入試本番まで5か月ちょっととなりました。
志望校も決まってきましたね。
過去問の演習も本格化してきたころだと思います。
このころになると必ず出てくる問題について説明します。
〇〇中学の対策だけをやっている
夏休みくらいから、成績が低迷してくる生徒がいます。
どうやらこちらで用意した教材や学習の指示に従っていない様子。
よくよく聞いてみると、こんなことになっています。
夏休みに入り、少し時間がとれるようになった父親が、娘の学習に大きく干渉しはじめたのです。
本来これは望ましいことです。
ぜひ干渉していただきたい。
ただしそれが間違った方向性ものものであってはなりません。
娘の第一志望校はA中学である。
そこでA中学の過去の入試問題を10年分、父親が徹底的に分析した。
そうすると、次のような傾向が判明した。
◆算数は図形問題は毎年出題されていない
◆算数の出題は、全て方程式を立てれば解くことができる
◆国語では、物語文が大きく1題だけ出題されている
◆国語の漢字の配点は小さい
◆理科は物理分野と化学分野の出題がほとんどで、地学・生物分野からはほとんど出題されていない
◆理科は計算問題が多い
◆社会は地理は西日本、歴史は江戸時代から明治時代が中心、公民分野は三権分立が多く出題されている
◆社会は記述問題は出されない
以上の父親による分析結果に基づき、娘の学習内容を再構成し、無駄なものを全て捨てることにした
こうして父親主導のもと、A中学目指した徹底的な学習が始まったのです。
そのため、全体的な成績が下がってきてしまいました。
生徒の親にとって、直近の入試体験というのは大学入試です。
その大学入試の成功体験に基づき、入試分析による合格という間違った方法論に走ってしまったのですね。
どうして志望校に特化した学習は失敗につながるのか
中学入試と大学入試は異なります。
私立中高がどのような生徒に進学して欲しいのか、そこを考えれば簡単にわかるはずです。
◆4科目の教科学習をきちんとやってきた生徒
◆小学生時代に規則正しい学習習慣がついていた生徒
◆基礎的な知識がきちんと身についている生徒
◆自分の頭で考えることのできる生徒
逆に、どのような生徒に来てほしくないかも考えてみましょう。
◆その中学に受かることだけを最終目的としている生徒
◆合格のためにはイレギュラーな手段も厭わない生徒
◆基礎的な学力が身についていない生徒
◆自分の頭で考えることのできない生徒
どう考えても、こうした生徒は嫌ですね。
志望校だけに特化した学習は、まさに中学校が最も嫌う生徒を作り上げることにつながるのです。
私が中学校の入試問題作成担当者なら、こうした生徒を排除するような出題を工夫するでしょうね。
付け焼刃的な対策では歯が立たない問題、その場での思考力を要求するような問題、幅広い教養を必要とする問題。
もしかして出題傾向を大きく変えてくる可能性すらあるのです。
また、受験生はたった1校だけを受験するわけではありません。
学校が変われば入試傾向も変わります。
幅広い学習をきちんとやっておくことこそが、最上の志望校対策になるのです。
たまに、「A中学はこの分野は出ないのでやっても無駄ですよ」だとか、「A中学には必ずここが出題されますよ」などとしたり顔で言う塾教師がいますが、私に言わせればアマチュアです。そうして中学校の出題傾向に詳しいことをアピールし、自らの権威を高めようとしているに過ぎないのです。
中学校の教科担当の先生の名前を全て確認する。
その先生方の大学時代の専門を調べて論文もチェックする。
その中学校の定期試験問題を入手して分析する
中学校の説明会で先生方と雑談する
私も若かりし頃はここまでやりました。
さらに卒業生からの内部情報まで集めたのです。
もちろん過去問は20年以上は分析しています。
そこまでやっても、「当たる」ことなど滅多にないのです。
入試問題の分析を続けてきてわかったことがあります。
結局のところ、基礎知識を網羅し、思考力・記述力を高めることが最も合格に近づくことなのです。
学習に効率を持ち込むと失敗する。
これが私からのアドバイスです。