みなさんのご自宅近所に小さな塾はありませんか?
家から近くて良いのだけれど、どうなんだろう?
今回はそんな「ご近所塾」について考えてみたいと思います。
※特定の塾を持ち上げる意図も貶める意図もありません。私の主観にもとづく私見にすぎませんのでご容赦ください。
簡単に開ける塾
看板さえ掲げれば(掲げなくても)塾は開けます。
資格も届け出も不要です。
必要なのは「教室環境」と「教師」だけです。
教室環境についても、別に自宅の一室でも構わないのです。
教える教師がいて、教わる生徒がいれば、もう塾は成り立ちます。
この「参入障壁」の低さが、塾の特徴だと言えるでしょう。
私が車でよく通る道筋に塾があります。
住宅街の真ん中の通りで、普通の家々が立ち並んでいるところに、どうやら自宅の1階を改造したのか、それ用に建てたのかはわかりませんが、塾の看板が掲げられているのです。生徒の自転車が何台も停められていますので、それなりににぎわっているようです。
大手の塾の教室でもなければフランチャイズでもない、完全な独立系の塾です。
ここは、数年前まで、カレー屋でした。おそらく家の主の趣味なのか本気なのかはわかりませんが、自宅1階でカレー屋を開いていたのです。そこがある日突然塾に変わっていたので驚きました。主は変わった気配はありません。
明らかにカレー屋当時より繁盛している様子なので、業態転換して正解だったのでしょう。
このような、個人が細々と開いている塾ってたくさんありますね。
はたして内容はどうなのか気になりますね。もし評判が良ければ、ぜひ通わせたいところです。
塾の規模
経済産業省の資料を見ると、このようになっています。
事業所数 : 4万9682事業所
学習塾業務の事業従事者数 : 32万64百人
学習塾業務の年間売上高: 9468億円
1事業所当たり学習塾業務の事業従事者数 : 7人
1事業所当たり学習塾業務の年間売上高 :1906万円
少し前の数字ですが、今でもそんなに変わらないと思います。
さらに、従業者4人以下の塾が6割、会社組織でない塾が7割を占めるそうです。
一都三県に12500、東京都だけでも4000以上の塾があります。
大手塾の教室だけではそんな数にはなりませんので、やはり小さな個人塾が多数あるということなのでしょう。
種類
このような「ご近所塾」(私が命名しました)には、2種類存在します。
(1)フランチャイズ教室
(2)独立塾
(1)については、学研と公文が2大勢力です。
学研のHPを見てみると、先生の条件についてはこうありました。
年齢制限はありません。一度教室を始めていただいたあとは、ご自分のペースで長く働き続けることができます。資格や経験も不問です。子どもの自学自習を促す教材、教え込まない学習指導スタイル、マニュアル、研修、動画コンテンツなどがそろっております。指導経験や資格よりも、子どもたちに愛情を持って接していただくことのほうが大事です。実際、半数以上の方が未経験からスタートしています。
くもんについても、先生募集ページに詳しく載っていますが、もちろん「誰でもできる」仕事であることが強調されています。
その他「塾・フランチャイズ」で検索をかけると私の知っている塾も知らない塾も多数ヒットしました。
秀英予備校・個別指導アクシス・松陰塾・明光義塾・ITTO・河合塾マナビス・個太郎塾・京進スクールワン・武田塾・Dr.関塾・トライプラス・スクールIE・城南コベッツ・早稲田育英ゼミナール等
これらのフランチャイズの塾はどうやら3種に分類できそうです。
◆寺子屋スタイル
◆映像配信スタイル
◆個別指導スタイル
また、フランチャイズのオーナーが直接教えるのか、あるいは経営のみを行い教師を別に使うのか、どちらかに分かれると思います。
ただし、コンビニのように、人件費節約を考えていつのまにかオーナーが一人で張り切る、そういうことになりそうな予感がしますね。
こうしたフランチャイズの塾は、教材・カリキュラム・テスト等に一定のクオリティが期待できるというメリットはありそうです。
ただし、先生の質については何ともいえません。
(2)の独立塾は、まさに玉石混交です。
ただ、こちらのほうがお薦めな気がします。
評判だけが頼りの経営ですので、周囲のママ友情報を頼りに探すと良いと思うのです。
また、何年も続いているとすると、それなりに評判が良いことが期待もされます。
ご近所塾の選び方
私の周囲でも、大手の塾を離れて独立した教師は何人もいます。だいたい4パターンの経過をたどります。
①前職に不満を抱いて辞職→独立
②前職で首を切られて退職→独立
③前職を定年退職→独立
④前職に問題があって辞職→独立
①・②のケースは上手くいかないことがほとんどでしたね。
前職で評価されない・・・それなりの理由があった
→不満を抱いて辞職
前職で問題を起こした→退職を余儀なくされて独立
このどちらかだからです。
もともとの教師の力量に問題があったわけですから、「大手塾」の看板すらなくなってしまえば上手くいく道理がありません。
やはり、③か④のケースの先生を探したいところです。
④については、前の塾がつぶれた、教師のリストラ、給与遅配、そうした切実な理由です。先生を大切にしない塾経営者は多いですからね。教師にかかる人件費に手を付けた塾の未来は長くないというのが私の持論です。
ご近所塾を選ぶ際には、経営者=教師の経歴を確認することを強くお勧めします。
A先生・・・父親が開いていたご近所塾を受け継いだ。元大手企業社員。
B先生・・・一つの大手集団指導塾で20年以上の指導経験があって独立。
C先生・・・いくつかの大手集団指導塾で計20年以上の指導経験があって独立。
D先生・・・小学校の先生を定年退職して開業。
E先生・・・中高の先生を定年退職して開業
F先生・・・個別指導塾で20年以上の指導経験があって独立。
G先生・・・家庭教師を20年以上やってから開業。
H先生・・・フランチャイズ塾を20年やってから独立。
みなさんならどの先生に習いたいですか? ちょっと順位をつけてみてください。
私が考える正解はこうです。
B>E>>F>D>H>G>>C>>A
C先生は要注意です。良い先生は塾も手放しません。塾を転々としているということはそれなりの理由があるからです。おそらく、自分で塾を立ち上げる教師の多くはこのパターンだと思います。塾のノウハウを盗んでい歩いていたのか、あるいは生徒情報を集めていたのか。いずれにしても信頼することは難しいと思うのです。
F先生も、個別指導では経験値が積めません。G先生も同様です。
G先生とH先生は、それでも20年続いたということは、それなりの理由があると思います。
E先生はいいですね。教科力に期待できます。
D先生は期待薄です。小学校の指導内容は易しすぎるからです。ただし、生徒あしらいは上手でしょう。また、小学校の授業のフォローをお願いするのなら最適です。
A先生の塾には行きたくないですね。ただの素人です。
結局のところは、評判をリサーチし、直接足を運んで話を聞いてみるほかないのでしょう。
その際ぜひ注目したいのは、「謙虚さ」だと思っています。
ほとんどの方が、「自分は開成や桜蔭に〇〇人合格させてきた!」「全部まかせてくれれば絶対合格させます!」といった、経歴自慢や大風呂敷を広げがちです。
しかし、中学受験の合格実績は、本人の頑張りや4科目教師の連携プレー、そしてご家庭の支援の賜物です。一人の教師の手柄のはずがないのです。
自分に出来ることと出来ないことをきちんと話してくれる教師こそ信頼に値すると思っています。
以前、ピアノ教室を探したことがありました。
広い防音室にグランドピアノ2台を設置し、時々コンサートに出ている先生もいれば、自宅LDKのキッチン横にアップライトピアノを置いている先生も。〇〇音大卒という触れ込みの割にはお手本の演奏を拒否する先生までいました。マンションの狭い1室に電子ピアノ、足の踏み場もない部屋を猫が自由に闊歩している、そんな先生までいました。
音楽を学ぶ環境って大事だと思います。
まさに玉石混交の世界で、直接足を運び自分の目(耳)で確認するしかないですね。
ご近所塾については、とにかく直接確認してご判断ください。