藤沢中等部
PDFファイルがA4縦でダウンロードできます。
「本校志望の理由(次の行の ▼ から必ず保護者が自筆で記入してください)」
この部分は、罫線なしの枠だけがあります。4行程度(がんばっても5行)で書くくらいのスペースしかありません。
これで安心していると、もう一つ、記入する紙があります。
「活動報告書」です。
家庭での活動・学校での活動・家庭・学校以外の場での活動
A欄:活動内容の概略・発表歴・成績などを記入してください。
B欄:A欄に記入した活動についての具体的な取り組みの説明
C欄:今までに取得した資格、技能検定があれば3件以内で記入してください。
(注)保護者の視点で記入してください。
小学校4年生以降、家庭での活動・学校での活動・家庭学校以外の場での活動で得られた成果の中で、最も志願者がアピールできるものを1つだけ選んで、その概略(大会名・コンクール名・競技種目・成績・開催年月日・主催団体など)をA欄に記入してくdささい。また、その活動における役割や取り組みの状況、活動を通して得たことなどの詳細をB欄に記入してください。
これはハードルが高いですね。
C欄については、英検を書く方がほとんどでしょう。漢検もいいかもしれません。個人的には「歴史検定」など素敵ですね。世界に羽ばたく前に、まずは自国の歴史をじっくりと学びたかった、そんなストーリーが作れますので。
ただし、ここに「誰も知らないようなマイナーな資格」「謎の資格」「ビジネス系の資格」を書くのはやめましょう。
学校が求めているのは、「視野を広げる勉強をしてきた小学生」であって、「Scratchを使ったプログラミングができる小学生」でもなければ、「簿記が得意な小学生」でもないからです。
※別に就活の履歴書ではないので、「英検は2級以上でなければ恥ずかしくて書いてはいけない」といったことはありません。
さて、A欄・B欄が問題です。
「家庭内の活動」について書くのは難易度が高すぎます。
おそらくは、同居している祖母の介護のお手伝いといったことを要求されているのだと思いますが、今のご時世では「ヤングケアラー」として逆に問題なような気がします。
「学校での活動」も書きづらい。
普通の小学校で、一人だけ目立つ活動をするチャンスはほぼないからです。
となると、やはり「学校・家庭以外の場での活動」を書くべきでしょう。
例えば、それなりに大きなピアノコンクールやバレエコンクールで上位入賞などという実績があればよいのですが。
あるいは算数オリンピックのメダリストなんていうのもよいですね。
スポーツ系については、成果が見えにくいので書きにくいかもしれません。毎週スイミングスクールに通っていた、そんなレベルでは書けませんし。こちらも大会で成績を残すレベルであれば堂々と書けますね。
ボランティア活動について書くことは、あまり薦められません。
小学生ができるレベルのボランティア活動では、「お遊び」程度にしかならないからです。
むしろ、「願書対策でやったのね」と思われるだけでしょう。
例えば、小さい頃から書道を習っていて、そのスキルを活かして、近所の老人介護施設で手紙の代筆のボランティアを自主的に2年間毎週続けていた、そんな内容なら素晴らしいと思います。
例えば、カナダのセヴァン・スズキ氏のように、子ども環境保護活動のグループに加わり、寄付をつのってブラジルの国連環境開発会議で12歳のときに演説した、そんな子なら素晴らしい。
残念ながら、そうした小学生は稀(ほぼゼロ)です。
多くの受験生は勉強で忙しく、「学外活動」の暇などありません。
しかし、この願書の空欄をスムーズに埋めるためには、意図的に何等かの活動をするほかないでしょう。
しかも、6年秋の出願書類を見てからでは遅すぎます。
◆子どもが自主的に取り組んだ
◆長期にわたって活動した
◆視野・社会を広げることができた
◆親が見守り評価した
こうした内容の活動が求められています。
鴎友学園
この学校には「自己申告書」という書式があります。
・志望理由(志願者本人がご記入ください)
この欄は枠だけです。せいぜい4行程度しか書けません。
・校内・郊外における活動
この欄は、数単語しか書けないスペースです。
学校での活動(委員会・クラブなど)
学校外での活動(スポーツ・音楽・ボランティアなど)
・趣味・特技・資格など
この欄は2行程度です。
なぜ志望理由を書かせるのか?
実は、ここが最大の謎なのです。
志望理由など、誰もが「作文」します。
なるべく学校に気に入られるように力を尽くします。
◆その学校のどこに惹かれたのか
◆学校を子どもが気に入ったきっかけ
◆学校の教育理念のどこに惚れたのか
◆家庭ではどのような子育てを心がけていたのか
◆子どもにどのような優れた資質があるのか
こうした内容を書き、最後に「どうしてもこの学校しかないのです!」という思いをにじませます。
どれもこれも同じような内容になるに決まっています。
慶應普通部なら、「労作展」のここに感動した! と皆書くのです。
まあでも文句をいってもはじまりません。
これはもう「様式美」だと思ってください。
決められた役割を上手に演じることだけが求められているのだと。
目立つ凄い内容を書く必要など一切ありません。
基本ルールを押さえて作文するだけです。
注意
だいたい志望理由をたくさん書かせる学校は、面接を重視しています。
面接でする質問内容のネタとして利用したいのですね。
だから、書いた内容について聞かれることは覚悟してください。
嘘を書くとすぐにボロが出てしまいます。
面接についてはこちらに詳しく書いています。