中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】お金をかければ合格が近づくわけではない

「課金」という嫌な言葉があります。

本来の意味は、「貸借料・使用料などの料金を課すこと」(新明解国語辞典)です。

しかし今は逆の意味で使われることが多いですね。

たぶん犯人はゲームです。

私はゲームは全くやらないので無知なのですが、ゲーム内でアイテム等を購入しないと有利にゲームを勧められない、そのことを「課金する」というのでしょう。

そこから、中学受験の世界でも、子どもの合格のためにお金を費やすことを「課金する」というようになったと思っています。

 

中学受験に関連する支出

 

(1)塾(集団指導塾)に支払う費用

 ・月謝

 ・講習費・・・夏期講習・冬期講習等

 ・オプション講座費用・・・算数特訓・〇〇中特訓等

 ・教材費・・・テキスト代

 ・テスト費用

 ・光熱費・設備費

 

まず考えるのが、塾代ですね。

この金額は塾によって様々です。

しかも、高いから良い、安いからダメ、といえないところが厄介です。

さらに、月謝の見せ方も塾によって異なります。

全ての費用を含む金額のみを提示しているところもあれば、基本料金の月謝を全面に出し、一見安く見せかけているものの、実はオプション講座・教材・テスト代・設備費などが上乗せされて、支払う金額は高くなってしまう、ということころもあります。

消費者の立場からすると、塾に入ってから様々な料金が上乗せされて「こんなはずじゃなかった!」となるよりは、一見高く思えても、最初から全ての料金を明示してくれている塾のほうが良心的ですね。

 

まず、四谷大塚の費用をHPから調べてみます。小6の場合を見てみます。

・入会金・・・22000円

・授業料・・・57750円(8月まで)/79750円(9月以降)

・合不合判定テスト・・・31680円(5回分)

・教材費・・・20000円程度(半年)

その他にも学校別テスト等もあるはずです。

 

次に、高そうな印象のある(なんとなく)SAPIXの費用を調べてみました。全てHPのQ&Aコーナーに載っています。

Q:入室時にいくらかかりますか?

A:入室時に、入室金33,000円(税込)および2か月分の授業料を頂戴いたします(講習のみの受講の場合、講習代金のみ頂戴します)。

Q:月額はいくらかかりますか?

A:授業料には、組分けテスト・マンスリーテスト・復習テスト等の授業の一環として実施するテスト費用、授業中に配付するテキスト・プリント等の教材費、冷暖房費等がすべて含まれています。

別途、特別講習の費用が必要な月もあります。

Q:月謝の他に費用はかかりますか?

A:春期講習、夏期講習等の特別講習の費用、地図帳や問題集等の書籍代、3年生の後期以降に実施される公開模試の費用は別になります。

 

なるほど。入室金+月謝+書籍代+公開模試代 ということなのですね。

この塾は、基本費用は月謝に含まれている、というスタイルだと理解しました。

ところで2024年の月謝はこうなっていました。

1年生    22,000円
2年生    23,100円
3年生    25,300円
4年生    45,650円
5年生    57,750円
6年生    66,000円

 

次に、庶民的なかんじのする(なんとなく)日能研はどうでしょう?

6年生の費用だけ見てみます。9月以降のものしか見つかりませんでした。

入会金         22,000円
授業料  35,640円/月~47,520円/月
合格力育成テスト・合格力実践テスト   全12回    52,800円
日能研全国公開模試   全5回    30,250円
教材費等  45,947円
副教材費4科         9,075円

テストや教材費等は半年分です。

 

なるほど。

一見月謝は安く(サピックスに比べて)見えますが、公開模試以外のテスト代や教材費は別途徴収されるのですね。

実は日能研にはその他に「オプション講座」と呼ばれる講座が別途用意されています。

 

正確な計算はできない(HP公表データだけからは)のですが、どの塾もそう大きく変わらないだろうなと思います。

 

塾によって費用開示の方針が異なり、また授業時間数も異なるため、単純な比較ができないのですが、受験学年の小6だと1年間に120万円前後、4年生~6年生の3年間だと240万円前後といったところだと思います。

 

いくつかの塾のHPを見比べていて気付いたことがあります。

情報開示の姿勢についてです。

塾を選ぶときに、最低限知りたい情報はこの2つですね。

 

◆授業曜日・授業時間

◆費用・・・全て

 

まず最初に、何曜日の何時~何時までが授業時間なのかがわからないとどうしようもありません。小学校からの帰宅時間や塾までの距離、他の習い事との兼ね合い、親の仕事の都合等、ここがわからないとその塾に通わせられるのかどうかが判断できないからです。

次に大事なのが費用です。

All-Inclusiveの費用体系であれ、基本料金にその他費用を別途徴収するスタイルであれ、そんなものはどうでもいいのです。

★入室時にいくら必要なのか?

★毎月いくら必要なのか?

★特別講習等でいくら必要なのか?

★年間トータルでいくら必要なのか?

ここを、ごまかさずにはっきりと明示しておいてほしいのです。

 

しかし、残念なことに、この2つをきちんとHPで開示している塾はほとんどありませんでした。

 

「詳細はお近くの教室にお問い合わせください」

「まずは資料請求フォームに記入して送信してください」

 

必ずといっていいほど、この「個人情報収集の壁」にぶつかります。

 

・子どもの氏名

・保護者の氏名

・住所・電話番号・メールアドレス

・小学校名・学年

・志望校

 

だいたいが、これらの情報を要求されます。

その塾に通わせるかどうかわからない、検討段階にすぎないのに、ここまで個人情報をさらけ出す気になりますか?

 

まずは授業曜日・時間・費用をHPで確認する。

もし転塾や途中入塾の場合は、カリキュラム詳細も確認したい。

その上で、「通わせてもいい」塾にだけ、資料請求or説明会参加申し込みをする。

 

どう考えてもこれが普通の順番だと思います。

基本情報すら開示していないのには、「何かの理由」があるのでしょう。

 

もちろん、塾によっては、ある程度の情報をHPで開示している良心的な塾もあります。

どの塾がどんなスタイルなのか、ご自身でご確認ください。

 

 

 

(2)参考書・問題集等書籍代

 大手集団指導塾に通っていれば、本来は必要ないはずですが、実際には資料集であったり過去問題集であったりと、買う必要のある書籍はけっこうあります。

例えば、志望校の過去問として皆が必ず購入する、「〇〇中学校△△年度スーパー過去問」(声の教育社)というものがあります。5年~10年間分の過去問がまとまっています。もし5校受験予定なら、5冊必要です。1冊3000円弱です。

 

(3)個別指導塾

 集団指導塾では不足する学習を補う目的で個別指導塾にも通う生徒がいます。

個別指導塾の金額は集団指導塾以上に不透明です。

ほとんどの個別指導塾では費用を公表していないからです。

一言でいえば、集団指導塾にくらべてかなり高額です。

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(4)家庭教師

 家庭教師の費用については、さらに千差万別ですね。しかも価格と指導力に必ずしも相関関係の無いところが厄介です。

仮に家庭教師センターを通すと、5割~7割がセンターに行き、教師には3割~5割ほどしか支払われません。

 

本気でプロの講師を頼むと、青天井に費用がかさみます。

 

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(5)受験費用・入学金・授業料

 こちらは、中学に入るためには必須の費用ですので、節約しようもありません。

あえていえば、受験戦略を慎重に組み立てることで無駄な出願をしないようにすることと、入学金の支払いも無駄にならないようにすることくらいでしょうか。

学校によっては授業料も異なるのですが、授業料の高低で学校を選ぶ方はいないと思います。

 

課金するところ

中学受験で「課金」の対象となるのは、

◆塾のオプション講座

◆個別指導

◆家庭教師

の3つでしょう。

 

ということは、オプション講座をとりまくれば合格に近づけるのか、個別指導を頼めば合格できるのか、家庭教師を頼まないと合格できないのか、そういうことになるのだと思います。

 

そんなことはありません。

 

個別指導や家庭教師が無駄だとは言いません。

効果があがる場合も多いのだと思います。

ただし、かならず個別指導や家庭教師を頼まねばならないという性質のものではありません。

 

ここで大きな問題があるのです。

 

子どもに個別指導や家庭教師が必要か否か、その判断を下す材料が無いことです。

そこで、お世話になっている集団指導塾に相談してみます。しかし、まともな塾なら、指導上のノイズになりかねない他の塾・教師を推奨するはずがありません。

もしかして集団指導塾の関連個別指導がある場合、それを勧められるかもしれませんが、明らかに「営業優先」の発想です。

また、個別指導塾や家庭教師センターに相談するのはおろかです。勧められるにきまっているからです。

周囲のママ友に相談したところで、

「もちろん必須! うちも頼んだおかげで合格したよ」

「不要! うちは頼まなかったけど志望校に合格できた」

のどちらかの返答しか得られないでしょう。

 

ゲームではないのです。

いくら「課金」しようと合格が近づくわけでもなく、「課金」しなくても合格が遠のくこともありません。

 

冷静な判断が必要だと思います。

 

※例外

 ただし例外はあります。たとえば英語。集団指導塾で算国理社の4科目を学んでいるが、英語入試をしている学校も候補なので、別の英語塾に通う。これは「あり」ですね。

 同様の理由で、志望校の入試が特殊な場合、その指導だけをプラスする、こうした利用法ももちろん有効です。

 

 

 

 

 

 

こちらでも費用についてまとめていますのでご覧ください。

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