長年大勢の受験生を指導してきました。
生徒達が書く文字は、そのほとんどが「汚い」「読みづらい」「乱雑」な字です。
「字は丁寧に書きなさい!」と指導し続けてきましたが、どうもダメですね。
しかし、先日あることに気が付きました。
小学生時代に指導していたその生徒は、なかなか綺麗な字を書く生徒だったのです。
聞けば、幼少時より書道を習っていたのだとか。
なるほど。
ところが、高校のレポート作成で困って久々に私のところにやってきたその生徒の文字は、「乱雑」で「汚く」「読みづらい」物になり果てていたのですね。
いったいどうして?
今回はそのあたりを考えてみたいと思います。
きれいな字の身に着け方
だれだって「きれいな字」を書きたいと思っています。
私もそうです。
しかし、私はもう諦めました。
親曰く、小学生のころ、私はなかなかしっかりとしたきれいな字を書く子供だったそうです。
ところが、高学年のとき指導を受けた担任教師により、毎日数百文字の漢字を書く宿題が課せられたのです。
すでに書ける漢字を数百回書かせられる苦痛。
一秒でも早くこの責め苦から逃れたかった私は、とにかく殴り書きのようにして升目を埋めることだけを考えました。
そうした1年間を経て、私の字はすっかり「殴り書き」で「汚く」「読みづらい」ものへと変化したのです。
私の文字が拙いのは、その教師のせいだと今だに思っています。
逆恨みも甚だしいですね。
私の字が汚いのは、自分自身の努力不足のせいなのですから。
きれいな字を書く生徒達に聞いたところ、みな幼少時に習字を習っていました。
◆書き方教室
◆習字教室
のどちらかですね。
「書き方」と「習字」の違いが今ひとつわからなかったのですが、どうやら「毛筆」を指導するのが習字で、「硬筆」、つまり鉛筆で書く文字を指導するのが「書き方」ということのようです。
だいたいが、同じ先生が両方を指導します。
しかし、習字を教えている知人によると、この二つは似て非なるものだそうです。
もしお子さんが小学生以下なら、迷わず「書き方」「習字」のどちらかを習わせることを推奨します。
きれいな字は一生の財産となるからです。
字が下手になる原因その1 キーボード入力の弊害
ビジネスの現場はもちろん、大学のみならず、今や中学・高校でもレポートの提出は「ロイロノート」や「Googleクラスルーム」等を使うのが普通になりました。
つまり、デジタルデータとして提出するのです。
したがって、レポート作成=PCへの打ち込み、というのが普通なのですね。
それはそうでしょう。
◆複数の機器で同時進行で入力・訂正が可能
◆慣れれば高速で入力できる
◆何度でも修正が可能なので丁寧に推敲できる
◆タイムラグ無しで提出ができる
◆読む側も読みやすく助かる
これだけのメリットがあります。
手書きのレポートに今更戻れるわけはありません。
しかし、その結果として、手書きの機会がめっきり減りました。
たまに手書きで提出しなくてはならない場面があったとしても、まずはPCに入力して原稿をつくり、完成原稿をプリントアウトし、それを手書きで清書するそうですね。
当然、手書き原稿は殴り書きとなります。
これでは文字が汚くなるのは必然です。
※もちろんキーボード入力の必要性は理解しています。
マスターの仕方をまとめましたので、ぜひお読みください。
字が汚くなる原因その2 書く文字数の問題
受験生は、とにかく大量の問題を解きます。
たくさんのノートを使います。
原稿用紙も使います。
書かねばならない文字数がとても多いのですね。
しかものんびりと書いている時間の余裕はありません。
素早く大量の文字を書く。
徐々に殴り書き・走り書きになってしまうのはやむを得ないでしょう。
これについては、「それでもなるべくきれいに書くよう心掛ける」くらいしか対処法はありません。
字が汚くなる原因その3 シャーペンの罪
※この記事では「シャープペンシル」「 mechanical pencil」を「シャーペン」の一般名称で表記しています。
生徒達がみな「シャーペン」と呼ぶので、最初は違和感があった私もすっかりなじんでしまいました。
小学生のときの筆記用具は鉛筆一択でした。
小学校では、シャーペンは禁止されていたと思います。
この鉛筆という筆記具、実はきれいな文字を書くのに適しているのですね。
2Bくらいの濃いめの芯を選び、きちんと力を込めて書くと、止め・はね・払いといった漢字の基本要素もしっかりと書く習慣が身につくのです。
しかし、なぜか教室で見かける受験生は、ほぼ100%、シャーペンを使用しています。しかも0.5mmの芯で、芯の硬さはHB程度です。
このシャーペンで筆圧をかけるとすぐに芯が折れます。
自然に、筆圧を掛けないような書き方へと変化していきます。
もう「止め・はね・はらい」などどうでもよい文字になってしまいます。
また、このシャーペンという筆記具、ペンを斜めに寝かせて筆圧をかけて書くと、すぐに芯が折れるのです。
そのため、ペンを立てて書く習慣が身に付きます。
親指・人差し指・中指の先端でペンを支える正しい持ち方から、握りこぶしからペンが垂直に突き立つような怪しい持ち方へと変化してしまうのです。
持ち方は正しいが細く・薄く・弱々しい文字になるか、筆圧は強いが握りこぶしグリップか。
もしお子さんが、シャーペン、それも0.5mm芯のものを愛用していたら、今すぐ取り上げるべきでしょう。
それでも、どうしてもお子さんにシャーペンを与えたいのなら、与えていいシャーペンは、芯の太さが0.9mmか0.7mmのものしかあり得ません。
おすすめは0.9mmのシャーペンです。
これなら各メーカーから数種類販売されており、芯の入手もしやすいからです。
0.9mmで芯の濃さは2B
これなら筆圧をかけても芯は折れませんし、鉛筆のような濃いはっきりとした文字が書けます。
6年生にもなると、ノートに書く分量も増え、もう少し細かい文字を書きたくなるかもしれません。
その場合は、芯の太さ0.7mmのシャーペンを用意するとよいでしょう。もちろん濃さは2Bで。
芯の折れにくさと書きやすさを考えるとギリギリ妥協できるのがこの太さです。
ただし、非常に種類は少ないですね。
重量のある金属製のシャーペンは、値段が高い上に、手が疲れるので、安くて軽いものを選びましょう。
個人的なお勧めは、ぺんてるの「TUFF 0.7」です。
こちらは0.9mmのものもあって、どちらもおすすめです。
薦める理由は、附属の消しゴムが実用に耐えるものだからです。
写真のノックするお尻の部分に少し飛び出ているのが消しゴムです。
普通のシャーペンに附属する消しゴムは全く使い物になりませんが、このシャーペンのものは使えます。繰り出し式ですし、交換も簡単です。
もちろん普通のよく消える消しゴム(monoブランドが好きです)を筆箱に入れてあるはずですが、忘れたとき・落とした時・急いでいるときに、このシャーペンならすぐに消すことができます。
このスピード感、一度味わうと病みつきになること請け合いです。
値段はいくらくらいだったかな? と思って今検索してみると、300円~400円ほどでした。5本で1083円!というのを見つけて、思わずカートに入れてしまいましたね。
「弘法筆を選ばず」などと言っている場合ではありません。
ぜひ一度お子さんの筆箱の中をチェックしてみてください。
※ところで、筆箱に入っているペンの種類の多さと成績は反比例するというのが私の経験から導き出された持論です。
カラフルなペンであふれるようになっている筆箱は問題です。実際の授業ではそんなペンの種類は不要ですので。
削りたての鉛筆数本・シャーペン1本(0.9mm/0.7mm)・消しゴム2個・赤ペン1本
これだけで必要十分です。せいぜいこれに加えて定規と青ペンが加わる程度です。
ペンの持ち方の矯正
今一度、お子さんのペンの持ち方をチェックしてみましょう。
前述したような、「握りこぶし系」の持ち方になってはいませんか?
美しい文字は美しい姿勢とペンの持ち方から。
間違いないですね。