ラフカディオ・ハーンこと小泉八雲です。
日本人以上に日本の文化を愛した作家ですね。
小泉八雲について
1850年、ギリシアの島で、アイルランド人の父とギリシア人の母の間に生まれました。その後イギリスとフランスで教育を受け、アメリカで苦労したのちに新聞記者になります。
1890年に来日すると、島根の中学校で英語教師、やがて帝国大学で英文学の講師となります。ちなみに小泉八雲の後任が夏目漱石だったそうです。
松江出身の士族の娘と結婚して日本に帰化しましたが、1904年に病死しました。
作品について
専業作家というわけではなかったので、作品数は多くはありません。評論のようなものが目立ちます。
もっとも、日本の文化の英米への紹介者としての評価もありますね。
お薦め
もうこれは「怪談」一択です。
耳無芳一の話
おしどり
お貞のはなし
乳母ざくら
かけひき
鏡と鐘
食人鬼
むじな
ろくろ首
葬られた秘密
雪女
こうした話が17編のせられています。
小泉八雲の解釈が入った怪談ですが、むしろ私たちは小泉八雲版で話を知っていると思います。
むじなの冒頭はこのようになっています。
東京の、赤坂への道に紀国坂という坂道がある――これは紀伊の国の坂という意である。何故それが紀伊の国の坂と呼ばれているのか、それは私の知らない事である。この坂の一方の側には昔からの深い極わめて広い濠があって、それに添って高い緑の堤が高く立ち、その上が庭地になっている、――道の他の側には皇居の長い宏大な塀が長くつづいている。街灯、人力車の時代以前にあっては、その辺は夜暗くなると非常に寂しかった。ためにおそく通る徒歩者は、日没後に、ひとりでこの紀国坂を登るよりは、むしろ幾哩も廻りり道をしたものである。
これは皆、その辺をよく歩いた貉のためである。
この後は良く知られた顔の無い女の魔物?の話が展開するのです。
個人的には、「耳なし芳一」だけは読んでおいてほしいと思っています。
平家物語を説明するときに、琵琶法師が広めたという説明をします。そして琵琶法師の説明をするのなら、「ほら、あの耳なし芳一って、琵琶法師だったんだ」の説明一言で済むのです。済むはずなのですが、最近の子どもたちは全く知らないのですね。
「先生、耳なし芳一って?」と必ず聞き返されるようになってしまいました。
授業時間に余裕があれば情感たっぷりに語って生徒を恐怖のどん底に落としてあげるところなのですが、残念ながらそこまでの時間的余裕はありません。
「ああ、琵琶を弾きながら平家物語を物語る人なんだね」
「ストリートミュージシャンみたいな?」
だいぶ違う。だいぶ違うけれど、それをここで説明する愚を私も知っています。
他には、「日本の心」もおすすめしたいですね。